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人生初のミュージカルがロンドン【ヨーロッパの旅2000年】

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 自国内の方が言動を、
 極端に制限されていたわけで。

(文字数:約3100文字)



ジンジャーくんと『グリーン・マイル』ごっこ

  ロンドンではまず大学生全員で訪ねた、

  大英博物館、

  の中でも特にミイラコーナー、
  の中でも更に、

  きちんと内臓などを処理されたわけでも、
  布でぐるぐる巻きにされているわけでもなく、
  砂漠の下から亡くなった時そのまんまの姿で、
  掘り出されたミイラ、
  通称「ジンジャーくん」があって、

  「心臓の弱い人は見ないでね」
  と添乗員さんからは言われていたが、
  見た。

  私「まぁ私の母校の小学校、
    玄関ロータリー天井付近に飾られた、
    被爆写真『黒焦げの少年』に比べたら、
    そこまでの事は」
  マ「なら正面に回って顔を見てみろ」
  私「『寝てる間も電気点けてもらえますか』
    (映画『グリーン・マイル』中の、
     囚人ジョン・コーフィーのセリフ。
     でっかい男性が子供っぽくて可愛い。)」
  マ「いいだろう(看守風)」


『アルノルフィ二夫妻』の明暗

  私はヤン・ファン・エイクを筆頭とする、
  フランドルやネーデルランド絵画が、
  大好物なもので、

  『アルノルフィニ夫妻像』はぜひ観たいと、
  ロンドン・ナショナル・ギャラリーに向かったのだが、

  実物を前にして、
  二週間の旅行中ほとんど唯一、
  マリー嬢の機嫌が悪くなった。

  「何これ。すっごく気持ち悪い。
   この絵のためだけにここまで来たの?」

  マリー嬢は食べられない食材同様、
  どうしても受け付けない数点の事柄以外は、
  常に何事をも受け入れてくれる、
  心根が実に深くて広い方なのだが、

  現にパリでもイタリアでも、
  ひたすら私の趣味で連れ回したと言うのに、
  楽しげに付き合ってくれていたのだが、

  「嫌だ。この絵嫌い。
   異常に細か過ぎて見るのも耐えられない」

  まさか私にはそここそが大好きな、
  ヤン・ファン・エイクが御無理とは……(泣)。

  しかし人の好みはそれぞれに等価であり、
  決して有り得ない話ではない。  


フィッシュ&チップスの奇跡

  気を取り直してお昼ごはんを食べよう。
  何。お腹が空いていると気が荒くなるものさ。

  内心ヒヤヒヤドキドキしていたが、
  立ち寄ってみた美術館近くの店の、
  ロンドン名物フィッシュ&チップスは、
  実に美味い……、

  と思いきや、

  私「……冷めた部分から不味いな」
  マ「この魚……、多分ナマズ系だね」
  私「しかし揚げたて部分はサクサクだ」
  マ「うん。実に美味い」

  奇跡的にも思える、
  味や食感の変貌ぶり。

  私「はよ食わな(焦)」
  マ「冷める前に食わな(焦)」

  「イギリスは飯がまずい」
  などとまことしやかに繰り返され、
  それが定説であるかのように思われているが、

  察するに食材に恵まれなかった分、
  美味しく食うための調理法や加工技術が、
  独自の発展を遂げている。

  しかしながらその料理ごとの、
  最も美味しいスイートスポットが、
  時間的に相当限られているために、

  そのタイミングに出会える者が少ないと見た。
  ちょっとおしゃべりしていたらもうアウトだ。

  「焦ったがあの美味さと落差は面白かったな」
  マリー嬢も機嫌を直してくれたし。


ここにきて仲良くなった

  同行の大学生たち20〜30人の中でも、
  生活水準に社会階層が、
  おそらくは似通っているらしい二人組が、
  いる事にはお互い気付き合っていたんだ。
  (アルルで同席した二人ではない。)

  二週間の間に少しずつ声を掛け合い、
  イギリスに入ってようやく、
  ミュージカルに行く予定である事を知って、
  じゃあ一緒に行こうという流れになった、

  仮にフランス風の、
  パトリシア(以降セリフ部分はパ)と、
  メルセデス(以降セリフ部分はメ)としておこう。

  パ「パリとか一緒に行動したかったんだけどー」
  メ「二人とも、なんかすっごい目立ってたから」
  私「だろうな」
  パ「あ。えっと、ごめん。誉めてないよ?(汗)」
  私「大丈夫だ。私も誉められてるとは思ってない」
  パ「よかったー。まともな人だー(嬉)」
  マ「根はまともじゃなきゃバカはやれないからな」
  メ「なるほど(クール)」

  とか話していた矢先に私は、
  予定していた日の『レ・ミゼラブル』が、
  満席であると聞かされてひどく落ち込んでしまった。

  パ「明日のマチネはあるよー(喜)」
  私「え? チケットは無いんだろ?」
  メ「マチネならあるってば」
  私「マチネって何?」
  パ「……知らないのっ?(驚)」
  メ「昼公演だよ」

  私「それは夜公演とどこか違ったり、
    短縮されていたりしないの?」
  メ「いや。変わんない変わんない。
    夜の公演と全く一緒。
    ってか日本でもそうじゃん」
  私「いや私ミュージカル日本で観た事無いから」
  パ・メ「……(絶句)
    それでどうやってミゼラブルにハマったの?」

  私「丸一週間かけて原作読んで」
  メ「……それ冗談かと思ってた」
  パ「あんなの読む気にならないっていうか、
    一週間で読めるわけないじゃない!」
  私「そりゃ初読時は先が気になるからざっくりな。
    再読時はみっちり1ヶ月はかけたよ」
  パ「同じ話を何回も読むのっ?」
  私「同じミュージカル何回も観るだろ」
  パ「あー。そうか一緒かー」
  メ「いや。なんか一緒じゃない気がする……」

  マ「すまないな。特殊すぎる環境に育って、
    おかしくないけどおかしいんだコイツ」

  大枠でそうまとめられたが、
  パトリシアとメルセデスからは頷かれた。

    

初めて見たんだミュージカル版は

  と言うわけで、
  その日の夜公演は『オペラ座の怪人』、
  翌日の昼公演に『レ・ミゼラブル』を
  4人で堪能した。

  観光客だし端の席だが、
  観られる時点で大満足。
  もちろん全編英語だけど、
  原作知ってるからなんとなく分かるし。

  そして全身の全細胞が、
  待望してきた『レ・ミゼラブル』

  CDなら九州は中核市の町中を、
  捜し回り尽くしても見つからず、
  わざわざ店舗に予約して入手していたので
  (2000年当時ネット販売は普及していない)、
  主要ナンバーはそらで歌えるほど予習済み。

  とは言え舞台演出に演技までは、
  事前に予想できるものじゃなく、
  驚かされるシーンは多々あったが、
  その中でも○○の△△シーンで、

  私はあんぐり口が開いた。

  私「びっくりした。
    ものすっごくびっくりした。
    まさか△△を、
    □□によって表現するとは」
  パ「こっちはそれを知らずに来てる事が、
    びっくりなんだけどー……(呆&楽)」

  私「『オペラ座の怪人』でも、
    似たようなシーンがあって、
    しかも実にそれらしく見えたじゃないか。
    同じ感じになるのかなーって」
  メ「『レ・ミゼラブル』は全編通して、
    盆を回すからね」
     ↑
  2000年当時の演出です。
  大幅リニューアルされた現在は、
  盆使わないのよね。
  もちろんリニューアル後も観に行ったけど。


以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。

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