儀式

私たち夫婦は、当初 結婚式を挙げない予定でした。
私もドレスを着るようなガラじゃないし
14も歳の離れた主人も「恥ずかしいねえ」と言っていて
じゃあまあ将来的に結婚するにしても
式は挙げなくてもいいかねえ、と言う感じでした。

ところが、当時通っていた大学院の
湯浅譲二先生からのあるクイズで自体は変わります。

「人間と、動物とを分けているものは何だと思う?何が違うと思う?」

なんだろう…

火を使える(管理できる)?
道具を使える(…あ、でも知能の高いチンパンジーとかならできるか)
言葉でコミュニケーションできる(これも鳴き声とかでできるか…)

院生たちはいろいろな意見を出して黒板を埋めていきました。
(結構いっぱい挙がったけど覚えていない)

一通り見た湯浅先生。

「近いけど、抜けてるのがある」と。

えっ…。どれだ?何だ??


「人間はね、通過儀礼をするの。儀式ね。
そこに書いてある『宗教を信仰している』というのと
同じではないけど近いというか重なる部分があるかな」と湯浅先生。

詳しく聞くとこういうことでした。


通過儀礼というと、例えばアフリカの一部の民族で残っているような
割礼とか、そういうものすごく特別な儀礼みたいなものを思い浮かべるかもしれないけど
そうではなくて、日本で言うと
お宮参りから始まって七五三やら節句、
入学式、卒業式、成人式、結婚式、あとはお葬式。
いわゆる冠婚葬祭。だから祭りなんかもそうだけど。

つまり人間ていうのは社会の中で生きているから
社会の、自分以外の人に対して、社会に対してアピールするのよね。
私はこの社会で関わっています、こういう者です、よろしくお願いしますって。
で、それに参加した人も認める。いいですよ、こちらこそよろしくね。みたいな。
これは動物には無い世界。

あと、儀式をすることで区切りをつけるのね。
そうやって自分の気持ちも整理をしていくというか。

ぼくはね、意外とこの中で
結婚式って重要だと思ってる。

いまはしない人も多いみたいだけど
これこそ社会に対して、周りの人に対して
「僕たちはこの社会に参加する最小単位のユニットとして、この二人から始めます。」
これから増えていくと思います。どうぞよろしくお願いします、って。
大事だよねえ。大事だと思うよ。


(一言一句正確に記憶しているわけではありませんが。
でも「社会にアピールする」とか「最小単位のユニット」とはおっしゃってた)

湯浅譲二先生は、言わずと知れた世界的な作曲家です。
世界的な作曲家の、作曲の授業で
何を習っているんだよ、と思われるかもしれませんが
非常に大事なことで
私はこの先生の授業をきっかけにちゃんと結婚式をやろうと思ったのでした。

挙げられて良かったと思っているし
それ以降、その他の儀式も大事にするようになりました。


いま、新型コロナウィルスの影響で
いろいろな「儀式」が中止・延期になっています。

突然終わった学校。
3学期の授業参観や行事。
3月末で転校する友達とはあと1か月近く一緒に居れたはず。
小学校6年生、中学校3年生、高校3年生は
同級生や後輩たちに伝えたかったことがあったかもしれない。

子供たちの卒園卒業式、入園入学式。

友人や親せきの結婚式…。


区切りを付けられないまま、モヤモヤと悶々と、漫然と過ぎて行く時間の中で
それでも何ができるかな、と
顔をあげて前を向いてみる




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