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「民生委員制度」と「コミュニティーナース」。河合隼雄氏の「個人としての女性」とは?

8月に届けられた番組、Joi Ito's Podcast「夏休み特別企画in出雲」。


株式会社CNCの矢田明子さんらが「事業」として運営している「コミュニティーナース(コミュニティーナーシング)」のお話はとても興味深かったです。
「お互い助け合う」という地域コミュニティーの力が弱くなっている今、私自身が外出不自由で、地域と繋がることの難しさを長く体感していた身からすると、このような活動を「事業」として行っている人たちがいるということに驚いたのです。


今回の出雲への旅は、表面的な部分を掻い摘んだような気もしますが、同時に日本の地域社会の奥深くまで入り込んだような気もしています。長年観察してきた多くの事柄について、より理解が深まったことは確かです。

矢田さんや深井さんから学んだこと、そしてこれから学んでいくことにとてもワクワクしています。また、一緒に何ができるか、それが日本にどのような貢献ができるかについても、とてもワクワクしています。

- Joi

Joi Ito's Podcastより

この「コミュニティーナース」としての活動が、古くからある「民生委員制度」と目的、目標のようなものは同じではないかと思ったこと。
でも、この民生委員の制度が上手く機能していないのか、それとも人が足りていないのか?

というのも、最近この「民生委員」になる人が少なくなっていて、委員の負担が大きくなっているというニュース解説を聞いたからです。
民生委員が、受け持ちの区域の家庭を訪問する現場を紹介していました。

今回の『株式会社CNC』の矢田明子さんらの「当事者の本音を聞き取る手法」など、活動の方法を聞いていると、民生委員とは違いがあるようです。


1.「民生委員制度」について

検索結果から、「Perplexity」がまとめたのが以下。

日本の民生委員制度は、地域福祉の重要な担い手として長い歴史を持つ制度です。以下に民生委員のシステム、役割、制度について詳しく解説します。
## 民生委員の定義と位置づけ
民生委員は、民生委員法に基づき厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員です[1][2]。特徴として以下が挙げられます:- 無報酬のボランティアとして活動- 任期は3年(再任可能)- 児童福祉法に定める児童委員を兼ねる

## 民生委員の主な役割
民生委員は地域住民の身近な相談相手として、以下のような重要な役割を果たしています[1][2][3]:
1. **相談活動**: 生活上のさまざまな相談に応じる
2. **つなぎ役**: 適切な支援やサービスへの橋渡しをする
3. **見守り**: 高齢者や障がい者世帯の安否確認
4. **社会調査**: 担当区域内の住民の実態や福祉ニーズの把握
5. **児童福祉**: 子どもや子育てに関する支援(児童委員として)

## 主任児童委員民生委員の一部(全国で約2万1千人)は、主任児童委員として指名されます[1][2]。主任児童委員は:- 子どもや子育てに関する支援を専門に担当- 担当区域を持たず、他の民生委員・児童委員と連携- 1994年1月に制度化

## 民生委員制度の特徴
1. **全国統一制度**: すべての市町村で一定の基準に従い定数が定められ、全国で約23万人が活動[1][2]
2. **守秘義務**: 民生委員法第15条に基づき、相談内容や個人の秘密を守る義務がある[1]
3. **政治的中立**: 職務上の地位を政党や政治的目的のために利用しない[1]
4. **協議会の組織**: 委員同士で民生委員児童委員協議会を組織し、知識・技術の修得や調査研究活動を行う[3]

2.民生委員の方は、担当地域を一人で家庭訪問している?

とても多くの家庭を一人で受け持っているとTVでは解説していました。
私が知っている民生委員の方も一人で訪問していた記憶があり、検索してみました。

民生委員の家庭訪問に関しては、以下のような特徴があります:

基本的に一人で訪問:
民生委員は通常、一人で担当区域内の家庭を訪問することが多いです。これは、民生委員が地域住民の身近な相談相手として、個別に対応することが期待されているためです。

見守り活動:
特に75歳以上のひとり暮らしの高齢者に対しては、年に1回程度の訪問が区から依頼されることがあります。これらの訪問も基本的に一人で行います。

3.「コミュニティーナース」と「民生委員」の違い

TVで見た民生委員の方は、暑い中を汗を拭いながら自転車で家庭訪問されていました。
しかし多くの担当家庭を一人で回って、そこに住む人の本音やニーズを聞き取ることの難しさは、今回のPodcastの矢田さんの話を聞いてもよくわかります。

「民生委員」の制度の特徴として、
全国統一制度」守秘義務」政治的中立」協議会の組織」

そして「非常勤の地方公務員」としての立場であり、「無償のボランティア」なので、民生委員の人が自分の考えで、「コミュニティーナース」のような、地域の人を直接マッチングして、コミュニティ自体の助け合いを促すことは出来ない?

民生委員は、あくまでも「行政として出来るサービス」につなぐということが業務のようです。
(もちろん、それ以外の施策を行っている地域もあるはずですが)

では、コミュニティーナースの活動は?
コミュニティーナースの行動の基本は、「地域の人たちの動線の中に入って、そこにいる人たちをよく観察し、さりげない挨拶などから声をかけていく」というもの。
地域のひとたちと顔見知りとなり、気さくな会話が出来る関係を作ることで、その人が抱えている問題が見えてくる。
それだけではなく、その人が出来ることの可能性も見えてくる。

問題を抱えているからと言って、その人は「弱者ではない」と、自分を考えてみて思います。
必ずその人が、別の誰かの助けになることがあります。
お互いを補い、支え合える「気の合う関係」。
私たち夫婦のような?(笑)。

ただ、私自身「繋がることの難しさ」も感じるのです。
今は、「お金を支払うことで得られるサービス」を利用して、他人と繋がらなくても生活できる環境に、あまりにも長く慣れてしまっているからでしょうか。

でもこの先、介護保険のサービスですら、全ての人が十分に得られるということは、とても現実的ではないと思う人は多いはず。

「コミュニティーナース」のような役割をする人に、誰か「気の合う人」と繋いでもらって、自分たちで助け合う。
それが出来ないなら、それはそれで仕方ない。
仕方ないことが起きてしまうからこそ、自分が「納得」する毎日を過ごす。

あとは、養老孟司さんが言うように「それは、なりゆき」。

・・・、ということで、民生委員という地域の本当に大切な仕事をされている貴重な人材を、もう少し制度を見直して、「個人と行政をつなぐ」ということだけではなく、地域の人たちが互いに支え合うことを支援する「コミュニティーナース的」な働きにシフト出来ないものかなと。

4.個人としての女性(臨床心理学者 河合隼雄氏の文章より)

この、河合隼雄氏の文章。
「民生委員」の制度を見直すことで、女性の方々が「創造性」を発揮して元気よく動けるようになるのでは。

個人としての女性  

日本的体制に組み込まれていない。
そして、時間も金もある程度ある。
いわゆる出世や蓄財にあまり関心がない。

このような条件を並べてみると、現在日本で創造的な仕事をしている女性に、そのまま当てはまると思われます。いまの日本で自由に元気よく創造性を発揮しているのは、男性より女性の方がよほど多いのではないでしょうか。
現在、日本のサムライは女性たちで、男のサムライはめったにいない、と思ったりします。


河合 隼雄

『村上春樹、河合隼雄に会いにいく(新潮文庫)』
河合 隼雄, 村上 春樹 著

今週のJoi Ito's Podcastは。
「Cradleは、私の作品」というスプツニ子!さん。


番組の中で「スペキュラティブデザイン」という考え方が出てきます。
変化のスピードが速い今は、創りながら、未来を考える。
どのよう未来になって欲しいかを考えながら。

スペキュラティブデザイン

新しいテクノロジーや文化的・社会的トレンドの変化がもたらす未来の可能性や社会への影響を探求し、新たな思考や議論、方向性、嗜好、戦略を喚起するもの。
すぐに商業利用できる製品やサービスの創造に焦点を当てるのではなく、可能性のある未来を推測するために未来の製品やサービスを創造するというのがポイントのよう。

Joi Ito's Podcastより

ただ、この文章の、
可能性のある未来を推測するための、未来の製品やサービス」
を考えるとき、そのサービスを作っていくための「規範」って、どういうことなんだろうと。
地域に根差すものなのか。
なんらかの新しいコミュニティに根差すものなのか。
様々な多様な文化が共存できる世界。


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