消しがたき恋


香りも服も背中も顔も温もりも
全部ぜんぶ覚えてる あの日あったことも
感じた思いも忘れないように
でも忘れたいと思いながら
心に全部残ってる

この残り香は自分が思っているより
毒性が強くて
取り除きたくてたまらない夜がまたやってくる
いつも藻掻く
沸き立つ思いと記憶に翻弄されぬように
夜風を浴びて涙が零れないことに
悔しさを抱えながら
その残り香を風と共に浴びている

この記憶も思いも 私が人間である限り
いつかこの感情も忘れてしまうから
大切に大切に忘れたいと
もがき続けようと思う


この思いも記憶も
いつか いつか なくなってしまう
なんてなんて寂しい事だろう
なんと時は残酷なことだろう
人とはなんと都合が良いんだろう

あの人を愛したことは幻じゃなかった
嫌いになるほど愛してた

何を愛してたんだろう
どこを愛していたんだろう
ただそばに居ると酷く幸せだった
言葉を交わす度に
不安と幸福が充ちた
ただときめいた 私の性を真っ当できた
あの人の前では『私』は『自分』だった

あの背中が愛おしかった
美しく暖かく
いつも前を歩けない自分の先をゆく
あの背中に恋をしていた

声が好きだった
努力が好きだった
進む先に何も見ていないような姿が
私に見えない所を考える姿が
言葉にしない言葉が
行動が
私には出来ない事をして
私には持たぬものを持っていた
貴方だから自分はきっと


あなたに恋をしていた
あなたを愛していた


まだ知恵の浅い人間だから
ひとつの恋に踊るのかもしれない

まだ経験が少ないから
ひとつの愛が心に
深く強く刻まれてしまうのかもしれない

それでもいいと私は思う

貴方が居たから知れた感情
貴方だから許した心
その全てを
あなたとの記憶を美化して残して起きたいと思える程に良き時間を過ごしたと
この傷をも飲み込もう


どれだけこの恋に毒されても
この先の貴方のいない世界が
どれだけ虚しく見えても
貴方と出会い得た感情は無くならない
だから私はこの恋に名前を付けた
この感情の様に無くならないように


そう『 消しがたき恋 』 とね。


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あとがき
正直に言うこんなに小説みたいな書き方をするつもりは無かった。
けど自分の感情を思い出にして
話のように残しておきたかったから書き出してみた。
荒々しいけど人って案外こんなもんを
美しくしてみたかっただけです。

人を愛するとあまりに人は弱い
ほんとにその通りですよね