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店長(HSP)対アルバイト(HSP)


またあの子からLINEが来た。
あの子から来る欠勤の連絡は、いつも僕を複雑な感情にする。


僕は埼玉の飲食店で店長を勤めている。
26歳の若さで手に入れた役職も、気付けばもうすぐ1年になる。

順風満帆であったかと聞かれれば、そうではないと答えるだろう。1年だが、沢山の困難にぶつかってきた。最近、ひとつの悩みがある。

満足のいくシフトが組めない。
これである。

総勢15名。15歳~22歳のアルバイトスタッフと仕事をしている。シフトを組めない原因はいくつかあった。

まずは、高校3年生から大学・専門の1年生に上がった代が6人いることだ。
高校生の時は、受験が終わるとバイトに励んでくれていたスタッフ達も新生活に疲れ果てていた。週5希望だった子が週2希望に変わる、疲れているので長い時間働きたくない、来ても学校の愚痴ばかり。良い子達だったが、変わってしまった。

もう一つの理由としては、扶養を超えてしまいそうなスタッフが何人か出てきた事だった。掛け持ち先との兼ね合いや、最低賃金の上昇によって上がった給料が仇となっていた。

重なり今はシフトが組めない。
平日すら組めない日も出てきてしまった。

店長になってからと言うもの、シフトではあまり困らなかったので初めての感覚に憔悴し切っていた。毎週、シフト希望の紙を見る度に胃に何かが刺さったような痛みがした。


1人、スタッフにHSPの子がいる。
今年の四月からその子も例の如く専門学生になったのだが、シフトは週1回希望まで減っていた。
HSPがきっかけで学校に馴染めず、通信の高校に通っていた彼女は、新生活に疲れ果てていた。
毎日朝から晩まで授業と実習に詰められ、特待生で入学したプレッシャーから逃げられず、体調を崩していると本人から連絡が来ていた。

元々、その子からはHSPの相談を何回もされていたので事情は良くわかる。

週1回のシフトも彼女は隔週のペースで休むようになった。
体調が優れないからだという。学校との両立が、出来なくなっているようだ。

僕はここに苦悩を感じる。わからなくなる。

僕は店長だ。
お店の事を何よりも考え、決断をして行かなくてはならない。
週1回のそのシフトすら休み続けているその子を、優しくではあるが叱らなければならない。
他のスタッフの手前、
これ以上、席を置いておく事は出来ないと言わなければならない。
ここは学校じゃない。働きに来る場所で、過剰な甘えは許されない。

だが、僕はHSPでもある。
彼女が新生活に馴染めず体調を崩す日々を想像出来る。同じように辛さがわかる。泣いている時間がわかる。天井を見上げているのに思考の沼に落ちていく夜を、眠れずに不安の闇が襲ってくる夜を、偏頭痛や腹痛に苦しむ毎日を。
僕はわかってしまう。



その子と仲のいいスタッフが言っていた。
「なんか、学校にも行けてないみたいですよ」


今日も欠勤のLINEが来ていた。
既読してすぐ文字を打つ。


「お疲れ様!りょーかいです!色々大変だと思うけど頑張ってねー!!」

気付けば、送信していた。

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