理想の上司はどこにいるのか

「理想の上司」とのめぐり合わせは、はっきり言って人生を大きく変えるほどのパワーを持っていると思う。

小学校や中学校の時の先生とか、そういう人達も他人の人生を変えるパワーを持っている。

世間がどういう人に理想を持っているかわからないが、このランキングを見ても、また定番商品みたいなものばかりが並んでいるコンビニのような印象を受ける。

必ずしも世間にとって良い上司が、自分にとって良い上司とは言えないだろうし、アンケートの対象となった今春社会人になる学生達には、そのあたりのことをよくわかっているのか謎であったりもする。

世の中には厳しく指導して欲しいという謎の思想を持った人達もいる。私からしたら、本当にただのマゾヒストにしか思えない。私は仕事のやり方を覚えたら、できる限り放っておいて欲しいと思う派であるし、そもそも上司って社長以外必要か?と思っていたりもする。

大企業に入ると、予算の決裁権者を何百万円~何千万円までは課長、何千万~何億までは部長、とか、謎のシステムが登場して、それを覚えるのが仕事になる。

勝手に個々人が予算を使って仕事をするのは危険なので、上長にそのような決裁権限が割り振られているわけだが、実際のところAIなどが発達すればこのあたりの仕事は真っ先に消滅するかもしれない。

簡単に言えば、上司が必要な場面というのは、決断する場面である。直属の上司が決断できない権限であれば、もう一個上の上司に上げる。何か決まったら、それが上から降ってくる。

それがAIによって、平社員でも一発で適性な判断ができるようになったら、おそらく上司という存在は必要なくなるかもしれない。理想の社長ではなく、理想の上司というのも日本らしいというか、面白いところではある。

理想の上司を想像するなら何となくわかるが、新入社員にまで理想を押し付けるのが、なんとも日本らしい自分のコントロール下に置いて不確実性を嫌う性格が出ている気がする。そしてそれが芦田愛菜さんと鈴木福さんというのも、そんな慶応のバリバリ賢い人が欲しいか?とも思ってしまう。

特定の仕事を除いては、そんなに頭が賢くないと出来ないということはない。技術に比例して収入が上がっていくのはプログラマーとか、アスリートくらいで、基本的にド文系の人がやるオフィスワークで給料を上げるには、めちゃくちゃ残業するか、顧客に口八丁で自社に利益をもたらすような営業か、精神的にキツイ仕事になる。そもそも文系というスキルなのかも謎である。

就職面接ではよくリーダーシップの経験について聞かれる。だが、日本人のような単一民族で、指示すればその通り動くような人間達をまとめるのにリーダーが必要なのか?とも思う。リーダーというか、ルールだけあれば済む事も多い。

じゃあ、上司は何のためにいるんだろうか。私は仕事の経営方針を決断するためだと思っているが、AIがそれを出来るようになれば、ポジションは入れ替わると思う。

最近の転職ブームや、他社の情報が割と簡単に手に入る事で、全然あっちの会社のほうが給料いいじゃん。ということが様々な場所で起こる。大学生のアルバイトでさえ、シフトに柔軟なところと、勝手にシフトを入れられていたりする職場があるくらいだから、もう自分で職場を選ぶという感覚は常識になっている。

それと同じように、人や社風で会社を選ぶというムーブも普通になっている。単に金が良いとか以上に、長く働けるかだとか、リモートワークが出来るかどうか、副業がどうか、などなど考えることも増えている。

会社に「働かせてもらう」という感覚も薄れているだろうし、人が流動的になれば、上司に対して「会社でずっと活躍してきた経験がある人」みたいな見方もする人は減っているだろう。

今の上の世代の人達も、日産の社長がカルロス・ゴーンになったあたりから、いきなり社長が変わったら、会社がとんでもなく変わったり、急にリストラされたりするんだ。という認識が広がった。

ずっと会社にいられるかわからないという感覚と、自分ひとりで生きていけるようなスキルを身に着けなければいけないという意識が強まったと思う。

最終的には会社は守ってくれない存在になった以上、会社への愛社精神というものも薄れている。変な話、今の20代や30代前半の人たちのほうが、50代の人達より、愛社精神があるんじゃないかと思う。

今の若い人たちは、自分に合う会社をしっかり探している。その一方で、親と仲が良い子供も多いので、親が喜ぶような就職先を目指す人もいるらしい。

どちらにせよ、大企業であっても自分としっかりマッチするかを調べているだろうし、女性だと将来結婚したいとか、子供を生みたいとか絶対考えるので、そういう先輩がいるかを調べているはずである。

今の50代や60代にそんな感覚はないと思う。就職氷河期より前に就職できていれば、とりあえずあんま何も考えずに大学にオファーが来た大企業に行って、ITバブルやリーマンショックを経て居心地の良い会社なら、結婚して子供を育てて、言われた仕事をやってたら、50代・60代になった。みたいな感じだろうか。

それも悪いことじゃない。それが現代の若者には実現可能性が低い人生プランというだけである。

今の若者は安定を求めているという報道がある一方で、公務員の受験者が減っているとも言われている。おそらく、応募に対して過去より減っているとのことなので、それはどの企業や組織であっても、全体の子供の数が減っているのだから、そりゃそうだろ。という話かもしれない。

学校の先生など、劣悪な労働環境だとバレている公務員は、多くの人が本当に避けて、異常に人手不足になっていることは事実だと思う。ただ、市役所など、そういう公務員は人気が落ちているとも思えない。

ただ、公務員の人気が落ちている一つに、上司がやばい人が多いとは言えるかもしれない。公務員試験というのは、言い方が悪いが筆記試験で得点が高ければ入れる。その傾向は昔ほど強い。つまり、勉強しかできない老害のポテンシャルを持つ上司がたくさんいる懸念はある。

地方に行くと、転職の選択肢が激減するし、大都市じゃない限り役所の規模も小さくなるので、全然人が辞めずにやばい人が上へ登っていく確率はかなり高まることになる。

私は理想の上司というか、先輩みたいな人には何人か会ったことはある。ただ、マネージャーのような役割で尊敬できる人はだいたいいない。それは、日本人独特の性格というか、上に立ち慣れてない人がリーダーになることで、謎のリーダー像を押し付けられて、思考停止するからだと思う。

リーダーというのは、多くの会社において居ればいいだけで、決断するか責任を取るかすればいいだけだと私は考えている。逆に言えば、責任を取りたくない上司が、全て部下の行動を事細かに監視して、副業禁止にして、仕事からプライベートまでチェックして、ストレスが溜まってセクハラやパワハラをして、ゴミ上司が出来上がるということになる。

仕事が一定以上できれば、上司に向いていない人はいない。なぜなら居ればいいだけだからである。逆に、変に上司っぽくなろうとするから、失敗するとも言える。

今の尊敬できる上司像というのは、感覚的にグローバルな人かもしれない。グローバルな感性を持っている人というのは、若者の憧れだろうし、そういう人は感覚的に若いというのもある。

異文化に柔軟であるし、田舎者とは真逆の存在だろうし、ルールを押し付けるのではなく、若者の感性を大切にして、その人がそういうやり方をやりたいんだったら、その方が仕事の効率が良くなるから、こうやれば良いよ。みたいな代案もすぐ出せる人だと思う。

とはいえ、日本の経済もようやくインフレへ向かい、リモートワークなどもあり、何か変わりそうな気がする。私が生まれてから今まで、日本はずっと死んでいた。

この先で、また誰かが日本を殺すのか、勢いに乗って進化させるのか、そういう決断を下せるような人を、本当に信頼できる上司と呼ぶんじゃないだろうか。


無駄に思えることを一生懸命やっていきます サポートありがとうございます。