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『砂漠、薔薇、硝子、楽園、 』feat.松尾友雪 序文

【これは、お伽話感を重視しつつもヒューマンドラマ志向なキラキラヒリヒリ系近未来SF『砂漠、薔薇、硝子、楽園、 』の、序文です。本作は松尾友雪さまとのコラボレーション作品です、好き勝手に書かせていただいてしまってます、ので作品の出来に関する責めは私が負います、松尾友雪さまの簡単なご紹介、ご縁に感謝、書くの大好き、はじめます! 他】


feat.……?!

はい。これからお届けを開始します、『砂漠、薔薇、硝子、楽園、 』は、松尾友雪さまとのコラボレーション作品です。待って。もちろん、いまから説明します。でもまず、

松尾さん、
お誘い、ありがとうございます!

また、この記事に足をお運びの皆さま、ありがとうございます、読んでもらえるって、なんて、幸せ! そして、ええ、いつものご挨拶が抜けていますね。こんにちは、こんにちは、世界ですこんにちは。

(※いかにも公然な内緒話になるのですが、松尾さん側の作品もぜひ、お楽しみください☆↓)


創作は、本当、ね、お久しぶりです…『劇場版 春を謳う鯨 完成披露試写会』の、最後で少し触れていました、『春を謳う鯨』47話の完結後、脱力した私はあの、誰もいないシアターでぼんやりと、日々を過ごしていました。何か新しいことはしたいけれど、ぶつける何かがない。持て余したような、もう疲れてしまったような。何の準備もしていなかったかといえば、無論そんなことはないのですが、そうですね、できれば蕩尽、燃え尽き症候群と言いたい、バタイユのいうところの小さな死なのだと言いたい、しかしながらはい、いわゆるスランプだったんだと思います。

そんなある日のこと、そうなんです皆さん、こんな偏屈で偏狭で人見知りで人間関係に怠惰な私にだって繋がりが生まれるのですよありがとうnote、note仲間の松尾さんから、松尾さんがご自分でお持ちの、書きかけの原稿に手を入れてみないか、あるいはそれを受けて何か、作品を書いてみないかと、お誘いがあったのです。

こんな偏屈で偏(略)ありがとうnote、ここにこの序文があることからお察しの通り、私は、お誘いをお受けすることを決意したわけですが、無論、偏屈で偏(略)私は躊躇いましたよ。だって、ねえ書き手の皆さん、我が生命の滴、命を賭して守るべき卵も同然の、誰にも見せていない草稿なわけですよ。こう仕上げるつもりだったとかこう書いてほしいとかああ書いてほしいとか、テーマはこうだとか、こういう場面がマストだとかね、そういう例のあれね、あれがないはずが、ないんです。ですし、なにより、下のご紹介で明らかになるでしょう、私たちはスタイルもアプローチも、全然、違う。つまり、私が、少なくとも松尾さんの望み通り仕上げられるようには、思えないと、思った。偏屈で偏(略)私は恐る恐るそのような旨を松尾さんに申し出ました。松尾さんはしかし、たぶん、全然違うものになるだろうことはわかっている、プレッシャーを与えるつもりはなく、筆が動けばよしくらいのつもりで、何を変えてもいい、全て変わってしまってもいい、草稿について追加の情報を提供することも可能だが、こうして預ける以上は口出しもしない、自分の好みで、全く好きに書いていいと、気前よく仰った。

そこで、私はふと首を傾げたわけですね。あれ? 松尾さんって…。

すっげぇさっぱりした、いい人じゃん…!

いえね、すみません、何を隠そう私もそうですが、皆さん、ご本人のお人柄と作品って必ずしも一致しませんよね、私は(松尾さんすみません…!)なんというかその、結構、松尾さんの作品から、高邁な日常を送って哲学書ばかりお読みになって雨に打たれる吊るされた猫の死骸なんか見つめちゃって人間の生と性について憂慮している、私以上に偏屈なかたを想像してたのですが(←※偏狭ポイント1:なんか悪意のある想像)、ほんとカラッとした、良識的な、優しくて懐の深いかたでした。お、おと、お友達も多そう…!(※ポイント2:友達いない歴イコール年齢のため、話しかけてくる社交的な人に免疫なし)いやはや。生きてると色んな人に巡り会うのだなぁ。ちなみに松尾さん、定期的に雑談可能なnoteを作り、読者のかたがたと大変誠実にコミュニケーションをとってらっしゃいます、文学についてのお悩みなど、誰にしたものかお悩みでしたら、そうですとも、松尾さんのところを訪れになられてはいかがでしょうか。松尾さんはコメンテーターにも非常に温かで軽やかで真摯なnoterさんです。

…かくなる次第にて、今回のこの「コラボレーション」が動き始めました。お誘いをお受けした私は、松尾さんから、候補になる草稿をいくつか受け取りました。内容については、草稿自体は松尾さんのものですし草稿段階ということもあり、詳細は控えさせていただきますが、私が絶対に書けないような、それはもう美しい草稿です。それが、優しい風のような軽やかさで、私の机上にふわりと、舞い降りて来た。

私はいただいた草稿を仔細に見つめました。

草稿から私が思い浮かべたのは(のちに、全く見解違い(失笑)であることが判明しました← が…いえ、いいのでしょう、霊感とは後の祭りというか、終わり良ければ全てよしというか…)、あの、サモトラケのニケ、ナイキがその名を冠している、古代ギリシアの勝利の女神、頭と両腕と片翼の欠落した体に、風に吹かれた衣を纏わりつかせて舳先へ降り立つ、傷だらけの白亜の女神でした。

…私の物語のヒロインの名前は、仁綺(ニキ)にしよう。傷ついた、けれども踵に翼をつけてふわりと翔ぶような、スポーティな、伸びやかな身体と人柄の…達成と敗北、明るさと悲しさが同居するような、複雑な魅力のある、少女のような、大人の女性…。

『砂漠、薔薇、硝子、楽園、 』が、このとき、命を受けました。

お断りすると、
・近未来のSFでラノベ調
・主人公の名前は雨咲スグル
・ヒロインがいる
以外のほとんどが、ところどころ単語を踏襲しながらも、がらりと書き変わった状態でのお返事になっています。世界設定はもちろん、ストーリーラインもタイトルも違い、雨咲スグルも若干、雰囲気が残っている(と私は思ってます)ものの、ほぼ別人です。キャラの9割は草稿に名前はおろか、存在さえ無い人物ですし、しかも、松尾さんから短編とお聞きしていたにも関わらず、松尾さんの予定よりずっと話が長くなりました…長く長く、長く長く長く…長く長く長く長く…。

ですから、作品中に松尾さんらしい、素晴らしい点が残っているとすれば、それは全て松尾さんが受けるべき称賛ですし、作品の出来に対するあらゆる責めは全て、私に帰します。魂のようなものを共有している感覚はあるものの、この通り、外形が全く異なりますから、松尾さんのファンのかたがたにとって納得のゆくものになっているかどうかも、もちろんわからない。いままでに比べるとかなり好き勝手に書いています、だから、いままで読んでくださってた方々のなかには、疑義を感じられるかたもいらっしゃるかもしれません。でも…せっかく、「気にしないで自由に、のびのびと」と仰っていただきました、やや勝手すぎるかもしれませんが、のびのびと、書いてはおり、そういう私の、雨が上がって楽しくて走り出してしまった子どもみたいなハレ感も、楽しんで読んでいただけたらなと思います。

書くのって、こんなに楽しい。松尾さん、重ね重ね、ありがとうございます。

最後に、はい、遅ればせながら、松尾さんのご紹介をば…。松尾文学の鑑賞にも評価にも、私は口を挟みません、…挟めない、容赦のない洗練がここにあります。ですので…下に、松尾さんのとても美しい中編小説、『溺れる鯨と猿の座礁』の冒頭をご紹介させていただきます。私はこの部分が、大好き。この重量感、華やかさ、絶頂感、高揚感、物語の扉を開くときのあの、えもいわれぬ胸のときめき…。今回、ご縁により私の手元に舞い込んできた美しい草稿もまた、まるで秘された花のように、香り高かった。ここにその草稿の掲載はできませんが、その特殊な、読む人間の神経を痺れさせるような危険な香り高さは、『溺れる鯨と猿の座礁』の次の引用をお読みになれば、容易に想像されるかと思います:

 「とても巨大な生物が、体の中から這い出して、砂浜に打ち上げられました。無数の花が散っていますが、何処から咲き零れたのか私達には判りません。彼女は無言で息を吐き、それは空中で夜露と結んで糸になり、私は冬の雨に打たれる様な恋に溺れています。偶数の螺旋が私を振り解き、影は追い駆け追い付き逃げて行きます。私の正直な身の上話を申し上げて、納得して頂く事など不可能でしょう。然し、どうか最後まで聞いて下さい」人物は云った。
 「ええ、勿論です」白羽拿梛(しらはなな)は云った。

※作品はマガジン『幻想官能小説集』に、たいへん興味深い創作ノートとともに、4話完結で収録されています。驚嘆と生命とに満ちた、とても読み応えのある作品です。気になったかた、リンクの先にぜひ行かれて、松尾さんの世界観を、ご堪能ください!


『砂漠、薔薇、硝子、楽園、 』は、私ひとりでは決して書かれえなかった物語です。私はこの共同企画によって、新しい私に、出会えました(何度でも…言わせてください、松尾さん、素晴らしい機会を、ありがとうございます!)。

願わくば、今回お届けする『砂漠、薔薇、硝子、楽園、 』が、皆さまの心の世界の片隅に、忘れられない物語としてそっと、留め置かれますように…。


読み慣れた人にこそ、「なんだこれは」と思ってほしい。私はやっぱり、お話を書くのが、大好きです。

では…松尾さん、皆さん、長文にお付き合いくださいまして、ありがとうございます。


お待たせいたしました、


はじめます!


>1.ニキ_


今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。