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#茨木のり子

平熱

平熱

混沌とする社会情勢に、いちいち感情を昂らせるのはいやだ。自分の思念にのぼせるのもいやだ。かといって、白けて無気力になるのもいやだ。そもそも上がり下がりするのがいやだ。
何かこの感情をうまく言い表せないかと思っていたところに、表題の二文字である。

そうだわたしは平熱でいたいのだ。茨木のり子はいつも的確である。

『歳月』かけて価値の高まる本

『歳月』かけて価値の高まる本

5000円する本を買った。茨木のり子の『歳月』は、20代前半のころに図書館で借りて以来、いつか買おうと思っていた。いつでもいいやとたかをくくっていたら、絶版になっていた。プレミアがついて、シミつきの中古本でもこの値段だった。

この本は、茨木のり子が夫と死別してからの31年間にわたって書き綴った詩集だ。夫についての、あるいは夫がいないことについての詩。著者の亡き後に原稿が発見され、出版されることと

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