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辺境がなくなってしまった時代の旅は

村上春樹の「辺境・近境」を読んだ。

旅行記はもちろんおもしろく読めたのだけど、「うん、うん」とうなずいてしまった文章は、まるであとがきのようにも思える、最終章に散らばっていた。

タイトルにもなっている「辺境」。
ちょっと隣町へ行くように、山奥だろうが、地球の裏側だろうが、南極だろうが簡単に旅行できる今の時代、残念ながら、辺境は、もうない。

場所としての辺境が存在しなくなった今、大事なことは、それでも自分の中に辺境を産み出せるスペースがあると信じること。そしてその思いをあらためて確認する作業が、旅なのだ、というようなことを村上春樹は書いている。

そういえば、旅の途中で、日常と非日常の境目が少しあいまいになってくる時があって。そういう時は、たぶん、ふだんの自分と考え方や感じ方に変化が起きているはず。そうして「辺境」をみつけることができるのかもしれない。

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