Base_Ball_Bearを追えば_次に流行る音楽ジャンル_分かる説

Base Ball Bearを追えば次に流行る音楽ジャンル分かる説

10年代の音楽シーンを考える記事を「Hello,CULTURE」に掲載した。

この記事を書いて改めて考えると、10年代の音楽シーンをスゴク大雑把に纏めると「4つ打ちダンスロック→EDM(打ち込み・エレクトロ)→ブラックミュージック→シティポップ」という流れだったことが分かる。

そして以前から僕が考えていた事がこの記事のタイトルである「Base Ball Bearを追えば次に流行る音楽ジャンル分かる説」である。ベボベは音楽シーンをちょっとずつ先回りしているのではないか、と常に考えていたし、そういう話は各所で見られていたように思う。ということはつまりBase Ball Bearを追えば次に流行る音楽ジャンル分かるのではないか。

ということで今回は今までの音楽シーンとBase Ball Bearの音楽性を改めて比べ、その参考となる文献を提示しながら、いかにBase Ball Bearが音楽シーンを先取りしていたのかを考えようと思う。

まずは4つ打ちダンスロック。これはもう言わずもがなな気もするが。

ライターのimdkm氏によるこの記事が示しているように、06年のデビュー当時からBase Ball Bearは4つ打ちを武器として活動していた。デビュー曲「ELECTRIC SUMMER」は、後にBase Ball Bearのフロントマンである小出自身「4つ打ちダンスロックのクラシック」と発言している。(出典:YouTube BaseBallBear 公式チャンネル「ツアードキュメント「僕の目 '14」2014.11.29 @台場 追加公演」より引用)

その7年後の12~14年にロックフェスの隆盛と共にBPMの速い4つ打ち楽曲がロックシーンを席捲するようになったことは先の拙記事やimdkm氏の記事の通りである。

続いてEDM(打ち込み・エレクトロ)。そもそもBase Ball Bearは「打ち込みを使わない/自らの生音でによる楽曲」を不文律としてきたバンドで、故に打ち込みのサウンドは本来Base Ball Bearには成し得ない分野なのだが、エレクトロという意味合いで該当するBase Ball Bearの楽曲といえば「yoakemae」だろう。

生音とは思えない、あるいは「生音ならではの魅力」とされるものを限界まで削ぎ落したサウンドは、エレクトロと言うよりは寧ろ「打ち込み」の雰囲気を纏っている。これを敢えて生音で表現するという所に、彼らがいかに生音に絶望しながらも拘り続けているのか、ギターロックを憎みながらも愛し続けているのかが如実に現れている。。

タワーレコードオンラインによる「新呼吸」インタビューの締めにはこう書かれている。

さらに〈NO同期、NOシンセ〉を掲げ、生音のみで打ち込み並みの正確なグルーヴを作り上げるなど、細部に凝りまくったサウンド作りの妙技はさらに深まった。

そしてブラックミュージック。先に提示した「10年代の10曲」記事にも書いた通り、飽和したフェスシーンに対するカウンターとして機能した彼らのアルバム「C2」は、ベース関根史織とドラムス堀之内大介によるリズム、グルーヴを中心としたディスコ調やファンク調、所謂ブラックミュージックの手法が光るアルバムとなった。

RHYMESTER・宇多丸による星野源との対談で、宇多丸は星野源の「YELLOW DANCER」と「C2」を比較し、こう評した。

あと、僕の勝手な見立てでベボベ(Base Ball Bear)の『C2』っていう最新アルバムがあるんだけど。それとの別ルートからの合流みたいな。本当はそういういろんな見立てもあるんですが、時間がないので。

「YELLOW DANCER」は星野源が「イエローミュージック」を自称し、ブラックミュージックのグルーヴ感をJ-POPに昇華してみせ、彼の転換点となったアルバムだ。自身の音楽性のブラックミュージックへの接近という意味でこの2作は共通したテーマを抱えているし、宇多丸がこの2作を比べた事も頷ける。

またrockinon.comのディスクレビューでは「C2」期について「ディスコファンク」「グルーヴィー」と評すなど、ブラックミュージック的なアプローチであったとしている。

そしてシティポップ。シティポップが流行したのは17年~18年にかけてだが、17年にリリースされたアルバム「光源」では先立ってシティポップ的なアプローチからの楽曲が目立った。

シティポップはブラックミュージックと地続きの関係性を持つ以上「C2」のブラックミュージックからシティポップへと音楽性が変わっていくのは必然だった。むしろ「C2」期からシティポップ的な文脈は存在して、例えば音楽ポータルサイト「EMTG MUSIC」では「不思議な夜」をこう評している。

カーステレオのFMラジオから流れてきそうな「ベボベ流シティポップ」とでも言うべき仕上がりだ。

「光源」リリース直後にライターの三宅正一氏と共に行われた「海賊版インスタライブ」では小出自身が「シティポップのテイストを感じる」ことを認め、結果的にそこに行きついたということを話している。

また「Grape」発売後「Real Sound」でのインタビューでは小出自ら「シティポップ的アプローチ」に対してこう話す。

僕らが『C2』~『光源』でやっていたような、シティ・ポップ的アプローチや、シンセを入れたグルーヴィーなバンドサウンドが増えてきてますよね。「やっぱりな」と思って。

以上のことからも分かるように、Base Ball Bearはデビュー当時からほぼ一貫して音楽シーンの一歩先を歩んできたことが分かる。彼らの足跡がイコール音楽シーン、とまでは言わないものの、音楽シーンの未来を語り、考える上で彼らの活動を参考にすることは、これまでの彼らの活動を鑑みても非常に意義のあることなのではないだろうか。

上記した「Real Sound」でのインタビューで、小出は近い未来の音楽シーンがどう変化するかについて、こう語っている。

で、この次のタームに何が来るのかを考えたら、「単純に演奏が上手い」というところに戻ってくると思ったんです。ギターが上手い、ベースにグルーヴがある、ドラムがタイトである。その場の機材で、裸一貫で演奏できる。そういうことが武器になる時期になってくるんじゃないかなって。

少なくとも彼らは既に、あるいは常に、未来の音楽シーンを見据え、考えているのだ。

「Base Ball Bearを追えば次に流行る音楽ジャンル分かる説」。きっとこの説は、Base Ball Bearが自身の音楽人生をかけて立証し続けてくれることだろう。

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