見出し画像

【恋愛】出会いとは常に日常にある。㉖

「少し早いですが、昼休憩にしましょう」と
佐藤さんと集めた副主任候補たちに伝える
「食事は裏にコンビニがあるから、そこで買ってきてココで食べても構わないし
近くに立ち食いそば屋があるから、そこで食べても構わない。
時間だけは厳守。13時には全員集まっているように解散」と付け加える
「佐藤さん、食事は立ち食いそばでも食べに来ませんか?」

「構いませんけど、立ち食いそばってあの立ち食いぞばですよね?」

「そうですよ、食券を買って渡して、食事を提供してもらい立って食べるお蕎麦屋さんですね」

「私、立って食べるのが苦手なんですよね」

「そうなんですか。んじゃ立ち食いそばにしましょうか」

「二重螺旋さん、私の話を聞いていましたか?」

「聞いていたからこそ、立ち食いそばにするんじゃないですか」

「意地悪ですね」

「意地悪だと思うなら、思っていても構いませんよ?」

「わかりましたよ、お付き合いしますよ」
僕と佐藤さんは近所の立ち食いそば屋まで行くことにした
立ち食いそば屋で、僕はざるそばとミニカツ丼セットの食券を買いカウンターへ出す
佐藤さんも同じ食券を買いカウンターへ食券を出す
「親方さん。裏開いてる??」
立ち食いそば屋の親方さんはちょっと待っててと伝え確認をしに行く
返事は開いてるから使って構わないって返事だった
立ち食いそば屋の一番奥にある扉をあけて扉をくぐると狭いながらも
お座敷席が構えてある、一般的には知られてない場所だ
佐藤さんは「こんな秘密の場所があったんですね」と言っていた
「佐藤さん、立って食べるのは苦手ってことでしたけど、座るのであれば問題ないですよね?」

「二重螺旋さん、なんでこの場所を知っているんですか?」

「僕は主任時代に、ここの親方と仲良くなって教えて貰ったんですよ。基本的には教えないそうですよ?」

「そうなんですね。ところで、どうやって仲良くなったんですか?」

「親方に話しかけてたら、席がなくなってそばが食えねぇって言ったら教えてくれましたよ」

「そんな理由で教えてもらったんですか」

「そうですけど、何か問題でも?」

「いや、ないです」

「ないなら、問題はないですね。しかもこの席だと注文した商品を自分で取りにいくんじゃなくて持ってきて貰えるんです」

「お?!ちょっとしたVIP待遇ですね」

「しかも、ここの空間だけタバコを吸うことが可能なんです!」

「それはいいですね」

「多分、うちの会社だと僕だけが知っている場所ですよ」

「二重螺旋さんって、本当に短い時間で人と仲良くなりますね」

「現場あがりの強みってところですかね?」

「本当に誰とでも直ぐに仲良くなりますね」

「僕は仲良くなろうと思っていないんですけど、知らない間に仲良くなってるパターンです」
こんな会話をしていたら、頼んでいた食事が運ばれてきた
食事をしながら午後の話をする
「二重螺旋さん。午後はどうするんですか?」

「午後は簡単な基礎実技テストをして、参加者のレベルを確認します」

「確認をしてから、どうするんです?」

「もう一度、基礎を叩き込みます」

「基礎のおさらいですね」

「そうなりますね、多分なんですが基本をすっ飛ばして応用から入っている人が多いと感じたんで」

「私も勉強できますかね?」

「佐藤さんには、僕が説明をするので見本になってください」

「ちょっと待ってください。基本に自信がないですけど」

「大丈夫ですよ、僕が説明した後に動けば問題ないです」

「不安しかないですけど」

「何も難しい事はお願いしませんよ」

「その基本が終わったら次はどうするんですか?」

「今日は嫌になるまで基本を繰り返しますよ、基本が出来てないのに応用なんてさせませんよ」

「厳しいですね」

「厳しくないですよ、事故の統計データを調べましたが、技術不足から発展していると思われる事故が数件ありましたから」

「いつの間に調べたんですか?」

「暇だったので、監査室の事故調査委員会に問い合わせて事故報告書及び年間事故発生数のデータをもらって分析しただけです」

「あの、そんな時間ありましたか?」

「休み時間を利用してチマチマと分析していたんですよ。良い暇つぶしになりましたよ」

「知らないうちに、そんな事していたんですね」

「前にも言いませんでしたっけ?隠密行動と情報収集は僕の特技だと」

「言っていましたけど、隠密行動過ぎますよね」

「そうですかね?」

「そうですよ、手分けすれば早く終わりましたよ?」

「手分けするほどの仕事量ではないと判断をしたんで」

「次からは言ってくださいね」

「次があったら、お願いしますね」
こんな会話をしながら、食事を終えて会議室へと帰り
副主任候補たちのレベルを調べることにした。
準備する道具は名称ではなく正しい道具名を使い、準備の段階から実務の理解度を見る
うん、やはり現場では名称を使用している事が多いから四苦八苦している姿が見受けられる
正しい道具名も分からないのに名称を覚えるのは10年早い!と思いながら
佐藤さんに目を向けると、佐藤さんも一緒になって四苦八苦しているではないか!!
これは、ヤバいと思いiPhoneを出して道具の名称で必要なものをメッセージで送信する
佐藤さんはメッセージに気づいて、メッセージを見ながらシラ〜っと準備をし終わらせて
僕の隣へと戻ってきて、佐藤さんが言う
「二重螺旋さんがメッセージをくれなかったら道具を揃えられなかったです」

「いや、揃えられましょうよ。佐藤さん」

「現場経験が短くて、しかも名称で呼んでいたのでわからなかったです」

「まぁ、仕方がないですね。候補者もチラホラと揃えられているようなので基本の基をやりますか」

「私がやるんですよね?」

「いや、あのですね。不安を感じたので僕がやります。その手伝いをしてもらえますか?」

「すみません、わかりました」

「佐藤さんが謝るところではないので気にしないでください」
そうこうして、普段から行っているであろう基本実務を副主任候補さん達に行ってもらった
その基本実務を行う姿を見て、僕は愕然とした
マニュアルは統一されているのにも関わらず、参加者全てやり方が違うのである
正直、想定外のレベルの低さだった
レベルが低すぎて基本の基よりも、基礎からの教え直しと判断をした
佐藤さんに小さい声で「思ってたよりもレベルが低すぎて話にならないです」と伝えた
佐藤さんは参ったなといった感じの顔をしていた
僕は副主任候補達に伝えた
「正直に伝えますが、自分が悪いと思い込まないようにレベルが低すぎて話になりません。皆さんに大変申し訳無いです。
これも本来ならば主任の責務及び本社の監督不行き届きです。僕が責任を持って基礎から実務を教えます。
なので今回は反復して基礎を覚えましょう」
道具の正しい名前・正しい使い方・薬品への知識・素材へのダメージなどを繰り返し伝えた
そんな繰り返しを行っていると、短い時間でも慣れが生じてきてミスが増えるようになってきた
実務作業で一番怖いのは慣れと慢心である。慣れと慢心が事故を招く
集中力も落ちて来ているように見えたので、15分間の小休止を入れることにした
「佐藤さん、タバコを吸いに行きませんか?」

「いいですね、二重螺旋さんもお疲れって感じですね」

「はい、思ったよりも疲れますね」

「タバコはコンビニですか?」

「コンビニではなくて風通しが良くて、見晴らしのいい所に行きましょうか?」

「何処ですか?」

「内緒ですよ、その前にコンビニで英国紳士の嗜みと黒苦汁を買いにいきましょう」

「その黒苦汁ってやめてもらえませんかね?」

「嫌です、僕は言い続けますよ」
こんな会話をしてからコンビニに向かいミルクティーとブラックコーヒーを購入した

つづく