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【恋愛】出会いとは常に日常にある。㉚

僕は佐藤さんに向かって「なんで、そんなことをいいだしたんですか?」と問いかける
「最近、二重螺旋さんと一緒に仕事をすることが多くなってきて、違うチームだとスケジュールを合わせるのが大変なので」

「まぁ、佐藤さんの言うことにも一理ありますね。けど事前に連絡をしてもらえばスケジュールを合わせるのは可能ですけど」

「二重螺旋さんの場合、クライアントとの定例会など固定されているスケジュールばかりなので、私がスケジュールを合わせるのが大変なんです」

「そうなんですね、分かりました。チームを外れるのは構わないですけど、何処の現場を管理すればいいんですか?」

「それは役員から、お願いします」

「二重螺旋に任せる現場は決めてある。知り合いがやっている総合商社だ」

「それって、アレですねよ。歴代担当者が3ヶ月で勘弁してくれって懇願してくる現場ですよね?嫌ですよ、そんな現場」

「お前、ど直球で言うな。もう決めたことだから」

「役員、僕には拒否権が無いってことですね?」

「そうなるな、業務命令だ」

「今日は僕にとって厄日も良いところですよ。朝イチから会議に出ろとか、面倒な現場管理しろとか」

「二重螺旋さん言い過ぎですよ」

「本当のことを言って何が悪いんですか?」

「言って良いことと悪いことがありますよ」

「佐藤くんと一緒に頼むよ、向こうさんからは勢いのあるヤツでって言われてるから、頼むよ」

「役員に言われたんじゃ、断れないじゃないですか。分かりましたよ、やりゃいいんでしょ」

「二重螺旋さん言い方」

「言い方もクソもないですよ。決定してるし拒否権はないし」

「二重螺旋、頼むわ。おれもバックアップするから」

「わかりましたよ。やりますよ」

「んじゃ、佐藤くんと一緒に頼んだよ」
そう言うと役員は席を立ち、商談室を出ていった
それにつられて、佐藤さんと僕も商談室を出る
デスクに戻り、スーツの上着を羽織り、喫煙室へ向かう
僕の腹の中は、糞ったれって気持ちだけだった

喫煙所についてタバコに火をつけて煙を飲み込んで吐き出す
今日ほどタバコが不味いと感じる日は中々ないなと思いながら今後の仕事の仕方を考えていた
なにせ、歴代の担当者が3ヶ月で潰れていく現場のチームに入ったからだ
面倒な仕事は大嫌いだ、やる気も起きやしない
正直に言うと常日頃からやる気なんて無い、それに拍車がかかる
悩んでいても仕方がないかと思いながら空を見上げながらタバコの煙を吐き出していたら
いつの間にか、佐藤さんが来ていて
「すみません、なんの相談もなく役員に話をして」と声をかけられた
声をかけられるまで、佐藤さんの存在に気づいていなかった
「あ、佐藤さん。お疲れさんです、本当ですよ前もって話ししてくれてもいいじゃないですか」

「前もって話をすると、二重螺旋さんのことだから潰しにかかりますよね?」

「勿論、全力疾走で潰しにかかりますよ」

「それを見込んで、前もって話をしなかったんですよ」

「やり方がコスいですね」

「私と一緒に仕事をするのは嫌ですか?」

「嫌ではないですけど、任された現場が嫌なんですよ」

「だから、私と一緒なんですよ」

「一緒に仕事が出来るのは嬉しいですよ。一緒にいる時間が増えますし、けど何でまた僕なんですか?」

「他の人に比べて知識量の差と、交渉能力の差ですかね」

「佐藤さん、僕を買いかぶり過ぎですよ?」

「私はそうは思っていませんよ?」

「買いかぶりすぎですね、僕は楽に仕事をしたいから強引に曲げて仕事をしているんですから」

「そう言うところが大切なんですよ」

「拒否権はなかったですけど、同じチームになったんで改めて宜しくおねがいします」

「こちらこそお願いします。ですが、すぐにはチーム変更は起きませんよ。引き継ぎもありますかたね。期待してますよ」
僕は手をヒラヒラさせながら
「期待をされるのは嫌いですから」と返事をした
お互いもう1本タバコを吸って、エレベーターに乗り本社のあるフロアーに行くまで
お互い無言だった

すぐにチーム変更はされないと言う話ではあったが
急に新しいチームの仕事を任される可能性が捨てきれていなかったから
僕の後任にむけて、引き継ぎ書を作成することにした
毎月何日には集計がある、毎週何曜日にはシステムチェックがある、月半ばには用土品発注があり
月の終わりから新しい月にかけては、出勤チェックをしばければならばない
1ヶ月通して大まかな仕事はこれだけだが、僕が任されている現場からは
ありがたい事に毎日のうように何かしらの問題提供がメールで届いてくる
僕からすると、何でこんなにも問題があるのか不思議で仕方がない
なぜ、自分で問題を含み咀嚼して問題の本質に迫る前に人に頼ろうとするのかが疑問でならない
現場に電話をして話を聞いてからクライアントに電話をして聞くと
右にある物を左に移動させれば済む程度の話が多い、何でも人に頼るのは間違いだと思う

僕が管理している現場主任の話し方・性格等、多い問題・原因
クライアント話し方や考え方をまとめた書類を後任者のために作成をした
ここまでする前任者もいないと僕は思う
僕がまとめていた現場の知識なんて誰一人としてくれなかった
挨拶回りをして、顔と名前を必死に覚えて1ヶ月に1回行われる定例会終了後に
5分程度時間をもらい仕事と雑談をして、必死に関係を築いてきたと僕は思っている

後任者の為の書類を作成していたら定時をまわっていて、もう少しだけ他の仕事をして帰ろうと考えていたら
佐藤さんから声がかかった
「まだ仕事ですか?」

「もう少しだけ、仕事を進めておこうかなって考えてます」

「根を詰め過ぎないでくださいよ」

「根を詰めるような仕事を振ってきた張本人が言わないでくださいよ」

「まだ根に持ってますね」

「少しだけ意地悪な言い方をしただけですよ。後任者の為に資料をまとめたら帰りますよ」

「そうですか、わかりました。伝えておきますね、明日ですが病院に寄ってから出勤するので午後近く
もしかしたら、午後に出勤するかもしれないです。」

「平気ですか、どこか調子悪いんですか?」

「最近、お腹の調子が悪いので気になってて」

「そうですか、わかりました。安静にしてくださいね」

「安静に出来ればいいんですけどね」と言いながら少しだけ笑う佐藤さん

「明日、病院へ行くなら早く帰宅しないと何処ぞの誰かに捕まって帰れなくなるかもしれないですよ?
早く帰ったほうがいいですよ?佐藤さん。お疲れさまです。」

「そうですね、二重螺旋さん。お先に失礼します」
佐藤さんを送り出してから、佐藤さん平気かな〜?と思いつつ資料をまとめていた
定時も回って、チラホラと帰っていく他部署の人たち、そんな姿を横目に
キーボードを叩いて資料をまとめ上げ、PCに保存をして
帰り支度をして、残っている人達にお疲れさまですと声をかけて本社を出る
喫煙所に向かいタバコを吸う。
ビルとビルの間にある狭い空間の喫煙所
この喫煙所から見上げる空が、なんとなく好きだった
僕は空を切り取っているように感じていた
タバコを吸い終えて、僕は帰路についた

つづく