【恋愛】出会いとは常に日常にある。⑪
新しいシステムの提案をしたクライアントにアポを取り見積もりを持って佐藤さんと一緒に電車に乗って向かう。
勿論、僕は何処で乗り換えるのかなんて覚えなくもないから覚えてはいない。
理由は、面倒だし佐藤さんが覚えているから僕が覚える必要はない。
さて、僕が作成した見積もりを佐藤さんが提案をするようだ。
うん、僕には出番が無さそうだ。
全てを佐藤さんに任せれば問題はないだろう。
僕がしゃしゃり出て、取れる仕事も取れなくなってしまったら会社に迷惑をかけてしまう。と言ったものの
正直、僕はこの仕事は取りたくないと思っていた。
電車内で佐藤さんからは
「言葉に詰まったり、専門的な事になったら詳しい説明をお願いします」と伝えられていたが、佐藤さんが自分で何とかするだろうと思っていたので
「あぁ〜はいはい。まかせんしゃい」と
軽口を叩いてきた
だってねぇ…取りたくもない仕事を取る必要はないと思っていたから。
そうこうしながら電車を乗り換え、目的の駅で下車をする。
地下鉄の長いエスカレーターに乗り、改札を出て、テコテコと歩きクライアントの会社へと到着した。
佐藤さんは、僕を見て「困ったら助けて下さいね」と言ってきた。
僕は改めて「あぁ〜はいはい」と軽く返事をしたら、佐藤さんが訝しげな目をした。
そんな目で見なくてもいいのにな。なんて思いなが佐藤さんの後ろを付いていき
受け付けで待つ。担当者が現れて商談室へ通される。そこでまたコーヒーを出される。
何故、コーヒーを出すのか疑問で仕方がない。僕から言わせてもらえば何も聞かずにコーヒーを出してくるのは、コーヒーハラスメントだと思うのだ。
コーヒーと緑茶、若しくは水くらいは準備しておいて貰いたいものだ。
コーヒーが好きな人には申し訳ないが、黒く苦い汁を飲む人の気持ちが分からない。
出されたコーヒーに申し訳程度についてくる砂糖とミルクを入れて飲む。
…………苦い…………これでまた胃が痛くなる………。
佐藤さんを見たら、またもやブラックでコーヒーを飲んでいる。
………!!僕は決めた、ブラックコーヒーを飲んでいる人を助けないと説明で四苦八苦すればいいのだ。
黒苦汁を飲め!!
こんな事を僕は腹の中で思いながらも、一生懸命見積もりの内訳とシステムをクライアントに説明をしている佐藤さん。うん、四苦八苦しているね。
凄いね言葉の間に「え〜、あ〜」って挟みなが時間稼ぎしながら説明をしている。説明しながら僕の方をチラチラ見てきているが、僕は佐藤さんに満面の笑みをプレゼントしていた。
佐藤さんは痺れを切らしたのか
「より詳しくは二重螺旋からしますので」と振ってきた。
正直、おっ?説明を振ってきたよ。って思ってしまった。
振られたからには説明をしなければならない。
クライアントに見積もり金額の話をする。改めて本来の金額より10%値引きした金額である事を説明をする。その後システムの仕様等を話をした、クライアントの上司が登場して雲行きが怪しくなってきた。クライアント上司の言い分だと10%値引きでも高いと言う。
高いなら買わなくてもいいのに。と腹の中で思いながらも新しいシステムの説明をする。
システムは気に入っているみたいだけど
金額が気に入らないようだ。
金額が気に入らないなら買わなくても良いのに、10%引きでも普通に購入して設置しても安いのに10%より安くしろって言うんだから、たまったもんじゃない。
クライアント上司に「電話いいですか?」と断りを入れてメーカーに電話をする。
「もしもし、二重螺旋ですけど新システムのお見積りですが、もう少し減額できませんか??」と会話をする。
これは僕の常套手段である。
高い見積もりを提示し、目の前でメーカーに電話をして値切り交渉をする。
10分位、安くなる、安くならないなど話をして落としどころを見つけた様に見せつけて、クライアントを落とす。
この手を使い、利益率37%の見積もりで
クライアントは落ちた。
撃墜成功である、撃墜成功したらここからが本番である。僕が考えた定期メンテナンスの提案を行う。クライアントに年12回、年6回、年4回の定期メンテナンスを勧めてみる。僕はわざと年6回の定期メンテナンスを勧めて相手の出方を探ってみた。やっぱり財布の紐はキツくしまっている。
ここでスマホ保険の例えを出してみた。「スマホをなくした場合・不慮の事故で壊れてしまった場合に安心保険ってかけていますよね??それと一緒だと考えてください。新車買ったら3ヶ月検査、半年検査とありますよね?それと一緒です。
それを定額で行い、検査結果を報告書を作成しご報告はメール。怪しい点などがあった場合は報告書で報告し、修理するか、様子見をするは御社でご判断をして頂きたく思っております」
クライアントは年4回の定期メンテナンスを契約してくれた。
システムの値下げした金額でも黒。
定期メンテナンスでも黒で勝負は勝ち。
システムの新しい見積もりと、定期メンテナンスの見積もりと、契約書を郵送いたします。と伝え、システムを設置する場所に行き簡単に説明をして、クライアントを後にした。
テコテコ歩いていたら
佐藤さんが「二重螺旋さん!」少し大きい声で、話しかけてきた。
僕は少しビックリしてしまった。
「どうしました??佐藤さん大きな声で呼んで」
「困ったら助けてくれるって言っていたじゃないですか?」
「困っている様には見えなかったですけど?説明もしっかりとされていましたし」
「僕はチラチラ見ていたじゃないですか!!」
「あぁ、アレが助けて欲しいサインだったんですね?」ととぼけてみた。
「そうですよ、ニコニコ笑ってコッチを見ていて助けてくれなかったから、詳しい説明はって話を振ったんじゃないですか」
「話を振られたから、あぁ、僕の出番が来たな。って思いましたよ。」
「話を降る前に気づいてくださいよ!」
「まぁ、落ち着いてコーヒーでもシバキながらタバコ吸いましょうよ」
「ドドールで良いですか?」
「この前に行ったドトールにしましょう」
テコテコと2人で無言のままドドールへ向かい店内に入る。
佐藤さんはコーヒーを頼む、僕はアイスロイヤルミルクティー。
喫煙室に行き、スーツのポケットからタバコを取り出して火を付けて煙を飲み込んで吐き出す。
「何で助けてくれなかったんですか?」と話をむし返す。
「クライアントに頑張って説明していみしたから邪魔したら悪いかと思って」
「それにしてはニコニコしてましたよね?」
「真面目な顔して待っているのも変だと思ったので」
「私が話を振らなかったら、どうしてたんてすか?」
「どうしてましたかね?状況によりますよ」
「状況って?どんな状況ですか?」
「その時にならないと分からないですよ。状況なんて常に変化してるんですから」
「いい加減ですね」
「いい加減ではないですよ、タバコの煙だって毎回違う上がり方をしているんですよ??それをいい加減と説明するなら、全てがいい加減になりますよ」
「また屁理屈を言いますね」
「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか、仕事も取れて、新しい試みも取れたんですから」
「二重螺旋さんは、仕事に対して真面目まのか不真面目なのか分からない」
「どっちでもないですよ。楽しいと思う仕事をするだけですからね。楽しかったら真剣にやりますし、楽しくなければ仕事しないですから」
「よくそう言うことを、普通に言えますね?」
「食べ物の好き嫌いと同じですよ。好きなものなら、山ほど食べるけど、嫌いなものなら食べないですよね。それと一緒です。正直に話をしますけど、佐藤さんがクライアントに説明をしていた時は、僕は凄く面白かったです。ごめんなさい」
「ほら、やっぱり楽しんでた!」
「説明している姿が楽しくて楽しくてね」
「嫌な性格してますね」
「よく言われるので慣れてますよ。あと時間があったから、主任会議のレジュメと内容を作成してあるので機嫌を直して下さいよ」
「わかりましたよ。今回は仕事取れたし主任会議の内容も決めてくれたって事で手打ちにしますよ」
「うん、良かった。僕は楽しめたし佐藤さんは機嫌を直したし」
「二重螺旋さん、1ついいですか?」
「質問でござんすか?質問ならどうそ」
「目の前でメーカーに電話して値下げ交渉してましたけど、メーカーは納得いってるんですか?」
「あれですか?納得も何もメーカーにもガッポリ入るような見積もりですからね。いつもの事なので向こうも慣れっこですよ。値下げしてます!頑張ってます!ってのを、見せれば向こうも断りづらいでしょ??だからこその3段構えの見積もりなんですよ」
「私は目の前でメーカーに電話したした時はドキドキしましたよ。ゴリ押しの値引きしてるって」
「クライアントには良いアピールになりましたね。お客様目線ってヤツですよ」
「本社に戻って役員に報告をしますか」
「そうですね、ゴッソリ取ってきたって報告しましょうかね」
「表現が悪いです」
「美味しく頂きました」
「言ってる私が間違えているような気になってきました。それと来週の木曜日スケジュールが空っぽでしたけど何かありますか??」
「特別何もないですよ」
「役員から社外研修に行ってくれと言われておりまして、行きませんか?」
「仕事しないで話を聞いてるだけなら行きますよ」
「では、スケジュールに入れますね」
「りょ〜かいです」
こんな会話をしてから佐藤さんの後ろをついて歩き本社へ帰り、仕事が取れた事と、新しい試みの契約も取れたことを報告をした。
つづく