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【恋愛】出会いとは常に日常にある。㉔

佐藤さんに振られていた部長の仕事は無事に部長の元へ戻り
多少は佐藤さんの仕事量が軽減出来た
けど、軽減出来たと言っても気休め程度だった
僕は現場主任たちから副主任候補を選んでくれとメールを
送信したが、現場からの声は良いものではなかった
副主任を任せられるような人材がいない
人が足りていないから副主任育成会に参加させたくない。とか
僕も主任をしていた時期があったから、気持ちは理解できない訳ではない
うちの会社の現場は、悪い習慣が根を張っていた
副主任を育てようと思っていないのだ
人手が足りないから、人に任せるより、自分でやった方が早いからだ
それじゃぁ、人材は育たない
育たないから、人手が足りないと思い込んで自分自身の首をしめているのに気づかない
育てられないから、育てる機会を作ろうとしているのに裏を無駄に読んで
育ったら他の現場に連れて行かれると思い込んでいるようにしか感じられなかった
参加者がいなくてもプロジェクトは進めないといけない
僕は考えた、どうすれば人が集められるのか
悩んで行き詰まった時は、英国紳士の嗜みとタバコに限る
ジャケットを羽織り、ポケットにタバコが入っているのを確認する
財布を持って席を離れる
自販機で缶のアイスロイヤルミルクティーを買う
冷たい缶を握りしめ、喫煙所へ向かう
喫煙所に着いたら、缶のプルットプを開けて一口飲む
タバコを箱から取り出して、火を付けて煙を飲み込み天井を見上げながら
飲み込んだ煙を吐き出す
うん、間違いなく良案が浮かばない。浮かぶはずがない。
「さて、ど〜するすっかな」と独り言をつぶやく
真剣に悩んでいたら、ひょっこりと佐藤さんが現れた
「あら?二重螺旋さんいたんですね」

「仕事に行き詰まりましたよ」

「私は部長に振られていた仕事が部長に戻りウエイトが軽くなって身動きがしやすくなりました」

「おぉ!!それは良かったですね」

「何で急に振られた仕事が戻ったんですかね?」

「何ででしょうね?僕が知ってると思いますか??それはそうと、人が集まらない」

「副主任育成ですか?」

「そうです。人手が足りないって言われてばかりで」

「実際に、人手が足りてない現場もありますからね」

「そうなんですけど、人手が足りてないから人材育成まで
手が回らずに逃げていくって状態なんですから、そこを打破しないと先に進まないんですよね。佐藤さん、何か良案ないですかね?」

「なかなか難しい問題ですよね」

「人さえ集まれば、なんとでもなるんですよ。頭の中には筋道が出来上がってますから」

「もう、そこまで出来上がってるんですね」

「まぁ、最初は顔合わせして、それからメーカーのシステム紹介と説明をしてもらって、以降は質疑応答の内容に応じて実務ですかね」

「そこまで考え終わっているんですね」

「ざっとの粗筋だけですけどね。問題は人ですよ人」

「集まらないと始まりませんからね」

「そうなんですよ、折角時間稼ぎも出来る算段を踏んで、佐藤さんの仕事減らしたのに意味がないです」

「ん?今なんて言いました?」

「時間稼ぎが出来る算段を踏んだって言いましたよ」

「その後です、その後。」

「佐藤さんの仕事を減らした。ですか?」

「もしかして、二重螺旋さん。裏で動きました?」

「あ、口が滑った」

「オカシイなって思ったんですよ、急に部長に振られていた仕事が部長の元へ戻ったから」

「内緒にしているつもりだったのに」

「なにやったんですか?」

「役員と執行役人にプロジェクトが3つ同時進行してるからサブを1名増やすか、部長の仕事を部長がやるようにって
どっちかにしてくれって言いました」と笑いながら返事をした

「いつの間に、そんな事をしたんですか?」

「隠密行動と情報収集は僕の得意分野なので秘密ですよ。佐藤さん仕事が減って助かってますよね?」

「凄い助かりましたけど、危ない橋を渡るのは辞めてくださいね」

「危ない橋を渡りすぎて、危ないか危なくないか分からなくなってますから」と笑って答える

「二重螺旋さんは、目を話すと何するか分からないですね」

「目を付けていても、隠密行動は得意なので見抜けないですよ?」

「そんな事をいつもしてるんですか?」

「いつもはしないですよ。いつもはもっぱら情報収集をして弱みを握るのに奔走してますから」

「こわっ」

「怖くないですよ、交換条件の手段の1つですから。僕は負け戦はしない性分ですからね」

「こわっ」

「だから、怖くないですって。ボロを出したままにしておくのがいけないんですよ」

「それを見つけるのも、こわっ」

「怖くない!今日はもう佐藤さんと話しません。」

「二重螺旋さん、怒らないで」

「怒ってませんよ?少し意地悪しただけですよ。あっ!そうだ良案が浮かびましたよ」

「人を集める手立てですか?」

「そうです、そうです。貸しのある現場が多数あるので貸し返せって言って人集めしよう」

「手段が、輩じゃないですか」

「人が集まればいいのです!最低でも10人は集まるかな〜。拒否権は与えないようにしよう」

「闇金みたいですね」

「人聞きの悪い言い方ですね、何かを得るためには代償として何かを払わないといけないですから、等価交換です」

「何処ぞの漫画みたいな事を言ってますね」

「僕は、まだ代償を貰ってないので、それで人集めしよう。あとは日時を決めてメーカーに連絡すればいい簡単なお仕事だ」

「強引なやり方ですね」

「仕方がないじゃないですか、他にいい方法がないんですから」

「まぁ、確かにそうですけど」

「ならやるしかないですね」と言いながらニヤっと笑った

「その顔する時は、何を言っても聞かない顔だ」

「さてさて、何処の現場にしようかな」

「あ〜ぁ、もう止められない」

「良案も浮かびましたし、事務所に戻って仕事しますかね」
僕と佐藤さんは仕事に戻り、佐藤さんと宮本君と僕とで作戦会議を行った
佐藤さんと宮本君で、片付けなければならない問題をピックアップして順番にしていく
僕は貸しのある現場に電話をして、人数集めに奔走をするついでにメーカーにも電話をして
副主任育成会を行うから、システム等の資料を集めてもらえるように依頼をした
僕はの僕で副主任のマニュアルを作成したりと、忙しい1週間が過ぎていった
雛形は出来上がり、人数も集まり、メーカーに講師をお願いした
勿論、メーカーにも貸しがあるから無下には断ってこない
一通りの資料を作成して、佐藤さんと僕とで役員に資料とスケジュールを確認してもらったら
その場でOKを貰えた、あとは、日時を決めるだけだ
無理に突き進めても構わなかったのだが、3人の体力の限界がきており
副主任育成会は来月へとワザと持ち越しにした
「宮本君、佐藤さんと一緒に無理をさせて申し訳なかったね」

「二重螺旋さん、今回はキツかったですよ」

「わかってるから、みなまで言うな」

「お礼として、君の机の中にひとつなぎの財宝を隠してあるから」

「ワンピースですか?」

「まぁ、探してみなよ」

「いつの間に隠したんですか?」

「僕の得意行動は隠密だよ?」

「宮本君と二重螺旋さん、何を話しているんですか?」

「宮本君が頑張ってくれたので、机の中にお礼の品を隠したって話をしていたんです」

「二重螺旋さん、私も頑張りましたけど」

「佐藤さんのお礼の品はないですよ」

「えっ!なにそれ、私も頑張ったのに」

「なんでこうも気づかないかな、バッグの中を確認していませんね?」

「ちょっと見てくる」

「二重螺旋さん、佐藤さんにも準備したんですか?」

「うん、準備したけどバッグの中には入れてないよ。入れたのはデスクの中だから」

「なんで、嘘を伝えたんですか?」

「宮本君、ほら見てみなよ。一生懸命に探してる姿って面白くない?もうそろそろないのに気づいてコッチにくるよ」

「二重螺旋さん、バッグの中には何も入っていませんでしたよ」

「そりゃ、入ってないですよ。入れたのはデスクの中ですから」

「なんで面倒な嘘を言うんですか」

「佐藤さん、二重螺旋さんが見てて楽しいからだそうですよ」

「宮本君、要らないことは言わなくていいから」

「二重螺旋さん、本当にデスクの中にあるんですね?」

「ありますから、探してみてくださいよ」
佐藤さんはデスクの中から、僕のお礼の品を無事に見つけて
箱をコッチに見せて振っていた
「見てご覧よ、宮本君。大人があんな嬉しそうな顔をしているよ」と笑いながら伝えた

「二重螺旋さん、よっぽど嬉しかったんですよ」

「宮本君のお礼の品も喜んでもらえると嬉しいんだけどな」

「時間が出来たら探してみます」
とりあえず、山場はなんとか乗り越え時間稼ぎも出来た

つづく