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【恋愛】出会いとは常に日常にある。⑩

お昼休憩を済ませて、自分のデスクに戻りメールを確認したら、あら素敵頼んだ見積もりが届いていた。

見積もりメールが届いているから仕方なく、地雷物件の見積もり作成をする事にした。
システムの原価に20%を載せる。諸経費(養生費・運搬費等を合算した金額)に20%載せる。利益率合計40%で1枚目の見積もり出来上がり。
お次はシステムと諸経費に17%ずつ載せて、合計で37%で2枚目見積もり出来上がり。
最後の見積もりはシステムと諸経費に13%ずつ載せて、合計で26%の見積もりが出来上がった。

3段構えの見積もりを作成したものの、何となく見積もりの金額に納得が行かなかった。

クライアントには倍額って吹っ掛けておいて、倍額から10%減額した見積もりが1枚目となる訳だか、見積もりを作成してて何か引っかかっていた。

新しいシステムでコンパクトで性能は良くても、設置する場所が悪い。どうしてもその点が気になって離れない。

僕は独り言で「なんかな〜?」とボヤいたら
事務さんが「二重螺旋君が見積もりで悩むって珍しいね」と言ってきた。

設置する場所等を簡単に伝えを見積もりの金額は申し分ない見積もりだと思うんだけと、もうひと押しが足りない感じなんだよねって説明をした。

事務さんが「何か飲み物でも飲んだらアイデアが浮かぶかもよ?」と言ってくれたから、見積もりを保存してサイフを手に持ち自販機スペースへ向かう。
本社の扉を開けて自販機が数台並んでいる中からミルクティーを選び、小銭を入れて購入する。

ミルクティーを手に持ちながら自販機スペースを出ようとしたら、飲み物の補充にきた業者と鉢合わせをした。
補充しにきた業者に動線を譲り、何となく後ろ姿を眺めていた。

ガシャ、ガラガラガラガラと繰り返される音。その音を聴いて1つのアイデアが浮かんだ、僕が知っている限りだと僕が所属している部署だと今までやっていなかった事だ。

僕はアイデアを忘れないようにと、本社への入り口へ急いだが入室カードをデスクの上に置いて来てしまった。iPhoneで電話して開けて貰おうと思ったらiPhoneも邪魔だなこんな物って言ってデスクの上に置いたのを思い出した……。

もどかしい、物凄くもどかしい。
新しいアイデアが浮かんで、業者の手配が出来るかと業者の人件費と売上利率を計算しないと、今回の地雷物件の見積もりのオプションに出来ない。

あぁっ!こんな時に両方デスクに投げ置いてくるなんて!と思ったら、本社への扉が開いた!もどかしいしくてもがいていた時に扉が開くなんて、なんて運が良いんだと思った。

扉から出てきたのは他部署の事務さんだった。他部署の事務さんでも仲良くしていたから、扉を開けてくれてありがとうって言いながら、ペットボトルのミルクティーを渡す。
渡された側は?!って顔になっていた。

自分のデスクに戻り、iPhoneで下請け業者に電話をして、1日1時間辺りの時給を聞く。
システムメンテナンスを1名にしてもらうのは、何かが発生した時に危険があるから2名で計算をする。
下請け業者の1名1時間辺りの金額に25%載せる。
人件費としては高い利率だと思うかも知れないが、下請け業者も移動に車を使うし駐車場がなければコインパーキングも使うから利率は高く設定した。

さて、下請け業者へ人件費は決まった。
ここからが悩みどころ。
今まで購入してもらったシステムに不具合が発生したら連絡を貰いメーカーに電話をして直してもらう。と言った流れでだった。
僕が思いついたのは、不具合が発生していても発生していなくてもメンテナンスを下請け業者にして貰う。
これをオプションにしたいと思いついた。
年12回、年6回、年4回のメンテナンスオプション。

これを商品として提案してクライアントが飲んでくれれば、ウチとしてはメンテナンス報告書を作成してクライアントに提出していけば、定期的に入金がある。
何で今まで気づかなかったのだろうかと
自問自答してしまった。

先程述べたパターンで見積もりを、ちゃちゃっと作成して、EXCELでメンテナンス報告書も作成をした。メンテナンス報告書と言っても画像をEXCELに貼り付けて、メンテナンス前後の写真を貼り付けるだけだ。しかもこの報告書も下請け会社に写真を貼り付けてもらい、不具合が発生しそうな場所は備考欄に入力してもらうようにした。

地雷物件になりそうな場所の作成した見積もり3枚と、メンテナンスオプションの見積もりを役員のところに、持っていった。

「役員さん、役員さん」

「どうした?二重螺旋」

「見積もり出来ちゃった、それと良案が浮かんだに〜」

「とりあえず、見積もり見せてよ」

「ほい、見積もり3枚ね。上から40%37%26%の利益率とあいなりますえ」

「吹っ掛けてるね〜。お〜い佐藤くん、ちょっと来てくれる?」

役員は佐藤さんを呼び、佐藤さんに見積もりを見せる。

「佐藤くん、この見積もりどう思う?」

「3パターンありますね、一番最後の金額が適正だと思いますけど」

「二重螺旋くんさ、どの見積もりで通すつもりなの?」

「40%で出して相手の様子見て37%で売りますね。それ以下なら売らないです」

「二重螺旋さん、強気ですね」

「強気も何も買う買わないは向こうの判断ですから、37%でも買わないって伝えてきたら役員に26%で良いか伺いますよ」

「役員って、立場からすると37%で落として欲しいね」

「わかりました、落としますね」

「落とせるんですか?」

「落とせるんじゃなくて、落とすんですよ。撃墜です、撃墜!」

「二重螺旋、お前なんか企んでるだろ?」

「こんなの作成してみましたよ〜。メンテナンスオプションでごさい!」

「なんですか?メンテナンスオプションって?」

「二重螺旋、ちょっと説明してみ」

「売ってお終いじゃなくて、継続して面倒見ますよって事です」

「二重螺旋さん、今でもメンテナンスやってますよね?」

「そうなんですよ、佐藤さん!メンテナンスをやっているんですよ。だからこそメンテナンスオプションをやるんですよ」

「おい、二重螺旋言ってる意味が分からない」

「役員も佐藤さんも察しが悪うござんすね、クライアントから不具合の連絡がくるとメーカーに連絡してメーカーに直してもらいますよね?そうなると直す代金がメーカーに流れて、あら勿体ない!それなら安心、弊社自慢のメンテナンスオプションの出番とあいなります。年12回年6回年4回から選んで貰って追加料金でメンテナンスをする訳ですよ。メンテナンスオプションの更新は1年更新です。下請け業者にメンテナンスを任せて報告書を提出させます。それをクライアントの担当者にメールもしくは郵送でポイっと送るんですね〜。そうなると不具合が起きてなくても安心。スマホの保険みたいなものですね。不具合が起きた場合には報告書が残っているからさかのぼって調べて現状を把握してからメーカーに見積もり作成をしてもらって、その金額に20%載っけて提案してメーカーに修理してもらう流れに変更をすれば、何もしないで定期的な売上が出来て、修理となっても美味しく20%頂けるって算段でござい!」

「お前なぁ……良くも性悪な商売を思いつくな」

「二重螺旋さん、これはちょっと………」

「自販機の補充をしているのを見て思いついたんですけどね〜。駄目ですかね?」

「思い付きは悪くはない、けどなあくどいな」

「役員さん、考え方を変えたくださいな。もし、もしですよ?古い付き合い取引会社さんありますよね、そこで金額これでやってくれないか?って時に、提示された金額でやりますけど、メンテナンスオプションつけて下さいって頼めば………どうなると思います?」

「二重螺旋の言いたい事は、理解できた。試しに今回のクライアントで試してみな」

「畏まりましたよ〜。だってさ〜、佐藤さん。試して良いってさ」

「役員、私は何だか不安になって来ましたよ」

「なっ?アイツ、普通のマネより頭の作りが変だろ??」

「思いつきが奇抜過ぎるんですよ」

「何か言いましたか、お二人さん」

「二重、とりあえず佐藤くんと話をまとめてクライアントにメールしとけよ」

「了解しましたよ」

こんな感じて見積もりとメンテナンスオプションを作成して、あとは新しいシステムの資料が届くのを待ち、郵送してからアポを取りクライアント向かうことになりました。


つづく