【恋愛】出会いとは常に日常にある。⑧
役員の報告を終えて、〇〇メーカーにの担当者に電話をする。
「あ、もしもし。おれやで」
「お世話になってます、今回は何ですか?」
「今回はって、随分じゃない?」
「いつも難しい注文してくるじゃないっすか」
「今回は簡単なお仕事だよ。新しく出たシステムの見積もり作ってよ、受注したら、そのシステム入れるから宜しく。あとさ、その他諸経費も載せちゃっていいから。」
「その他諸経費って運搬代とかですか?」
「そうそう、載せちゃってシステムだけだと利益でないでしょ?諸経費の中に、運搬費・養生費・設置工事費って細かくして載せといて、諸経費は言い値で構わないから」
「また、お得意の吹っ掛けしたんですか?」
「吹っ掛けて、迷惑かけたことある?」
「ないです。むしろ助かってます」
「なら、見積もり作ってさっさと送ってくれる?逃したくないから」
「午後イチで送りますね」
「頼むは、あと新しいシステムの資料やパンフレットを、僕宛に郵送しておいて」
「わかりました」
「宜しく、頼むわ」
メーカーとの電話を終えてから、クライアントにメリット・デメリットのメールを送信して、タバコを吸いに行こうとしたら佐藤さんに呼び止められる。
「何処に行きます?」
「喫煙所」
「始業して1時間過ぎたくらいじゃないですか?」
「もう1時間たってますよ。クライアントにメールしたし、メーカーには見積もりさっさと作って、システムの資料も郵送しといてって依頼済みですから、僕の仕事は午後からが勝負ですかね?」
「早いですね」
「メーカーとも付き合い長いし、向こうにも利益上げさせてるから見積もりとかは朝に連絡すれば午後イチには届きますよ。見積もりが届くまではお暇でござんすよ」
「メーカーにも利益出させるって、どうやるんですか?」
「ここで説明するのは長くなりそうなので喫煙所に行きませんか?」
「とりあえずはタバコなんですね?」
「そうそう、タバコは大切ですよ」
「教えて欲しいので付き合いますよ」
「ベーター前で待ってますね」
「わかりました」
エレベーター前で合流して喫煙所に二人で向かい喫煙所でタバコを吹かす。
「二重螺旋さん、どうやって上乗せするんですか?」
「あぁ、運搬費とか設置費とか養生費とかで上乗せするんですよ」
「込み込みの金額で出してました……」
「ワザと別途費用にするんですよ。システムの原価に乗せるのは当然ですけど、別途費用にも上乗せして、高いって言われたら別途費用を値引きするんですよ。システムの見積もりを作成して、それをコピーして別途費用の金額値下げバージョンを2枚作ればあっという間に見積り依頼3枚が簡単に作成できますよ」
「込み込みで、やっていたのが馬鹿らしく思えてきました………」
「金は取れるときに取る!」
「前にも言ってましたよね。最高利益率はどの位だした事ありますか?」
「最高の利益率は67%かな?」
「えっ!?」
「なんですか?僕の平均利益率は30%位ですよ」
「67%はやり過ぎですよw」
「システムの説明して、金額はこのくらいですかね?って伝えたらOKが出たから、素直に美味しく頂きましたw」
「それにしても、吹っ掛け過ぎですよ」
「勝算は100%の確信がありましたからね」
「説明するのが、上手過ぎなんですよ」
「言い方が悪いですが、相手の不安を煽って、安心感のある提案をすれば8割は通りますよ。ウチも商売ですからね」
「現調の時も、それをやったんですか?」
「やりましたよ。地雷物件確実でしたし値段跳ね上げて通れば儲けもんだし、通らなければ地雷物件回避出来ますからね」
「自然な流れでしたね」
「思った事を伝えただけですよ、向こうだって設置しておいて、アレ?思ったんと違うってなったらお互いに面倒になりますからね」
「そもそもになりますけど」
「なんですか?」
「どこらへんで危ないって思ったんですか?」
「商談室を出てシステムを設置する場所を確認した瞬間ですね」
「歩き回っていたのには理由があるんですか?」
「歩き回って、隅々まで確認してるフリをしていた方が提案に信憑性が生まれますらね」
「だから、あんなにアッチコッチ見てたんですね」
「確認もしないで高い買い物してもらうより、確認して高い買い物してもらった方が相手もしっかりと見てくれてるんだなって思って安心感に繋がるじゃないですか、買って下さい、売りました。買いました、悪かったです。だと面倒しか起きないですからね」
「んで、そこで不安感を煽るんですね?」
「言い方が悪いですね、真実を伝えて理解してもらうんですよ」
「さっき、不安を煽るって言ってたじゃないですか」
「言ってましたっけ?」
「言ってましたよ。不安を煽るって」
「そうですか、言っていましたか……。それも手の内って事でw」
「もう、そろそろ戻りましょうかね」
「そうしますか」
二人で喫煙所から出て、エレベーターへ乗り本社に戻る。
デスクに戻って、PCに向き合って仕事をしようと思ったけど、午後イチにならないと仕事が先に進まないから、バイクのパーツを調べることにした。バイクのパーツを調べて、これ買ったらバイクの見た目のバランスが崩れないかな?どうだろう?う〜んっと声を出して本気で悩んでいたら、執行役員が僕のPCを覗き込み
「真剣な顔してるから仕事してると思ったらバイクかよ」
「仕事より真剣になりますよ」
本社内では、僕は趣味人として有名だった。
「ところで………何処のバイク乗ってるんだよ」
「YAMAHAのバイクですけど」
「画像ないのか?」
「ありますよ」
「ちょっと見せてよ」
「少し待ってて下さい、スマホ出しますから」
「んじゃ、この書類を君のところの部長につき返してから、また寄るから」
「それまでに準備しておきますね」
「それはそうと、仕事しろよ?」
「メーカーからの見積もり待ちで、仕事が先に進まんのですよ」
「んじゃ、他の仕事しろよ」
「8割返事待ち状態で残りの2割が、その仕事ですよ〜。準備は万端なのですよ」
「そうなのか、ゆっくりカスタム考えてな」
「そうしますの〜」
こんか会話をしてから5分を過ぎたくらいに執行役員が、僕のところに訪れた
「バイクの画像は?」
「ほい、コレですよ」
「ネイキッド?」
「大きい枠で言うとネイキッドですけど、細かく説明するとストファイですね」
「なんだよ、そのストファイって」
「ネイキッドはSSの側を剥いだのがネイキッドですよね?」
「そうだな」
「そのネイキッドを街乗り用にした感じがストファイと思ってもらえればOKです」
「昔と違って、今は種類も増えたよな」
「執行役員もバイクの免許持ってましたよね?タッパもあるんだし、お金もあるでしょ?BMW買ってカフェレーサーカスタム作って乗ればいいじゃないですか」
「お前な、簡単に言うけどよ。奥さんが許してくれるならやってるよ」
「執行役員でも、奥さんの尻の下なんですねw」
「そうなんだよ、辛いんだよ。わかってくれるか??って言うか何でこんな事を二重螺旋に言わないといけないんだよw」
「もう、少しだけ間を取ったら笑いに繋がりましたね〜」
「笑いに繋げたくないんだよ。お前は好き勝手やってて怒られないのか?」
「僕の家系は、みんな趣味ごとが好きなので何も言われないですねぇ」
「羨ましいな」
「僕の場合は収集癖があるのかフィギュアとかあり過ぎて置く場所に困ってます」
「それも困りもんだな」
「困ってるんですよね」
「それはそれで真面目に仕事しろよ」
「僕は常に仕事以外では真面目ですから」
「その真面目を仕事で使え」
「嫌です、仕事2割趣味8割です」
「言った、俺がバカだったよ」
そんな会話をして執行役員は僕の肩をポンと叩いて自分のデスクへ戻って行った
つづく