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【恋愛】出会いとは常に日常にある。⑰

会議場からコンビニまでは歩いて5分くらいの距離にある
その道中僕はずっと「タバコ、タバコ」と繰り返していた
コンビニへ到着をして、コンビニの駐車場の隅に申し訳無さそうにある
灰皿まで向かい、タバコに火を付けて煙を飲み込む
佐藤さんも同じように火を付けてタバコを吸っている
ボケーッとしながらタバコを吸っていると話しかけられた
会議場にいた、何処ぞの現場主任だった
「二重さん、さっきの自己紹介はアレで良かったですか?」

「ん?お疲れさまです。お忙しい中、会議に参加してもらいありがとうございます。
先程の自己紹介はアレで良かったんです。だって、僕の名前を覚えてもらえた上に
こうやって、お声をかけてくれているんですから、一般的な自己紹介したところで
誰も僕に興味をもたないですからね。」

「あの自己紹介だと、任侠ものじゃないですか?」

「粋な自己紹介をしたかったんですよ。僕は一般的ってのがあまり好みじゃないんです」

「そうなんですね」

「そうなんですよ、平ったいのが一番です。違うチームですけど何か問題や質問があったら
気軽に電話してきて下さい。」と伝えてから名刺を渡した
何処ぞの主任との会話が終わったら、佐藤さんが僕に話しかけてきた

「二重螺旋さん、部長がふざけた自己紹介してって怒ってましたよ」

「あぁ、そうですか。怒らせておけばいいですよ。僕は部長より上の役員から許可を貰っているんですから」

「部長の立場を考えないと駄目ですよ」

「部長の立場なんて、自己紹介に必要ですか?」

「えっとですね、そういう問題ではないと思いますが」

「怒っているなら勝手に怒らせておけばいいですよ、何か言われたら役員から許可を貰ってますって伝えるだけですから」

「なんというか、本当に自由勝手ですよね?」

「そうですかね?僕からすると上司の顔色を気にし過ぎなんですよ」

「普通は気にしますけどね」

「普通という基準は、何処からどこまでが普通で、何処から何処までが異常ですか?」

「また屁理屈を言い始めた」

「アレは僕の中では普通なんですよ」

「説明するのが大変なんで言うの辞めます」

「そうですか、タバコも吸い終わりましたし食事を買いましょう」
こんな話をして、コンビニで菓子パンを2つとミルクティーを買った
佐藤さんは菓子パン2つと黒苦汁を買っていた
コンビニのビニール袋をぶら下げて、会議室に戻り
菓子パンを食べながら、描いてもらった絵をUSBに移す
あと、モケーレムベンベ・ムルシエラゴ・チョウゲンボウ・の画像を探してUSBに入れる
あとは隠し撮りをした、常務の画像もUSBにこっそりと入れた

会議の午後の部が始まった
僕はマイクを持ち「先程、描いてもらった絵をスクリーンに映し出します」
会場からは、嫌だな・勘弁してくれよ。と言った声が聞こえてきたが
「名前は書いてないですよね?名前が書いてあったら誰が描いたかわかりますけど
名前が書いてないなら、自分から言わない限り誰が描いたかわからないから安心してください」と伝え
スクリーンに絵を映し出す
一人一人の絵が違う、家の形も湖の形も道の形も全部違う
ましてや、モケーレムベンベを描けている人はいない
勿論、ムルシエラゴ・チョウゲンボウもそうだ
「何故、僕が絵を描いて欲しかったのか説明をします。僕が描いてほしい物を伝えましたが
誰一人として同じ絵になってないですよね?理由は1つしかないんです。
その理由は、詳しく説明をしていないからです。家と言っても日本家屋なのか洋風家屋なのか
湖の形や大きさ、道の長さや広さ。モケーレムベンベが何なのか、ムルシエラゴとはなんなのか
チョウゲンボウとはどんな物なのか説明をしていないから、全部違う絵になりました。
では、これが皆さんの現場で自分の部下に指示を出す場合に、あいまいな指示だと相手が理解を出来ないまま
業務をこなし事故が発生します。指示を出すなら明確にキッチリとした指示書を作成するか部下を現地へ連れていき
注意する場所・危険な箇所をメモにとらせないからです。だから事故が発生しても同じ過ちを繰り返して事故が発生します。
ちなみに、僕が主任時代に作成していた指示書を映し出します。あくまでも僕の場合なので参考にするなり
自分でより良いものを作成しても構わないです。」
スクリーンに映し出された僕の指示書は作業範囲・注意箇所・危険箇所などを色別にわけてわかりやすいように作成していた
「これが僕の作成していた指示書です。原本はプリントアウトして保管。作成した指示書はクライアントへ提出
あとは副主任に1枚もたせ、実際に作業範囲に出向き注意点を自分で記入させていました。勿論、同じもを協力会社へも渡してあります
指示書を渡して、もし協力会社が事故を発生させた場合は指示書に従って業務を行っていなかったせいで事故が発生したとなります。
その場合、その責任は現場主任が負うべきではなく、協力会社の責任となり、クライアントにも同じ指示書があれば
どういう経緯で事故が発生したのか説明がしやすくなります。簡単に言うと逃げ道を沢山作っておけば逃げやすいってことです。
いつもどおり業務をしておいて、では駄目なんですよ。その結果が先程描いてもらった絵です。ご理解いただけましたか?」

会場からは指示書が欲しいと声が聞こえてきたので
僕はマイクを持ち「わかりました。僕が作成したフォーマットで良ければ各チームマネージャーに配布を致します
各チームマネージャー、必ず配布を行ってください。なお、マネージャーからメールで送られて来ない場合は本社に連絡をして
僕に繋ぐように伝えてください。そうすれば僕が連絡を頂いた現場に送信します。各チームマネージャー言っている意味は理解できますよね?
理解出来ないと困るので、現場の方も部長も役員もいるのでお伝えしておきます。メールにデータを添付して送信もできないほど忙しくはないだろうって事です
ご理解いただけましたよね?さて、話は変わりましてモケーレムベンベって何?生き物?という声やムルシエラゴってカタツムリの親戚か?とか
チョウゲンボウって鳥なのか?って声があったので、画像を探しました。分からないままにしておき、モヤモヤしている姿をみて
本当はニヤニヤしたいのですが、流石にそこまでやったら無粋なので画像をお見せ致します。」
スクリーンに映し出されるモケーレムベンベ。
会場からは、こんなんじゃわからないよ、ひっでぇ問題だなと声が上がりました
僕はマイクを持ち「何処にいるのかは忘れてしまいましたが、雪男とかツチノコの親戚だと思ってください。名前はしっているけど見たことがない
世界的に有名なのは、ネス湖のネッシーですかね。ちなみに僕はビックフッドの正体を突き止めましたので、スクリーンを御覧ください」
スクリーンに映し出されたのは隠し撮りをした常務
「これがビッグフットの正体です。今は人間に擬態をして頭がツルツルでスーツをきていますが、週末は森で毛むくじゃらで歩きまわっています」
常務の画像と説明を見て聞いた役員と部長は大爆笑していた
マネージャーはポカンとしていた。佐藤さんは苦笑いをしていたな
「さて次は、ムルシエラゴを映し出します。これは僕が大好きな車カウンタック・ムルシエラゴです。続いてはチョウゲンボウですね。チョウゲンボウが飛んでいると
説明したので皆さん鳥が飛んでいる姿を描いていますが、猛禽類の鳥なんです。どうですか?こうやって説明されると理解しやすいですよね?
こうやって実物をみせて説明をしっかりと行わない限り事故は続きます。なので皆さんも説明される側になり説明をするようにお願いします。
では、僕の時間はここまでとさせて頂きます。今後は隅から隅まで、ずずずぅ〜いっと宜しくお願い申し上げまつりまする〜」と言い終わったと同時に拍手が起きた
うん、やったね。コレは僕の勝ちだね
自分の席に戻ると、役員と部長が常務をビックフッドなんて言うなよと笑いながら伝えてきた
常務は身長が180もあり足のサイズは28。頭はツルツルだけどビッグフットには変わりはないと思っていた
僕の時間が終わってからは、各チームでの連絡会となる
勿論、僕は自分が受け持っているチームの連絡会に参加をして、あ〜でもない、こ〜でもないと説明していたが
やはり、仕事よりも荒事が得意な集まりだ。人の説明も自分勝手に解釈しやがる
でもまぁ、売上伸ばしてるし問題もないから、何かあったら連絡頂戴で終わりにした
ふと、佐藤さんを見てみると役員と2人でコソコソと話をしていた

つづく