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【恋愛】出会いとは常に日常にある。⑯

そうこうしていると、チラホラと現場受任が数名入ってきた
いつもと違う長テーブルの並びがから、ん?って思ったんだと思う
「好きな場所に陣取ってください」と僕は声をかけた

会議室にはいってきた数名は各々好きな場所に座ったようだ
ここで僕は疑問に思う
現場主任より、遅くに到着をするマネージャーは如何なものかと
こういう言い方は好きではないけど、僕たちは管理をする側の人間だ
管理をされる側の人間のほうが早くに到着しているのは、僕の中で納得がいかないが
僕は僕で、人は人だから気にするのはやめよう

役員と佐藤さんと僕とで、会議の簡単な打ち合わせをしいたら
会議開始10分前だった、10前になっても現れない部長
5分前になって現れて「おはよう」なんて声をかけられても
「そうですか」としか思えない

役員にも「おはようございます」と声をかけていた
役員は1時間前から来て僕が作成した資料に目を通し加筆修正をしていたのに
部長は資料に少し目を通して、誤字脱字を見つけて文句を言っていた
5分前に現れてチラっと目を通した資料にケチをつけることが出来るなんて
僕は関心をしてしまった
次回からこの人だけ微妙に違う資料を渡そうと思った

会議が始まる時刻になったので、僕がマイクを持ち
「おはようございます。これから主任会議を始めます」と宣言をした
僕が受け持っているチームは僕の姿を見てクスクスと笑っている
挨拶に続けて「僕の顔を知ってる人もいれば、名前は知っているけど顔が一致しない人もいると思うので
簡単な自己紹介をさせていただいます」と伝えてから
テーブルの上にマイクを置き、スラックスの裾をスッと持ち上げ中腰になり
左手でジャケットををサッと払い後ろに回し、右手を前へ出す
「お控えなすって、姓は二重、名は螺旋と申し上げ候。以後、よろしくでござんす」と自己紹介をしたら
まぁ〜見事な失笑
一部のチームは大爆笑。勿論、僕がまとめているチームだ
あと、役員も大爆笑してた、部長は何故か怒っていた
僕の中では、普通の自己紹介しても15分もすれば名前を忘れて、他の人に聞くことになるんだから
インパクトのある自己紹介をした方が良いと思っている
そんな自己紹介が終わってから、役員が会社運営の話をする
その後に部長が、売上・純利などの話をする
この流れは変えなかった、変えたのはココからだ
役員と部長の挨拶が終わると事故報告へと流れるのだ
事故を発生させた現場主任が前に出てきて現場名を言ってから
事故の詳細と破損や汚損をした金額を伝えて終わりだった
その事故報告を聞いたとしても、聞いた瞬間は気をつけようで終わってしまう
しかも、僕を含め4つのチームが動いているのに
他のチームで発生した事故は伝わってこないのだ
僕は前々から、さらし首にするような真似事は嫌だと思っていた
だから、早くに会議室へ来て無作為でグループが出来るように長レーブルを配置しておいた
事故を発生した現場の名前を伏せて、事故が起きた状況と被害総額を入れた資料を作成しておいた
僕はマイクを持ち
「事故が発生した現場名は伏せてあります。ですが事故発生状況は可能な限り詳しく記載してあります
何故、事故が発生してしまったのか、今後発生させないためにはどのような対応策が考えられるか
皆さんでお話し合いをしてください。時間は30分とさせていただきます、その後各クループに聞いてまわるので
事故の発生原因や改善策などを伝えてください、ホワイトボードに書き出していきますから。
申し訳ないのですが佐藤さん筆記をお願いできますか?」
佐藤さんは「わかりました」と返事をしてくれた
僕は自分の席へ戻り、iPhoneのアラームをセットしていたら役員から話しかけられた
「な〜、二重螺旋君。なんでこんな事をさせるんだ?」

「コッチからは伝えるだけ、現場の注意している事とか知りたくないですか?仲良しグループで固まってしまうので
固まりづらいように長テーブルを配置してグループ分けをして、顔は知ってるけど話をしたことがないって人もいるでしょうから
話をさせたいなって思いまして、なんとなくなんですけど4つのチームに壁があるように感じられるので壁をなくしたいと思ってます
基本、仕事の仕方が同じなのに壁を感じるって変だと思いませんか?同じ会社で働いているのに」

「なるほどな、お前さ、そういうところには敏感だよな」

「そうですか?皆が仲良くなれば一番いいですけど、大人になると仲良くなるのは難しいですからね〜
だからこそ、こういう時間を作って視野を広げたいなっておもっただけですよ」

「なるほどね」

「そこそこ良いアイデアだと思いませんか?」

「あとさ、さっきの自己紹介だけど」

「なにか問題でもありました?」

「普通に自己紹介しろよ、お前」

「伝えておいだじゃないですか、僕なりにやるって」

「そうだけどよ〜、失笑だったぞ」

「役員は笑ってましたよね?」

「うん、面白かった」

「一人でも笑えば、僕の勝ちです。あの自己紹介で忘れる人はいないでしょう」

「インパクトあったからな」

「役員、僕はグループを回って様子見をしてきます。進んでないところがあったら助言もしてきます」

「お、流石だね。現場にいる頃は事故を1回を発生させてない人は違うね〜」

「事故が発生するんじゃなくて、事故は発生させるものなんですよ。そこを理解してもらわない限り事故は減らないですからね」と言い
僕は各テーブルを様子見しながら助言をして回った
僕が思った通りに会話をしていないグループが多かった
それはそうだろう、何せ顔は知っているけど会うのは1ヶ月に1回だけだ
やっぱり、無駄な壁がある
会話の進んでいないグループには、ヒントを落としていく
なんとなく会話が上手そうな人に話しかけ会話を成立させていく
そうこうしていると、僕のiPhoneのアラームが鳴った
マイクの電源を入れて「シンキングタイム終了です」と伝えた
シンキングタイム終了と伝えても、あ〜でもない、こ〜でもないと話を続けているグループがあった
しょうがないのでシンキングタイムを10分延長をした
その10分もあっという間に過ぎて話し合いの結果を聞く時間だ
聞くと言っても、僕が各テーブルに行き発言をしてもらう
理由は、発言をさせないと一方通行になってしまうからだ
これも僕が現場主任の時から思っていた事だ
本社からの一方的な発言ばかりで、現場の声は誰も言わない
僕はマイクを持ち各テーブルへ行き、発言をしてもらった
発言をホワイトボードに書き出していく佐藤さん
結果としては、注意点・問題点は同じであった
まとめで、僕が発言をした
「各グループの注意点・問題点がほぼ同じなのに事故が発生するのには説明の仕方が悪いのと
最終確認を怠っている主任義務を果たしていないからです。では、手元にある資料の一番最後のページに
白紙のA4用紙があります。僕が言う事を絵にしてください。ちなみに質問は受け付けません」と伝え
準備をしてもらう、準備が終わったら
僕が適当に発言をしていく
「家が建ってます。家の前には湖があります。山が見えます。道がありムルシエラゴは走ってます。湖にはモケーレムベンベがいます
空にはチョウゲンボウが飛んでいます。木が生えています。はい、終わりです。んじゃ、皆の絵を見てまわりましょう」
描いた絵を見て回りながら、絵を回収していく
回収を終えたら、お昼には良い時間で、そのままお昼休憩にした
僕はコピー機のスキャン機能で描いて貰った絵をスキャンにかけて
コンビニまでお昼ごはんを買いに出た
ビルを出たら、佐藤さんが待っていた
「二重螺旋さん、絵を描いて貰っていましたが意味はあるんですか?」

「意味ですか?意味なんて無いですよ。あるのは結果だけです」

「二重螺旋さんが考えていることが、少しも理解できないです」

「理解は後からついてきますから」

「二重螺旋さんは、不思議ですね。真面目なのか不真面目なのか分かりません」

「僕は不真面目な真面目なんですよ」

「言っていることが矛盾しています」

「人間は常に矛盾を持っている唯一の生命体です」

「また訳のわからないことを言ってますね」

「それよりも、僕はお昼を買って食べながらスキャンした絵をUSBに入れて後半の準備をしたいんです」

「真面目な事を言ってる」

「あっ」

「どうしました?」

「タバコを吸わないと」

「そこは通常運行なんですね」

「前にも言いましたけど、僕の運行ダイヤは乱れないですよ?」

つづく