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福田花が書いたもの

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#詩

夏-vol.1 福田花

雷都
水平線の見えない街にも
夏はくる
湿度が溶けた空気に体がほどけ
木陰に避暑を望むばかり

暮れなずむ空は
雷光に阻まれ
瞬く間に大きな水溜まりを作る
夏がくる
ここはこうして海がなくとも暑さにかまけた湖が光る

トカゲ
アスファルトには動きの鈍いトカゲがひとり
路頭に迷っているようだ
焼けた地面に漕ぎ出す二歩目を
踏み出せないでいるようだ

風そよぐ中
影はどこか いそいそと走る私の自転車

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夏-vol.3 福田花

サンバレー

逃げるようにサンバレーへ
風は縫うように近づいてくる
氷は黒い池にぽしゃりと落ちて
私も足を滑らせる
心だけ はやらないように
ゆっくりと腰を下ろして

夏でもここは私を冷やす小さな山

花の喫茶日記
宇都宮市 「サンバレー」

 東武宇都宮駅の東口を出て、東武馬車道通り(通称一番通り)を駅を背に步く。1つ目の路地を右に曲がると、雰囲気が一変して朝でも昼でも毎度なんとも言えない緊張感

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春-vol.2 福田花

春の詩

ホコリ
部屋に差し込む光が
私の背中をあたためる
目の前で小さなほこりが浮遊して
キラキラ光っている
私の吐く息に沿って漂う
集まればきらめきはなくなって
これは何色
その前の彼らの自由を
私はどれだけ許せるか

ひとりででかける
ひとりででかける
歩く速さも考えないから
植木を見つめる時間があるから
通り過ぎても戻って苦笑いができるから
そうして、古い化粧品店に我が物顔で入れるから

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