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イノベーターとしての資質が、逆に仇となる

もしかしたら、みなさんお忘れかもしれませんが、少年には「イノベーター」としての資質も備わっていました。

時代の先を読み、未来を見通す力。人と違った発想で、組織や世の中に革新をもたらす者。


たとえば、「学校や会社に通わず、家に居ながらにして学習や仕事を行う」というやり方。これは、未来においては採用されるでしょう。そういう意味では正解の1つです。でも、この時代、この考え方は「異端」とされていました。

後にウイルスが世界を席巻し、ようやく「リモートワーク」などの在宅勤務が広く社会に認知されることとなります。

もしも、世界を凶悪なウイルスが襲わなければ、この考え方の理解が進むのは、もっと遅れていたかもしれません。

少年は何もかもが早過ぎたのです。


Wikipediaから引用すると…

・イノベーター(Innovators:革新者)
新しいものを進んで採用するグループ。彼らは、社会の価値が自分の価値観と相容れないものと考えている。全体の2.5%
・アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者)
社会と価値観を共有しているものの、流行には敏感で、自ら情報収集を行い判断するグループ。オピニオンリーダーとなって他のメンバーに大きな影響力を発揮することがある。全体の13.5%。
・アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者)
ブリッジピープルとも呼ばれる。新しい様式の採用には比較的慎重なグループ。全体の34.0%。
・レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者)
フォロワーズとも呼ばれる。新しい様式の採用には懐疑的で、周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする。全体の34.0%。
・ラガード(Laggards:遅滞者)
最も保守的なグループ。世の中の動きに関心が薄く、流行が一般化するまで採用しない。全体の16.0%。中には、最後まで流行不採用を貫く者もいる。

※引用元


この理論で行くと少年はイノベーター。全体の2.5%つまり40人に1人しかいないことになります。残り39人は彼の考え方が理解できないことになる計算。

母親や父親・妹といった少年の家族は「みんなが言ってるから」「みんながやっているから」といった言葉をよく使いましたが…

この「みんな」って誰でしょう?

イノベーター以外の人たち。つまり「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガート」の人々。

弟は「イノベイター」ほど革新的ではないものの、比較的新しい技術や考え方を取り入れるのは得意でした。「アーリーアダプター」から「アーリーマジョリティ」といった辺りに位置するでしょう。

それに対して、父親や母親は非常に保守的なタイプ。間違いなく「レイトマジョリティ」「ラガート」にあたります。

これでは意見が一致するはずがないのです。


さらにいえば、少年は「1度高校を辞める決心をしながら、再び舞い戻り、高校1年生を2度やる」という特殊な経験を積んでいます。この時に、イノベーターとしての能力も1段階進んでしまいました。

イノベーターの中のイノベーター。「スーパーイノベーター」とでも言うべき存在に。並のイノベーターでは理解できない考え方をしているとも言えます。

40人の内の1人。その中の40人に1人。つまり、1600人に1人の存在ということになります。

元々、受験校に進学したという経験に加えて、「作家を目指したり」「伝説の悪魔を崇拝したりしている」という意味では、5万4000人の1人とも言えるし、21万6000人に1人かもしれません。

いずれにしても、「非常に特殊な人生」を歩み「特異な物の考え方をする人間」になってしまっていたことだけは間違いがありません。

少年は、奇異な人生と共に獲得した能力の為に、どんどん周りの人たちから理解されなくなっていってしまうのです!

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この頃になると、再び母親の攻撃は激化していました。それはそうです。学校の成績は上がらないどころか、落ちていく一方なのですから。

最初は高校に復帰してくれたことで満足していた母親でしたが、時が経つに従って不満がたまっていきます。

「どうして、マジメに勉強しないの?学校の成績を上げようと努力しないの?相変わらず努力と根性が足りない子だわ!」と、この調子です。

もちろん、少年からすると知ったこっちゃありません。自分の将来の夢は「世界最高の作家になること」であり、高校の成績を上げることではありません。むしろ、それとは対極に位置しているくらいです。

無理やり学校に戻ったことを感謝されることはあっても、そこに文句を言われる筋合いなんて微塵もないのですから!


ここで、少年は新たな技を獲得します。

これまで母親の攻撃を「圧倒的な防御力で防ぐ」か「桁違いの攻撃力を持って反撃する」の2つしかありませんでした。

ところが、ここで「受け流す」という技を閃きます。

簡単に言えば、自分に向けられている悪意を、弟や妹、父親の方に向けるのです。

「あんたたちは、お兄ちゃんほど勉強ができないくせに」とか「あなたが駄目な夫だから、子供がこんな風になってしまったのよ!」という方向に、母親の思考の持っていけばいいわけです。


たえとえるならば、麻雀のようなもの。

一番最初に「子供は親に逆らってはならぬ」と暗示がかけれれていた状態。これは、麻雀でいえば「決して自分から上がってはならぬ麻雀」ということになります。

一見すると、この勝負、100%負けが決まっているように思えますが、実はそうではありません。自分から上がらなくても、トップを取る方法はあります。たとえば、「相手がチョンボする」とか「リーチしても上がれずに、点棒分損をする」といったことが起これば、勝つことは可能なのです。

もちろん、可能性は低い戦いですけどね。逆を言えば、その過酷な条件下で少年の防御力は極端に鍛えられたとも言えます。

それに加えて、この時点で「受け流し」を覚えました。麻雀においてトップを取ることは必ずしも必要というわけではありません。それよりもラス(最下位)に落ちないことの方が重要です。

敵の攻撃を受け流し、他のメンバーが振り込むようにしてやる。つまり、この場合は「母親の攻撃を他の家族に向けさせる」ということです。この技が成功した日は、少年の心は安寧としていられました(当然母親の悪意は、弟や妹、父親に向かい、別の問題を起こすことになりますが…)

このようにして、少年はさらに戦闘技術を磨いていくことになります。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。