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高校入学直後、少年の出した結論

少年が通っていたのは中高一貫の受験校でした。

中学の入試で入学した子供たちは、そのままエスカレーター式に高校へと進学し、それとは別に高校入試に合格した新しい生徒たちが入学してきます。

中学からそのまま高校へと進学した子たちは成績がまちまちでしたが、厳しい入学試験に合格してきた新規高校入学組は、皆、成績優秀でした。

中学の時に5つのクラスだった生徒たちは新規合格組と合流し、シャッフルされ、新しく8つのクラスへとわけられました。


少年は新しいクラスになじめませんでした。中学の時に仲のよかった友達の多くは別のクラスへと行ってしまったからです。

もう1つ決定的だったのは、高校に自転車で通い始めたことです。中学の時は電車通学でしたが、自転車ならばわずかながら通学時間を縮めることができます。片道15分か20分の違いでしたが、そのわずかな違いが睡眠時間を削って生活している少年にとっては大きく感じられたのです。

それに、電車の定期券を購入する金額をおこづかいに回してもらえば、余分にゲームを買うことだってできます。中学の時にわずかなおこづかいしかもらえなかった少年は、自転車通学することによって月に5000円のお金を手にすることができるようになりました。


けれども、ここに誤算がありました。

これまでは電車に乗っている時間を活用して、読書や学校の勉強や睡眠の時間にあてることができました。仮に電車で座ることができなくても、立ったまま寝る技術も習得していたので問題はありません。

ところが、自転車通学になった途端、これらの時間が完全に失われてしまったのです。自転車通学は思った以上に体力を消耗します。さらに、高校に上がると、それまで以上に授業のレベルが上がり、一気に勉強の内容が激化していきました。


「これは無理だな…」と、少年は悟りました。

残り3年間を無事にこの学校で過ごすことなど、到底不可能でした。しかも、少年の持つ特殊能力は、すでに「史上最高の作家を生み出す」というミッションに向けて全力で能力を発動してしまっているのです。高校生活に使う能力もエネルギーも残されてはいません。

仮に自転車通学をしていなくとも時間の問題だったでしょう。

少年の特殊能力「マスター・オブ・ザ・ゲーム」は、結論をくだします。

「ここが限界地点。史上最高の作家になるというクリア条件を達成するためには、この学校を辞めるしかない」

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。