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「泊りがけの研修」と「初恋の思い出」

ある時、北区ボランティアが中心となって、泊りがけの研修が行われました。研修といっても遊びみたいなものです。お昼にボランティア活動のちょっとした勉強があって、夜は一緒にご飯を食べたり、ゲームをして過ごします。

北区というと、例のあの人が所属しているボランティア団体です。青年は渋谷区の所属なので全然関係ないのですが、なぜか声がかかり一緒に参加することになりました。

夜になると恋バナトークが盛り上がり、「初恋の思い出について語る」ことになりました。

青年はそういうの苦手なので、ずっと黙ってました。でも、実は心の中には1つの思い出があったのです。

それは小学校5年生の時のコト。

小学5年生の少年には、好きな女の子がいました。
見た目はパッとせず、背も低く、特に勉強ができるわけでもなく、ノートを取る時の字も汚い女の子でした。
でも、たった1つだけいいところがありました。誰よりもやさしかったのです。それも、普段からでしゃばるわけではなく、誰にも気がつかれないようにそっと親切にするようなタイプのやさしさでした。

たとえば、クラスで嫌な役を決めるとするでしょ?
「掃除当番」とか、そういう役。必ず誰かがやらないといけないんだけど、誰もやりたがらない仕事。そんな時、決まって最後にはその子が手をあげるのです。
その時の担任の先生が「絶対に話し合いで決める人」でした。無理やり誰かを推薦するとか、ジャンケンで決めてしまうとか、そういうコトはしません。

そして、決まるまで「終わりの会」は続きます。放課後何時間でも延々と話し合いは行われます。というか、ただ黙ってみんなが座ってるだけで、話し合いにすらなっていなかったのですが…

いずれにしろ「終わらない終わりの会」が続くのです。そうして、最後にはその子がそっと手をあげて一番嫌な役を引き受けることになります。
少年は、そんな女の子の姿を見て「なんて、やさしい人なのだろう!」と感激し、好きになってしまったのです。

みんなが初恋の人の話をしている中、「その話をしようかな?」と思いましたが恥ずかしくてできませんでした。

なので、代わりに「初恋などないよ」と答えておきました。

         *

その後、夜もふけてきてから、みんなで「モノポリー」をやることになりました。

人数の関係で、みんなペアを組んでるのに、青年だけひとりぼっちになりました。北区ボランティアリーダーの押井さんは、例のあの人と組んでいます。普段なら、ここで何も文句を言わないのですが、なんだかカチンときて文句をつけました。

すると、押井さんもやさしい人なので「いいよ。じゃあ、ジャンケンで決めよう」と言ってくれました。

青年は押井さんとジャンケンし、見事勝利!彼女をゲット!好きな人とペアを組むことができて幸せな気分になりました。

それからモノポリーの勝負が始まるのですが、青年は初めてプレイするにもかかわらず、どんどん資産と物件を獲得していきます。ゲームは得意だったのです。

でも、後半、調子に乗って手持ちの物件をいくつか売り払ってしまいました。おかげで勝負は泥沼化し、全然決着がつきません。途中から飽きてきた青年は、サイコロは全部彼女に振らせて、自分はトイレに行ったり散歩に出かけたりしました(後から考えると、これは何かを暗示していたのかもしれませんね)

結局、朝方までモノポリーを続け、みんな睡眠不足で目が真っ赤になってしまいましたとさ。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。