見出し画像

舞台「苦悩教室」本番、前夜

そこからはあわただしい日々が続きました。正直、あまりにも忙し過ぎて覚えてないんです。人ってのは密度の高い時間を経験し過ぎると、記憶が飛んでしまうものなのです。

覚えているのは、舞台のタイトルが「苦悩教室」に決まったコト(このタイトルは、バーコードハゲの中野区ボランティア会長がつけてくれました)

それまで練習に参加していなかったキザオ君が合流してくれたことくらいです。

キザオ君の役どころは「母親の期待にこたえるため必死に勉強し、学校でも一番の成績を取るようになり、狂っていく」という熱血番長に次ぐ重要な役です。でも、演出の経験もあり、演技力も非常に高いので、「なんとかしてくれるだろう」という気持ちで、全幅の信頼を置いてまかせていました。

一番大変だったのは、例の3人組(美嘉ちゃん・和歌山君・山梨さん)を説得する作業です。ここにエネルギーを吸い取られてしまい、練習などに使う力と時間をガシガシ削られてしまっていました。

「仕事における最大の問題は人間関係である」って言葉は本当ですね。


そして、ついに舞台本番の前日を迎えます。

この日は、大道具などの搬入を終え、照明さんやホールのスタッフと打ち合わせをし、さらに本番さながらの通し稽古もしなければなりません。この通し稽古のことを「ゲネプロ(略してゲネ)」と呼びます。

ところが、この期に及んで、和歌山君と山梨さんが邪魔してくるんですよ。邪魔っていうか…本人たちは「よかれ!」と思ってやってるんですけど、総合的に見たら邪魔以外の何ものでもないんです。

たとえば、フツーの舞台では立ち位置を決めるために「場ミリ」ってのをやるんですよ。役者さんが演技をする時に「この位置に立ってください」って指示を出すための目印をカラーテープで床に貼るんです。

でも、今さらそんなもの無理なんですよ。だって、普段の練習で1度もやってないんだもの。

だから、「立ち位置なんて気にしてたら、そこにばっかり意識が集中しちゃって演技がおろそかになるから、やめてくれ」って頼んだんです。

でも、聞いてもらえないんですよ。「だって、学校でこう習ったんだもん!」とか「立ち位置をちゃんと決めておかないと、お客さんから顔が見えないから」みたいなコトを言って。

そりゃ、そうなんです。言ってることはもっともなんです!でも、もう間に合わないんですよ!時間がないから!こっちは全体を見通して指示を出してるのに、えらく細かい部分にこだわちゃうんです。

「もう、どうせどこかの席から見たら、役者がかぶって顔が見えなくなっちゃうんだから、あきらめよう!全部の席から、役者の顔を見せるなんて不可能だから!」って言っても聞かないんです。

もう、しょうがないから場ミリのテープだけ貼らせておきました。


で、日が暮れた頃に、どうにかこうにかゲネを始めることができたんですよ(この時、確か本番で使う衣装着てやったかな~?)

そっから3時間くらいかけて、本番さながらに大体のシーンを通してやったはずです。もちろん、音楽や効果音なんかも本番通りのタイミングで流しながら。

で、この時の青年は、脚本・演出に加えて、音響までやってたんです。音響っていうのは、音楽を流す係の人。作業自体は簡単なんです。タイミングよくMDのスイッチを押すだけなので(当時、MDっていう音楽再生機器があって、それを使ってました)

でも、ほんとにタイミングよく曲を流すには、台本を読み込んでないといけないんですよ。しかも、台本が練習のたびに書き変わってるし、本番ではアドリブ多用でしょう?結果、難易度が上がっちゃってたんです。

なので、ほんとはプロの音響さんを雇おうかと思ってたんですけど。手配もつかなかったしお金もかかるので、青年自らやったんです。タイミングよく曲を流しながら、音響室から役者に指示も出すっていう感じで。なので、かなり大変でしたね~


そして、いよいよ本番当日を迎えます!

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。