わからないから、おもしろい!(安部公房の「箱男」)
今回は「箱男」の紹介です。
「箱男」ってのは、安部公房という作家が書いた小説。
タイトルくらいは聞いたことのある人も多いのでは?
昔、「進ぬ!電波少年」っていうテレビの番組で「電波少年的箱男」って企画をやっていたので、そこで名前を知った人もいるかも?
簡単に「箱男」のあらすじを紹介しておくと…
ある1人の男が興味本位で段ボール箱をかぶって暮らし始めます。
冷蔵庫が入ってるようなデッカイ段ボール箱です。目のとこに穴をあけて、外が見えるようにしておきます。
最初は部屋の中で暮らしていたのだけど、好奇心がうずき始め、徐々に家の外に出るように…
その後、いろいろと不思議な体験をする。
…といったようなお話です。
あらすじだけ聞いていると、「なんだ。シンプルなストーリーじゃないか」と思われるかもしれません。
が…
ところがどっこい!これが意外と難解なお話なのです。
まず時系列がバラバラ。
それから「主人公が誰かよくわからない」
加えて、日記も出てくるんだけど、「この日記誰が書いてるんだ?」と読んでいるとわけがわからなくなってくる。
何が現実で?何が空想なの?
何が嘘で?何が真実なの?
サッパリワカラン!ワケワカラン!
…という状態になってしまうのです。
中国の思想家が書いた「胡蝶の夢」という作品がありますが…
アレと同じ。
自分が蝶なのか?人間なのか?人間の自分が蝶になった夢を見てるのか?それとも蝶である自分が人間の夢を見ているのか?どっちなのだろう?
あの話のパワーアップ版といってもいいでしょう。
あるいは、「新世紀エヴァンゲリオン」(通称:エヴァ)っていうアニメが昔ありましたけど。
エヴァの監督の庵野秀明さんが「わざとつじつまが合わないようにストーリーに矛盾を生じさせた」わけです。視聴者が議論しないように。
「正解がなければ、みんなすぐにあきらめるだろう」と思ったわけですね。
ところが、庵野さんの思惑とは逆に「余計に議論が進み、視聴者がのめり込んだ」のです。
結果、大ヒットにつながった。
…と、こういう流れになります。
安部公房がどういうつもりで「箱男」を書いたかは知りませんけど、わざとつじつまが合わないように作ったことだけは確かだと思います。
「読者を混乱させよう」としたのか「自分で書いていて、この方がおもしろい!」と思ったのか、それはわかりません。
その辺は安部公房研究家にでも聞いてください。
いずれにしても、ヘイヨーさん、この「箱男」意味がわかんないんですよ。
でも、わからないからこそ!何回も読んじゃう!
小説としては理解できなくても、詩のようなおもしろさを感じて何度も何度も繰り返し読む!
長時間列車に乗る時なんかに携帯して、ひたすら読んでる!
そりゃ、好きってことでしょう?
大好きってことでしょう?
わからないから、おもしろい!
ワケワカランから大好き!
世の中にはあるんですよ。そういう作品が。
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。