見出し画像

職員が具現化する、非営利団体Webサイト

Webディレクター・プランナーの平藤(へいとう)です。Webディレクターとして駆け出しの頃、オリエンを受けて2週間後に提案するといったことを毎週のように続けていました。提案力や調査する力を養えたことは、良い経験でしたが、たった一度のオリエンでは、Webサイトを使う人やクライアントを十分に理解できていなかったと思います。

いまではクライアントと制作者が共に考えることがクリエイティブの一番の近道だと考えています。

突然ですが、介助犬をご存知でしょうか?介助犬とは、手や足に障がいのある方の手助けをするために特別な訓練を積んだ犬です。そんな犬を育成している社会福祉法人日本介助犬協会(以下、日本介助犬協会 または、協会)のWebサイトリニューアルでは、職員の方々にサイトを設計していただきました。今回はそのプロセスをnoteにまとめました。

想いをカタチにするワークショップ

整理されていない情報が蓄積し、意図した情報が届いていないことが、旧サイトの課題として上げられていたため、リニューアルプロジェクトでは「現場(職員)の声をカタチにする」ことを目標に掲げてスタートしました。

そのため、ワークショップを導入し、職員のご意見や想いや考えを抽出し、参加者にWebディレクター/プランナーを擬似体験してもらうことで、Webサイトを設計していきました。

実施したワークショップの流れは以下。

ワーク1 Webサイトの利用者とそのニーズを想像する。
ワーク2 日本介助犬協会を伝えるキャッチコピーを考える。
ワーク3 ニーズを満たすWebコンテンツを考える。
ワーク4 サイトマップとして整理する。

※ ワークショップ協力:CALICO DESIGN

利用者とそのニーズを想像する

利用者をより具体的に想像してもらうために、年齢、性別、住まい、仕事、価値観と、Webサイトを訪問する理由を考えてもらい、1ユーザー/シートに書き出しました。

画像1

当然かもしれませんが、Webサイトに訪れる利用者を最も把握しているのは職員の方々です。当時の私が想定できなかったユーザー像がどんどん溢れ出てくる興味深いワークでした。

利用者を書き出したあとは、利用者のニーズ「〜したい」別にグルーピングし、Webサイトに求められるニーズを洗い出しました。

画像2

このワークを通して、多くの利用者の存在が可視化されました。それ故、旧サイトでは、情報の対象が不明確になり、コンテンツの価値を下げてしまったり、意図した情報が伝わらなかったり、サイトが複雑な構造になってしまう原因でもありました。

キャッチコピーを考える

職員の方々に協会を改めて捉え直していただくことを目的として、第三者に対して協会をひとことで表すキャッチコピーを考えてもらいました。言語化することで見えてくる協会の特徴を言語化することで、日本介助犬の持っている魅力を整理することができました。

本来、協会の特徴を整理するために実施したワークでしたが、日本介助犬協会では、年に一度「介助犬フェスタ」という支援者やボランティアスタッフといった多くの関係者(ステークホルダー)が集まる大規模なイベントを開催していたため、そのイベントでキャッチコピー案の比較調査(投票)を実施することにしました。

数十案以上の中から、3つのキャッチコピーを選出し調査しました。選定基準は"対象"で、誰から誰へ発せられたメッセージが、多くのステークホルダーの心を掴めるのかを比較調査しました。

3つのキャッチコピー案
1、あなたの優しさの先に、人と介助犬の未来があります。
2、障がいなんかで”自分らしく生きる”を諦めない。だから、介助犬。
3、キミの笑顔が見たいから、ボクはキミのそばにいるよ。

画像3

合計700人以上の方にご協力いただいた結果、圧倒的に「3」の犬(介助犬)からあなたへ発せられたキャッチコピーが票を獲得しました。

そこで、ステークホルダーは、犬の社会参加に共感した結果、支援していただいているのでは?という仮説を立てて、Webサイトをデザインしました。

具体的には(ボランティアさんによるたくさんの魅力的な写真素材があったから実現したことでもありますが)メインビジュアルに介助犬が活躍しているシーンの象徴として表情が伝わる写真を積極的に採用しました。

また、介助犬の特殊能力である人をサポートする能力を、介助犬の魅力が伝わる要素をモチーフとして採用しました。

画像4

※ Webサイトの所々にナビゲーターとして現れる介助犬のモチーフ(右端)

ニーズを満たすコンテンツを考える

訪れるユーザーとそのニーズを想像した後は、ニーズを満たすアイデアとしてコンテンツを考えました。

ワークで出てきたコンテンツアイデアの一例
・各ボランティア別の内容説明
・募金箱の全国設置マップ
・ワンちゃんが介助犬になるまでのプロセス
・支援者の方々によるインタビュー(対談)

ワークショップを通して出てきたアイデアは、そのほぼ全てが現在のサイトで実現されています。

最終的には、ユーザーのニーズ軸で整理されたサイトマップにリニューアル後も残したい既存コンテンツを配置し、新しく考えられたコンテンツを追加することでサイトの構造(サイトマップ)を設計しました。

画像5

※ワークショップで整理されたサイトマップ例(一部)

その中でも、特別対談として、支援者である読売巨人軍 菅野智之投手との対談が実現したことで、想いが具現化したひとつの事例であり、ワークショップでのアイデアが大きな反響(インプレッション)を得ることができたコンテンツになりました。

画像6

菅野投手は2015年から、1勝ごとに一定額を日本介助犬協会に寄付するという支援活動を実施されており、宮崎キャンプ中にお話をお伺いさせていただきました。インタビュー記事はこちらをご覧ください。

まとめ

日本介助犬協会のWebリニューアルをお手伝いさせていただいている中で、職員の方々が、中長期的な時間軸の中で、犬と障がい者の幸せを願い、犬の社会参加の可能性を模索している姿勢に感化させられるプロジェクトでした。

具体的にはお伝えできませんが、Webリニューアルの結果、たくさんの方々に日本介助犬を知っていただけたことで、Webを通じた寄付の増額にも寄与することができたことは、利用者の方々からご褒美をいただけたような気分です。

Webサイトは誰でも容易につくれる時代です。そんな中で、大切なことはその団体に最適化しているか?だと考えています。最適化させることで、効果や期待を得られるメディアになると思いますし、なにより関係者がジブンゴトとして捉えられる愛着のあるメディアになると信じています。

---
株式会社マルチプルは、創造力で組織を活性化させる、ディレクションカンパニーです。Webディレクター・プランナーに関してTwitterで情報発信しています! 平藤篤|MULTiPLE Inc. @hey2gm


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?