瀬戸内に潮騒の詩
もう何時間 走り続けたのだろう
今日はR28を降りて気付いたが帰りは
恋人の聖地とやらを少し見てから
戻ろうか
明石海峡も 昔は小さなフェリーでしか
渡りようが無かった時代も在ったが
大きな橋の群れが出来て 神戸から真っ直ぐ
カッ飛べば あっという間だが、降りる場所は
淡路島の端では無いから つまらない!
水平対向のエンジンが少し焼けた匂い
80年型 R100RSも 長年の相棒
妻が亡くなり 生きる糧を無くした俺に
何時も傍らで 年老いた水平対向が 頑張れよ!と
背中を押してくれる
妻の命日に 妻が生まれ育った徳島まで
この古いBMWと 長く走って来た
東京で夢だった店を出し 妻と二人
二人三脚で やって来たカフェも今は一人
バイク好きな奴らが集まり繁盛はしていたが
今は休業にして とりあえず徳島まで
淡路島も本当に久しぶりだ
日本の本州と四国の間 明石海峡と鳴門の渦潮
瀬戸内の貴重な島
今日の宿はUrban&Beachで海を眺めながら
寝るとするか
瀬戸内の潮騒を聞きながら 海の幸に舌鼓して
旧友に給油して 明日は 一気に徳島へと
少しイジり過ぎた このR100RS
水平対向特有のOILの滲み
コイツも ゆっくり休ませてやらないと
僕と妻が出会った この淡路島
僕は神戸三宮で育ち 妻は徳島だった
互いに淡路島の江埼灯台へバイクで
ツーリングに来ていて 彼女はレブル250
僕は もうR100RSを 少し改造していて
このバイク何ですか?と声を掛けられて
バイクの話しで 日が暮れ
近場の民宿で 談義し合ったのが最初だった
後に夢は バイク好きが集まるカフェを営みたいと
意気投合してから 翌週には付き合う事となり
三宮で 一緒に働き 貯金をして
東京で物件探しをしながら 下が店舗で上が住居
3ヶ月ほど 散々 物件探しをして やっと店を出し
結婚もして だけど子供には恵まれず
まぁバイクが子供みたいなモノだね!と二人で
笑った事も在ったさ
この出会いの淡路島は 本当に思い出深く
妻とは何度も遊びに訪れて 彼女は民宿やペンションが
好きで 僕はホテルやリゾート感が好きだったが
毎回 僕がおれては民宿やペンションだった様な
今日は 妻が居ない中 古い親友のR100RSと二人
コイツに似合うのは民宿でもペンションでも無く
ちょっと洒落たリゾート感だと思っていた
カーテンを閉めず 朝日が入り込み 潮騒が聞こえ
目覚める心地良さ 隣りに居ない妻
1人きりのベッド 何処からか聴こえる詩
潮騒に馴染み 重なり 身体に心に染みる
さて朝食を済ませば 相棒の水平対向と走るか
徳島まで淡路島を横断しながら
独特なBMWの水平対向のエンジン音も
潮騒に紛れ詩の様に聞こえ
命日の明日には徳島の妻の墓前には着くだろう
潮騒の詩を手土産にして さて行くか
瀬戸内に囲まれた島の端から鳴門海峡を渡り
古き友の エンジン音と共に
フィクションです
場所や宿は実在します。
BMW R100RSのカスタムは知人が愛車として
乗っているので 使わせて頂きました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?