ショートショート 無理無理童話88(2キャッシュ)
真っ暗な舞台にライトがあたった。『無理無理童話88』の看板がおりてくる。賑やかな音楽とともに女の子達が走ってきた。
「1番ラプンツエル、歌います」
髪の長い少女が真ん中に立つ。
なんだろうこの歌。そう思う間もなく次の少女が前に出る。
「2番白雪姫。よろしくです」
ヒロインの悲哀だろうか。なおも歌は続く。
「3番シンデレラ。歌いまーす」
絵の具?
目が開いた。体を起こす。仕事机だ。昨日、絵本のイラストを描いてる時に寝落ちしてしまったらしい。
「変な夢」
そう呟いて、仕事部屋の隅を見る。ピアノの蓋が開けっぱなしになっていた。気分転換に弾いてそのままだった。
近づくと、鍵盤が絵の具で汚れていた。『88』。88鍵か。
「ごめんね」
そう言って蓋をとじた。後で拭いてやろう。全員押しの子なんだから。
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今週のお題は「グリム童話ATM」。
裏お題は「無理無理童話88」です。