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ショートショート アルミ缶の【ショートショート100|No.6「ミカン」|400文字】

夕食の買い物帰り、前を制服姿の中学生の男の子たちが3人で話しながら歩いていた。
「じゃあさ、じゃあさ、俺、『アルミ缶の上にあるみかん』!」
どっと、3人ともが笑う。きっとみつけたてなのだろう、その駄洒落を。

「え、え、ええと、じゃあ。じゃあ俺『アルミ缶の右上にあるみかん』!」
違う男の子が言って、3人がどよめく。
「お! 俺は! 『アルミ缶の斜め上にあるみかん!』」
慌てて残りのひとりが言う。乗り遅れたくないらしい。

「『アルミ缶のちょっと下にあるみかん』!」
「『アルミ缶の意外と遠くにあるみかん』!」
「『アルミ缶とはかけ離れたところにあるみかん』!」

どうして。
どうして「そこ」を掘り下げるのだろう。互いに負けまいと、ひたすら「みかんがどこにあるか」について議論を重ねる。彼らは必死だ。そして通行の邪魔だ。買い物袋を握りなおす。「すいません。」と小さく言って通り過ぎる。

若者たちよ。君らの駄洒落道は、まだ未完。

ショートショート No.266

NNさんの企画「100のシリーズ」に参加しています。
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