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ショートショート 告白雨雲(2告白)

「あー。もうそれ、聞いた。百万回聞いた」
「百万一回目でも、聞いてよ!」
電話の向こうの南はちょっと酔っている。
「それで、俺、どうしたらいいの?」
「聞いてきてよ、君塚さんに! 仲、いいんでしょ?!」
「『営業の南さんがあなたのこと大好きで告白しようか俺に電話してくるんですけどどう思います?』」
「絶対、やめて!」

南が半泣きになる。小学校の頃と違って扱いに困るときがある。
「明日、告白、します!」
南が大きな声を出す。
「おー。頑張れ」
「雨が、降ったら!」
「天気予報、見た?」
「見た!」
「降水確率0%」
「雨が降ったら、するの!」
一方的に電話が切れた。

「告白、してくる」
朝にまた電話が来た。部屋のカーテンをあける。
「降ってないけど」
「雲ぐらい出てるでしょ! 雨降らすから! 我が告白雲!」
「……そう」
「勇気出た。ありがと」
素直だ。ちょっと動揺する。
「ふられたら、何とかしてやるよ」
「どっちよ!」
雲一つない空を見ながら答える。
「さあ?」

ショートショート No.492

たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「告白」「雨雲」です。