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ショートショート いちばんはじめのとり

この世に初めて夜の帳がおりたとき、
みんな困り果てた。どうしたらまた朝がくるのかわからなかったからだ。

まずは落ちてしまったお日様をかき集めようという話になった。
足の速い動物たちが西の方へ、必死で探し回ったけれど見つからない。

代わりのお日様を作ろう、と誰かがいった。
木をたくさん切り集めて、粘土で固めて、火をつけて
大きな大きな炎の玉ができたけれど
ただ地上を転がるだけだ。空は明るくならない。

一羽のツバメが飛び出した。
みんなは火の玉を消すのに忙しかったので気にしなかった。
ふと気付いたスズメがツバメの後をおった。
ツバメが、夜のカーテンを押しあげている。たった一羽で。

羽を持つものがまた何匹か飛び出した。
夜なんて持ち上げたことがない。見様見真似だ。
たくさんの鳥たちが夜のカーテンを押し上げる。

地上の動物たちは見守った。
少しずつ、空が明るくなる。
鳥たちが夜の帳を押し上げていく。
自分たちの手で初めて迎える、朝。


ショートショート No.76

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