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エッセイ この門をくぐる者は【ネコ戦記外伝 文学フリマ岩手8編2】

 6月18日開催の文学フリマ岩手8に出店いたします。
 サークル名は「珈琲まねきねこ」です。言いにくいです。

 販売予定の本の見本が届きました。ショートショートの薄い本です。

 印刷はしまや出版さんに発注しています。理由は後述します。

 本のデータはIllustratorで作りました。本を作ろう、と思った当初はInDesignで作らないといけないと思い込んでいましたが、Illustratorでも文章は組めます。(しまや出版さんではPDFや手書き、wordファイルの注文も受け付けています)手を動かしてようやく理解した感じです。専用ソフトを使ってはいるものの、デザインに関して私は完全な素人で、ソフトウェアの使い方もなんかこう、もがもがしながら身につけたものでしかありません。もがもがの詳細を書き残しておくので、ご興味がある方は参考になさってください。

 さて、そもそもなんでデザインの素人の人がIllustratorを使っているか、なんですが、率直に申し上げますに、会社で使わなくちゃいけなくなったからです。前の異動のとき、前任が引き継ぎ期間無視していきなりやめちゃった後釜に放り込まれ、広告用のポスターなどを受け渡しする立場になりました。印刷屋さんから頂いたチラシデータを先方の了承のもと、ポスター用に修正する仕事があって、それの拡張子が全部.ai(イラストレーターのデータ形式)なんです。この仕事自体が前任者に丸投げで、社内でここにしかIllustratorのソフトが入っていなかったため、このファイルの扱い方を知っている人間が誰もいません。絶望。溜まりに溜まった広告データ用の共有フォルダを確認すると.aiのファイルが整理されないままみっちりつまっていました。
 理不尽。の三文字に頭を支配されながら自宅に帰り、家計簿を取り出して、月次予算をたてました。計測、検証、再見積もり。いくつかの娯楽と食事と読書、ちょっぴりの貯蓄を切り詰めて予算を立ておおせた私はパソコンを起動してAdobeのサブスクを契約しました。どのみちこのままソフトが使えなければ仕事が危ういのですから、必要経費です。致し方なし。

 勉強をかねて、noteのサムネイルをIllustratorで作ることにしました。多分、多くの方はCanvaか投稿された共有画像を使っていらっしゃるのだと思う。私は少数派です。でも、あれなんです。仕事の勉強なのです。以外と現実的な理由で作っています。

 色使いがいいですね、とたまにお褒めに預かることがあります。ありがとうございます。とお礼を言って良心が痛みます。私の作る画像データのほとんどは、センスではなく知識で作られています。配色に関しては下記のサイトを参考にすることが多いです。

 また「デザイン画像に多くの色を使用しない」という方法もTwitterなどでデザイン系の情報を追いかけて得た知識です。中でもオビワンさんという方のツイートを多く追いかけてきました。イラストとデザインをなさっている方で、ナゾストアという謎解きグッズブランドの商品デザインをしていらっしゃいます。

https://the-nazo-store.com

 学生の頃パズル狂いだった私はここでオビワンさんを知って、それ以来ずっと追いかけているファンです。最近配色の本を出されました。

 既存の配色アイディアを参考にするだけでなく、いつか自分でも配色を作れるようになりたい、というのが密かな野望です。


 操作の具体的なことも、やっぱりTwitterと検索で覚えています。あとはyoutubeやAdobeのチュートリアルを少し。書籍をずっと参考にするのは難しいです。読んでも操作方法は覚えられませんし、操作画面がアップデートで変わっていたりします。ただ、何ができるか、できそうかは知っておかないと検索をする行動すらとれないため、はーもうどれがいいんだあ、と嘆きながら書籍をあたる日々です。現状ではこれが便利だなと思っています。

 実際にドリルとして使っているわけではなく、基本的な機能を知るために使っている感じです。こういう画像どうしてるの? と思った時に探す用です。Illustratorはとにかく機能がいっぱいあって、網羅的な解説をみると頭がくらくらするので、自分にはこのくらいがちょうどいいです。


 学生の頃江戸時代の古書籍を調べるゼミにいた私は本そのものが非常に好きな人間でもあります。デザインの参考にしよう、と思ってまずひっぱりだしたのがこれです。

 装飾写本とか。どこの貴族でしょうか。
 手書き装飾の本は美しくてうっとりします。中でも私は文字と一緒に組み込まれた枠の装飾が好きです。花型装飾というものらしい。

 せっかく自分で本をつくるのだから、なんとかして紙面に組みいれたい、ともがもがした結果がこれです。

 右上の扉絵みたいなやつ。
 掲載したお話全てにこうした飾り付きのタイトルを作りました。古いパソコンをぎゅんぎゅん言わせて、がんばれがんばれフリーズしないで、と懇願しながら作った代物です。

 そう。扉絵ですね。
 私は扉絵が作りたかったんだと思います。昔の本の扉絵って、柱があったり、針があったりして、本当に建物の扉みたいなんですよね。さあこれからお話の中にはいるぞって、わくわくする。そういうものが作ってみたかった。


 印刷をお願いするのに何社か調べてわかったことですが、大きい会社さんはデザインの参考になる書籍を出していたり、印刷見本を安価に(あるいは無料で)配布なさっていたりします。

 これはしまや出版さんが制作協力している同人誌デザインについての本です。DTPに関する基本的な情報も載っています。

 こちらは大阪のソリグラフ専門の印刷会社レトロ印刷さんが出している
出版実例集。

 ソリグラフはシルクスクリーンのような印刷技法で、いわゆるCYMKなどの原色の点で印刷するのではなく、色のインクをそのまま版にとして印刷し、時には重ねる方法です。ここで作られたものを以前に目にしたことがあり、憧れがあっていろいろ調べたのですが、にじんだり裏移りしたりするという特性があって、文庫のような本には向かず、結局今回は断念しました。
 ネットショップに印刷見本と入稿方法をまとめたセットが売っていたり、オンラインで工場見学ができたりします。ここで何か注文するとおまけでいろんな印刷見本がとどいて、実店舗にもお客さんが印刷したフライヤーや名刺が飾られていてとても楽しそうです。
 そのうちチャレンジしたいなあ。(もっと勉強しないとね!)

 文字に関しても好きだけど色々ものにできませんでした。タイポグラフティってやつです。とりあえずこれを。基礎的なことがわかりやすく書いてあります。

 ああ、よく見るあれ、こういう書体なんだ……ということがたくさん書いてあって、この知識自体はそのうち画像記事にいかしたいなあと思っています。


 調べているだけで日が暮れてしまいそう。一冊の本を作るのにそれだけたくさんの知識が使われているんだな、と思うと改めて流通書籍のすごさを感じました。

 さて、最後に実際の入稿データについてです。
 私の本のデータは、しまや出版さんのIllustrator用の雛形から作っています。
 そう。雛形データがあって腹を決めやすかったからここの会社さんにしたんです。調べて存在を認識しても、トンボとか余白とかを作る自信がなかったんですよね……。

 雛形は多分他の印刷会社さんも入稿用に準備をなさっているのではないかと思います。作ってみたいけど……とうじうじしているより、一回落として手を動かしてみたほうがきっといいです。私自身は結局それから大量のわからないことが発生して、複製時に使いもしないイラストデータを大量に発生させて収集がつかなくなったり、入りそうな文字数を勘違いしてページからあふれさせたり、あんなことしたりこんなことしたりして、「最初からやりなおし」を二回発生させました。データ入稿後も閉じる側に余裕がなくて本文が読みにくくなりますよ、とご指摘をいただき、全体のレイアウトを見直しています。

 なんだろう、でも、できたね。

 切り落としのことを考えてなくて左右の余白が狭くなったり、オブジェクトを配置するのが下手すぎて段の高さががたがたになったり、大量の反省点が見つかるものの、一応形にはなりました。

 同人誌を作るハードルは昔より格段に下がっているのだと思います。完全な素人の私でもなんとか(自己評価だけど)なりました。いいものを作ろうと思ったら本当に奥が深そう。扉をくぐった先はどこまでも悩みと反省のつきない地獄の門だと
思います。困りますね。いこかもどろか。

 ああ。でも。面白いものが、作ってみたいですねえ。(困った困った)

エッセイ No.057


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