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ショートショート 文学トリマー
「毛を整えて、抜けていた歯を補おう。目でチャーミングに見せるのちょっといいかも」
先輩がデスクの横で僕に言った。きょとんとした顔で僕は見返す。
「わからないかな。例えばここ」
先輩が僕の眺めていたページを印刷して手元に持ってきた。
一ケ月の研修期間が終わりました。君たちもう立派な社会人です。このフレッシュマンが。
「これをこう」
先輩が赤鉛筆で修正を入れる。
一ヶ月の研修期間が終わりました。君たちはもう立派な社会です。このフレッシュマンめ。
「ああ!」
声が出た。
「『ケ』を整えて、『は』を補って、『め』でちょっとチャーミングに見せるんですね?」
「さっきもそう言ったろ?」
先輩が呆れた顔をする。僕は笑って答える。
「毛整えるとか、歯補うとか、トリマーかよって思っちゃいました」
「まあ。そんなもんかも。いい文章を、更に良く」
先輩が腕を組む。僕は胸ポケットの上を見る。真新しい『編集』の文字が名札の上でピカピカ光っていた。
ショートショート No.711
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
今週のお題は「文学トリマー」です。
先週のお題は「記憶冷凍」。そして裏お題は「二億斉藤」。体調の良くなかったねこの人は裏お題をばっくれましたが、小粋でポップなヒスイさんはガッチリ書いております!
奥さんだってプライスレスです!