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ショートショート 謹製金星菌性

「要するに、干し椎茸だろ?」
営業の王がパッケージデザインを見ながら不満げに漏らす。
「日本向けらしいよ。贈答用だって」
企画開発の馬がコーヒー片手にのぞきこんだ。
「いいんじゃない?」
「大袈裟だろ。『謹製金星菌性』って。そもそも『金星』ってなんだ?」
「モンドセレクション」
馬がパッケージの端にかかれた文字を指す。
「金賞とったらしいよ?」
「日本人はもっと奥ゆかしいのが好きだよ」
王が手の甲でサンプルを叩く。
「社長のゴリ押し」
馬がけろりと言った。

がたん。と音がしてオフィスの空気が変わった。部下をひきつれた恰幅のいい男が入ってきた。
「金社長!」
王があわてて直立不動の姿勢をとる。馬はとっくに直立していた。
「どうだね、新商品は?」
社長がにこにこと王に話かける。
「あの」
なにか言いかけた王を社長が見る。目の奥が笑っていない。
「な、なんでもございません。謹製 菌性 金 Say!(金社長のおっしゃるとおり謹んできのこをお作りします!)」

ショートショート No.499

たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」に参加しています。
今週のお題は「音声燻製」。裏お題は「謹製金星菌性」です。


そして1ヶ月続いたクリエイターフェスの「#ショートショート書いてみた」も今日でおしまい。共同マガジンのみなさま、お疲れ様でした!