保育士へのリスペクト〜個人ではなく蓄積された職業知に対して〜

2012年から教育にたずさわっている僕。数年前から障害児施設で働くようになって、はじめて保育士さんと協働しています。自社のスタッフだけでなく、訪問先を含めさまざまな形で保育士さんと出会い、連携している。

そんな中でわかったことがある。

保育士さんのスキルは、理論ではなく具体的な手法の形で伝承されている

ということ。




SNSでは時々、保育士さんの神業が紹介されています。

こういうの、ほんとに素敵だと思うし、極めて優れた技術だと思います。そして…これを実践できる保育士さんが実はそこらじゅうにいる。

娘が通っていた保育園でも、こうした神業をもった保育士さんがたくさんいました。運動会やお遊戯会も、見るたびその指導力に感動したものです。

(わが子の姿以上に、先生方の苦労と工夫を思って感動するという職業病)

今連携してる先生たちも、キーボードで演奏しながらお歌をうたったり、こどもたちが楽しく遊べるネタをたくさん持ってる。キャラクターの絵を描いたり、絵本を読み聞かせたり…

保育園の中でこどもたちが夢中になれるあらゆるスキルを持っていて、ほんとに凄いなぁと思うのですが…

最近、その背景が少し見えたような気がしました。




スキルを持ってる保育士さんが多い一方で、そのスキルがなぜ効果的なのかを理解している人は極めて少ない。

「何をすればどんな反応が返ってくる」のかはわかっているけど、それがなぜなのかはわかっていない。

お〜て〜て〜は、お〜ひ〜ざ〜♬

と歌えば大半の子は手を膝において静かになる。いただきますの準備が整う。…たいていの子どもたちは。

だけどそれがなぜなのかは理解してない。

普通に指示するのと何がちがうのか、を理解していない(考えていない)から、ほかの場面での応用が効かない。「場面に対する対処法」としてのスキルであって、「原因に対するアプローチ」にはなっていない。

だから…

保育はめちゃうまいのに、発達支援はてんでダメ…

という先生が実はめちゃくちゃ多い。

僕にはそれがフシギでならなかった。保育士のスキルの多くは発達支援的に実に効果的なもの。定型発達の子たちならそうした取組できちんと集団適応できるし、その中で心身が育つ。

だから保育士は発達支援がうまい…

と思っていた。

どうやらそうじゃなかったらしい。

保育士の先生方が持っているスキルは、保育士という職業の中で蓄積された現場の知恵と工夫の集合。なぜそうなるのか…をほとんど考慮せず、「これやったらうまくいった」という成功体験を積み重ねてできたものなんだと思う。

それは現場の実践家としてはおおむね適切なことで、まちがいじゃない。これは僕が勝手に勘違いしていただけの話。

管理栄養士が料理上手とは限らない。
反対もまた然り。

場末の割烹よりも美味しいごはんをつくる家庭の父・母が、栄養や料理の理論に詳しいとは限らない。

おなじように…保育士は、保育はうまいけどその保育が効果的である理由はわからないんだ。

だから…

同じようなスキルを持っていても、その人自身の価値観や考え方によって発達支援の考え方は全然ちがうし、大半の保育士は結局支援ができない。

この人、保育のスキルめちゃ高いのになんでこんなに理不尽な指導するんだろう…

と思うことが時々あるが、それは結局、「蓄積されたスキルを練習して身につけただけ」だからなんだろうと思う。

確証はないがたぶんそう。

最近の気づきでした。


放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。