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奈良パーク&ライド 30年を超える歴史編【連載交通⑥】

この記事、マニア以外立入禁止。

 前回の記事では「パークアンドライド」の概要と奈良市内で行われる取組の事例を紹介しました。今回は奈良市内のパークアンドライドの歴史を紹介する記事ですが、かなりマニアックな内容に仕上がっていますのでご了承ください。

 2022年のこんにち。市役所や24号高架下の駐車場を活用したパークアンドライドがすっかりなじんでいますが、これまでの歴史では今の取組内容からは想像できない歴史を歩んできました。

 時は、1988年、奈良公園で開催されたとある博覧会の開催から奈良のパークアンドライドの歴史が始まります。

奈良のパークアンドバスライド黎明期

なら・シルクロード博'88

 筆者の調べで奈良市内でパークアンドバスライドが実施されたのは1988年に開催された「なら・シルクロード博'88」です。奈良公園を主会場に平城宮跡で開催された博覧会です。

 自家用車での来場者向けにパークアンドバスライドが実施され郊外6ヶ所に駐車場(駐車料金800円)を開設し(下の一覧)、無料バスで輸送していました。

  • 宝来=奈良大学跡地 1222台

  • 平城=現在のならやま研究パーク及び奈良市総合福祉センターか? 2321台

  • 青山=現在の青山台1丁目、2丁目の住宅地 3596台

  • 九条=現在の大和郡山市九条公園 1462台

  • 出屋敷=現在のR169号「しまむら」がある敷地か? 403台

  • 肘塚=現在の南肘塚「株式会社松鳥」周辺住宅地か? 114台

  • 白川(予備)=天理市白川町内 2000台

 シャトルバスは、肘塚・出屋敷は現在の高畑駐車場へ、それ以外は現在の奈良公園バスターミナルが立地する登大路にて発着をしていました。尚、宝来駐車場と会場を結ぶバスは平城宮跡会場を経由し会場間連絡の役割も担っていたようです。

 尚、このパークアンドライドは厳守率90%の好評を獲得し、その理由としてドライバーに奈良公園内には駐車が少ない意識があったことや、効果的なP&R告知方法、誘導看板が適切であったことが記録されています。

 このパークアンドライドの運営では奈良県警がヘリコプターを飛ばして情報収集を行うなどかなりの力の入れようであったそうです。

朱雀門・東院庭園復原記念事業 平城京'98

 次にパークアンドバスライドの実施を確認できたのは1998年に開催された「朱雀門・東院庭園復原記念事業 平城京'98」です。会期中の土日に郊外3か所に駐車場が用意されていました。

  • 奈良阪=旬の駅ならやま向かいの敷地

  • 宝来→奈良大学跡地か?

  • 大安寺→詳細不明

(1999~2009)春、秋の隔年2季実施へ

(筆者作成)

1999年から

 資料で最も古く確認ができたのは1999年ですが、奈良公園の繁忙期であるゴールデンウィークと秋の行楽シーズンの2季に毎年パークアンドライドを実施することとなります。

 実施回により内容はことなりますが、宝来の奈良大学移転後の跡地や、奈良市役所駐車場、国道24号線奈良高架道下、奈良教育大学、自治能力開発センターなどを利用した駐車場が開設された模様です。しかしながら輸送方法など詳しい情報を見つけることはできませんでした。これらは奈良市や奈良県、国が連携して実施してきたものです。

パークアンドライド以外の社会実験も含めて

 2008年秋、2009年秋については「奈良中心市街地交通処理検討委員会」によって検討、報告されるようになります。こちらは奈良公園を中心とした交通問題について議論するものでパークアンドライド以外にも奈良公園を周遊するバスや公園内道路の一方通行などの社会実験が連携して実施されることになります。

 2008年秋、2009年秋はいずれも複数の駐車場が開設されていますがそのうち国道24号線奈良高架道下と奈良市役所の駐車場を活用したパークアンドライドについては「ならまち」などを経由するルートで駐車場と奈良公園を結ぶバスが運行されたことは特筆すべきことです。

2008年の臨時バス路線図

(2010~2013春季)遷都1300年祭とその前後

(筆者作成)

1300年祭における平城宮跡向けのパークアンドライド

 2010年に平城宮跡をメイン会場としたイベント「平城遷都1300年祭」が開催されます。春、夏、秋の「フェア」と呼ばれる催し期間にはパークアンドライドが実施され、木津川市体育館、大和郡山市九条公園、奈良市中町に駐車場が用意され平城宮跡までシャトルバスで輸送していました。フェア以外の期間については平城宮跡内に仮設駐車場が用意され直接会場に駐車が可能でした。

 2010年の奈良公園方面のパークアンドライドについては奈良市役所駐車場のみが開設されていたようです。

 尚、前年の2009年秋に1300年祭パークアドライドのリハーサルとして木津川市体育館に駐車場を開設、奈良公園とを結ぶシャトルバスを運行していました。

ポスト1300年祭

平城遷都1300年祭閉幕以降は「奈良中心市街地公共交通活性化協議会」によって検討、報告されるようになります。こちらは「奈良中心市街地交通処理検討委員会」の事実上の後継で、処理検討委員会同様に複数の取組がそれぞれが連携しながら実施されます。主な取り組みとしては「ぐるっとバス」が挙げられるでしょう。

 1300年祭閉幕後の2011年、2012年については1300年祭のパークアンドライドを彷彿とさせる取組が実施されます。

 奈良市中町の駐車場をそのまま活用し、そのほか奈良阪や天理市内にも駐車場を開設した時もありました。尚、奈良公園のみならず平城宮跡への来客もパークアンドライドの対象としていたため中町駐車場については平城宮跡までのバスしかなく平城宮跡で奈良公園とを結ぶ臨時バスに乗り換える必要がありました。

平城遷都300年祭とその後の駐車場(筆者作成)

(2013秋季~)2022年現在に繋がる取組体系へ

(筆者作成)

駐車場の市街地回帰と、ぐるっとバス輸送

 これまで、平城遷都1300年祭を彷彿とさせる、中町、奈良阪などを駐車場としてきましたが、2013年の奈良阪1ヶ所の開設を最後にこれらは使用されなくなります。

 2013年秋以降は国道24号線奈良高架道下への駐車場の開設。そして奈良市単独の事業であった奈良市役所駐車場を活用したパークアンドライドの駐車場を公共交通活性化協議会の取組として編入し、この2ヶ所は(ワクチン会場駐車場となった2021年秋の奈良市役所を除き)2022年現在も継承されることとなります。

 24号高架下、奈良市役所については同協議会によって運行されている「ぐるっとバス」に奈良公園方面の輸送を任せ、2013年秋以降はパークアンドライド駐車場と奈良公園を往復するシャトルバスは運行されていないことは特筆すべきことでしょう。(平城宮跡へは徒歩またはぐるっとバスの利用)

常設有料駐車場の活用

 奈良中心市街地公共交通活性化協議会ではパークアンドライドの取組とは別に、奈良市内の駐車場利用の平準化を目的に「市営JR奈良駅駐車場」への駐車誘導を行っています。当初はJR奈良駅駐車場への誘導のみだったものの、2018年には駐車場利用者に奈良市内のバス1日乗車券の無料配布を通してパークアンドバスライドの取組としてもJR奈良駅前駐車場を追加。以降、バス乗車券の無料配布を行わない時においてもパークアンドバスライドの対象駐車場として紹介される(されなかったり)ことがあります。(2019年春に駐車料金を安く改定。)

 また、2020年開業の奈良県コンベンションセンターの駐車場では春、秋の取り組み期間以外においても一定の条件を満たすと駐車料金がサービスされる制度があり、春秋はパークアンドライドの駐車場としても指定されます。

 尚、パークアンドライド駐車場としての指定はありませんが、平城宮跡歴史公園前に2021年に開場した駐車場「奈良めぐり平城宮跡前駐車場」においては「ぐるっとバス」の乗車券を駐車1台あたり2枚発券でき、これについても通年で実施されています。

駐車場と「ぐるっとバス」の運行経路(筆者作成)
※ぐるっとバスの運行経路は2022年時点。点線部分は繁忙日の一部は運休。
※「奈良めぐり平城宮跡前駐車場」はパークアンドライドには指定していないが類似の性質がある

参考文献

こちらのページに記載しております。
https://note.com/heijo_tourism/n/n97ee63e406fe

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