見出し画像

(外資)ファイナンス職のキャリアパス

ツイッターで学生やらからDMで質問をもらうのであくまでも判る範囲で書いておきましょう。ある程度知見がある分野を加筆しています。

私自身のキャリアパスはこちらに書いているので何をしてきたかはまずは前提として参照してみればいいと思います。外資系メーカーから始まり原価計算、事業部ファイナンシャルアナリスト、コントローラー、FP&A、(日系企業)子会社CFOという感じです。したがって日系企業の経理財務などについてはほぼわかりませんがMBAに通ってた時や採用面接をした人などある程度他人から内情を聞いた程度です。そんなわけで自身が経験した職について書きだしてみましょう。


原価計算
比較的規模が大きい会社じゃないとそもそもポジションはないと思いますが工場が軒並み海外に移転してる現状では経験としては割とレアです。国内に工場を持つ会社に行くなら必須ともいえるしこの経験の有無でスクリーニングされてしまいます。つまりメーカーに行くなら一定の年齢を超えると必須スキルであり且つ習得する機会がかなり少ない。日系だろうが外資だろうがメーカーに入ったなら絶対に経験しておくべき業務です。たまに郊外の工場勤務は嫌だという人を見かけるがそんなつまらない感情はどうでもいい、将来の選択肢を増やすためには機会があるなら絶対にやるべき。まあ普通に原価を計算するだけの仕事なんですけど、サービス業界やらIT業界出身だと工場が何をしてるのかなかなかわからないし在庫管理とか原価削減とかできないんですね。またビジネスプロセスをどうしたらどれくらい原価に影響を及ぼすかという意味で工場のコンサルみたいな役割もできるはずです。どうせコスト削減ですけど。

工場経理

ファイナンシャルアナリスト
未経験からでも職に就くのは他に比べると簡単です。ビジネスセンスがありITに強く、EXCELが得意で、だれとでも話せるコミュニケーション能力があればよい。ファイナンス未経験からでもMBAでも取っとけばなれます。逆にいうとファイナンシャルアナリストをやってる人にはMBAや会計の資格を取る意味はあまりないですがいずれにせよ英語は必須。意外とUSCPA持ちはみません、というかUSCPAなんぞはキャリアとしては付加価値にならないので自己満足以外では時間を費やす意味がないと思います。仕事としては管理会計の登竜門で事業戦略の策定やら意思決定やら本人のやる気次第で無限にやることはありますし、手を抜こうと思えばルーチンワークとしていくらでも手抜きができる。現場の人と話すというのも大事で私は営業に同行とかしていましたしその経験はとても得難いものだったと思っています。

画像4


コントローラー
コントローラーというポジションは会社によって定義に幅があるようですが、米系企業であれば経理+予算管理という感じでしょうか。経理だけを指す場合もあるようですが。いわゆるアカウンタントとの違いは文字通り事業をコントロールすることで会計を意識しつつもビジネス側にも影響力は強いです。専門分野に関しては社長よりも権限がある。外資系企業子会社ならば場合によってはキャリアゴールですらあるポジションです。また個人的にやってて一番面白かった仕事です。

生命線

さて、どうやればなれるのかというとよくわかりません。

なぜならこのポジションは管理部門の要職的なポジションでコンプライアンス、監査、レポーティングを踏まえてファイナンス部門のファンダメンタルで将来の幹部や幹部候補になるくらいじゃないとその人を就ける意味がないからです。しかしながら決算を締めれることは必須でなるとしてもビジネスセンスがある経理マネージャー、(内部)監査、もしくはポテンシャルでファイナンシャルアナリストから転じるくらいなんじゃないでしょうか。経理(決算)経験というのは軽んじられがちですが実は急所でこれがないと遠からず壁にぶつかります。学生さんからFASからなれますかという、どういう思考なのか謎の質問をされましたがそんな事例は知りません。監査法人のほうがよほど可能性は高いと思います。

FP&A
仕事の忙しさや難度のわりに比較的高給だったり、参謀的な役割なせいかファイナンス職の花形かもしれません。日系企業でいうところの経営企画(経営管理)。いまは外資系企業はERPやアウトソーシングもあって経理職はコスト削減対象ということもあり、ビジネスパートナーとしてのファイナンスという意味で外資系企業ならどの会社でも重視されています。また欧米企業では将来の社長候補が一時的につくこともあるようでそういう事例は複数名知っています。もっともそれは経営者候補のファストパスとしてでファイナンスキャリアとは少し違いますが。

このポジションは社長、GM、事業部長、なんでもいいですが経営の責任者の右腕みたいなポジションなので会計に詳しいことは当然ですが将来の事業像を会計的にシミュレーションして先を読んで適切な施策を打っていくという感じでしょうか。

画像2

どうやればなれるかという意味ではMBAあたりが手っ取り早いと思います。前述のファイナンシャルアナリストとして経験を積むならばいったんはFinance Directorあたりのここら辺がゴールになってしまうかもしれません。経理業務のコスト削減のながれで経理からFP&Aに転換する事例があるのですが、知る限りではコンバージョンが上手くいくことは稀です。これは性格や本人の志向が異なるせいだと思います。あとどれくらい長くやれるかはよくわかりません。知る限り50代でFP&A一筋みたいな人はいますしポジションとしては明らかに経営に重要なので仕事がなくなることはないと思います。しかしながら実は30代でも50代でもアウトプットに差はそれほどないと思うので年齢が上がるほど生き残るのは難しいんじゃないかと思います。また管理会計だけだと業務経験としては底も浅く経理業務もできないのでつぶしが利くかは疑問です。まれにファイナンスからオペレーションのヘッドとかに転じる事例はあります。


税務 (*2023年12月26日に加筆)
FP&Aと並んで直接的にキャッシュフローにインパクトを与えられるお仕事。豆を数える仕事ではないのです。
どれだけアウトソーシングやAIがこの先ポピュラーになったとしても国内に法人がある限り必ず残るポジションであり、ある意味でファイナンス職最強のカード。税務周りができるか否かで外資系企業ファイナンスでのサバイバル率は30%は余裕で変わると思います。

会社によってカバーする範囲はピンからキリかと思いますが、基本的にはBIG4の税理士法人と協業して法人税の確定申告、消費税の申告がメインミッションになると思います。専任でやったりもしますがいわゆる季節労働なので、専任でポジションがある会社は少数かもしれません。というか繁忙期以外は税務担当は普段何をしているのだ・・?後述するTreasuryや保険周りと兼任があるかもしれない。
Taxの重要性を理解している会社であれば、普通にグローバルのプロジェクトに入ったり場合によっては法人スキームを考えたりもするようです。私は専任でやったことはありませんがオペレーションにある程度詳しかったりすると税務的な観点でのプロセス再編やそれに伴うシステム周りに入ったことはありました。あとM&Aの場合はNOLを引き継いでTax benefitを取ることが目的だったりするので外資系なら本社との協業は必須です。そういうわけでTaxと言いながら事業会社ならプロセスや英語スキルが強いといいかもしれません。もっともいわゆる申告業務がメインなのは間違いないのでたいていの場合は消費税申告の煩雑さでメンタルを病みますw
さて、どうやったらなれるかですが、やはり税務関係の資格が一番でしょうか。ただ前述のように外資系だったりグローバルのプロジェクトに入りたいなら決算周りと英語です。どうせ専門家を入れるので資格云々は事業会社ならそこまで要らないと思います。


Treasury (*2023年12月26日に加筆)
いわゆる資金繰りの人。会社によって重要度がまるで変わる仕事かと思います。外資系の日本法人で潤沢な資金がある場合なんかは普段の資金繰りを気にすることもなく稼いだ金をせっせと海外送金してたりしますが、金融ビジネスや在庫を高速で回すようなビジネスだと資金繰りの重要性は高くなります。借り入れや債券売却やらでキャッシュフローを確保するのが生命線になるので、日々の業務で銀行口座の動きを追いかけながらしょっちゅう銀行にログインして承認したり資金繰りを考えたりする羽目になります。

リモートワークのはずが銀行にログインするためのトークンを会社に忘れて取りに帰ったりすることもしばしばありますw これも専任でやったわけではないのですが、資金繰りの重要性が高くなると結果的に銀行やその関連会社(ファクタリングやリース)との付き合いが増えます。なおやったことがある人はわかると思いますがキャッシュフローフォーキャストはまあ当たりませんw 日単位でも当たらないものが数か月単位で先を見通すことなどできるわけがない。そんな当たらないのは割り切るしかないのですが、効率がよい資金調達というのはあるので会社全体の戦略の実行を支える意味で会社の業態やステージによっては極めて重要なポジションです。
なお専任でやっている人は見かけますがどういうバックグラウンドなのかはよくわかりません。昔いた会社では元銀行マンでしたがなんか偉そうにしていましたね・・


CFO
経理・経営企画・税務あたりのファイナンス周りのすべてを網羅する管理系キャリアのゴールポジション。たまに社長がクビになって一時的に社長代行したりします。どうやったらなれるかですが、経理が判ってビジネスパートナーとして経営者を支えられるが条件でしょうか。この辺になるとJDも曖昧でCFOの仕事をする人としか言いようがありません。また個人的にはどれだけ準備してようがCFOになるために最後に必要なのは運です

画像6

とはいえ、要は経理(アカウンティング)とビジネスパートナー(管理会計)の両方ができることです。割合でいえば3:7もしくは4:6くらいじゃないでしょうか。生憎とFP&A的な経験だけでCFOになるというのは無理だと思います。なぜならば経理周りの仕事はファンダメンタルですし、そこを押さえないでCFO業務をするのは無理だからです。同様に決算を締めるだけの経理部長≠CFOで、単なる経理のおじさんをCFOとは言いませんし、経理一筋の人にも同様に無理だと思います。要はどちらの方向からキャリアをスタートしようが構いませんが、自分に足りないものをどこかで意識的に取り込む必要があると思います。管理会計畑でスタートした私は経理業務の習得のために30歳の節目で事業部のコントローラー職をあえて探しました。

また、この足りないものを取り込むという観点では年齢も重要でリミットは30代前半だと思います。サラリーマンなんかは40歳になるころには自分がどこまで出世できるかは見えてるはずで、経理ならばMBAもいいと思いますし、アナリストなら会計資格を取るというのもありだと思います。足りないものをそれまでにどれだけ意識して取り込んだかが伸びしろを決めると思います。未経験分野を補うのには資格を取るというのは良いと思います。逆にすでにその職に就いてる人がその職に就くための勉強をするのは、30半ばまでにキャリアを固めるということを考えると時間の無駄です。資格や学歴というのは職を得るためのものです。まあサラリーマンとしてあがりが見えた人や勉強が趣味の人は好きにしてください。なお日系企業にあるローテーション人事というのはこと転職市場に関してはマイナスしかありません。何度か早慶あたりの40手前を面接してみても話すと何ができるわけでもない。個人的には幹部候補でもない有象無象の大卒に幅広い経験をさせる意味がないと思いますがご参考まで。

画像3

最後に大昔に部下にキャリアプランを説明するときに使った拾い物画像を載せておきましょう。今でもそんなに変わってないと思います。

画像1


おまけ(*2023年12月26日に加筆)
副業も珍しくなくなってきたので触れておきましょう。あくまで副業としての請負業なので専任でコンサルティング会社に入る場合は別の詳しい人に聞いてください。

コンサルタント
コンサルタントというのを猫も杓子も名乗るのですが、一連のファイナンス職での実務経験が10年以上ある人かつコミュニケーションスキルがあれば、いろいろな形で仕事を請け負うのは容易かと思います。知る限り常に需要がありそうなのは下記のようなパターンでしょうか。

1) 東南アジアなどへの(経理業務の)アウトソーシング関連
今となっては日本の給与が安かったりで需要はあるのかという気もしますが、東南アジアあたりにHubを作るというのは昔からの定番なのでどこかしらがそういうことをやってます。国内のグループ会社の業務の集約なんかもあったり。

2)  ERPの移行や導入
こちらもバージョンアップだったり買収企業への導入だったりで何かしらやってると思います。特にSAPはサポート切れの話があるので単価も噂では人月500万みたいな都市伝説がありました。

3)  PMI
買収した会社のファイナンスはたいていの場合は置き換えられる運命ですが一時的に外部リソースを活用するために需要があります。

4) その他
いろいろなありますが組織が不安定になったり、急な離職で回らなくなったりした場合には立て直し需要があったりします。
 
プロジェクト云々に対するスポット的な専門職の需要はそこかしこにありますが、結局のところ売れる人材であることが重要なのでいわゆる転職の際の準備とそれほど変わらないかと思います。しかしながら、気に入らなければ簡単に変えられるというのが重要なメリットなので入るのは簡単&出るのも簡単という感じでしょうか。単価は人によると思いますが、よほど強い営業力がない限りは仲介会社を使うことになり30~50%くらいはマージンが乗ってるのではないかと思います。知人でそういう起業をした人がいますが、なにかしら強いパイプがあれば単独でもできるのかもしれません。私は法人を建ててやってましたが、個人でもやってる人は見かけます。まあ評判や人脈がモノをいうのでいろんな人と良好な関係を保つのは重要かと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?