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「消えたい」 高橋和巳

虐待を受けた人々のケースと治療について紹介している本です。

どの事例も「良くなりました」で終わっていることもあり、フィクションの度合いが強いというか、筆者の憶測と「こうであってほしい」要素が多い気がしていて、読みながら気になったりもするのですが、以下の2点について印象に残ったので記事にまとめました。

・過去の記憶がない
・強い義務感について

記憶がないこと

意味が共有できないと、過去は生まれない。
虐待を受けて育つと、人とのつながりを持てないままに時間を過ごすので、意味は積み重ならず、その人の歴史は生まれず、過去は消えていく。

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人とのつながりがなければ記憶は残らない。人とのつながりとは「感情の共有」「時間の共有」のこと

彼女は人とのつながりがなかったために、過去が残らなかった。

義務を果たすだけで、その対価である人とのつながり、つまり「感情の共有」がなかったからだ。つながれなければ楽しみはない。記憶も残らず、過去も生まれない。目的のない義務だけをこなし、時間はさらさらと指の間からこぼれ落ちていった。

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感情と規範の共有は、生まれてからずっとその中で暮らしていると、あらためて意識することはない。暗黙の前提、気づかれない土台である。

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義務感について

人は社会の中で生きていくために、規範を守る義務を負う。
義務を果たすことで人とのつながりを維持し、生活を維持し、社会が維持される。そして、それは「感情の共有」をより確かなものとして、日々の人生を楽しむ土台になる

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「がんばれたぞ」と自慢し、「楽しいな」と喜び、それらが、「ああ、生きているんだな」、「生きていてよかったな」、につながり、またがんばるぞと思って人生は回転する。

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つながりによる報酬を感じられない人々は、ただ疲れていくだけになる。

しなければならないことがあれば、がんばってそれをやってきました。でも、それが終わると、気が抜けてしまって、嬉しくもない。ただ疲れて、次のことに身構えて緊張するだけでした。

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今までただ生きてきたけど、何もいいことがなかった、何の意味もなかった。そうして生きていることに疲れた。だから、「消えたい」

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以下の箇所がよく分からなかった。


幸せになるためには

人とのつながりがあれば色々解決するかのような文章が目立つので、実際にそうなのかもしれないし、筆者=高橋氏がそう思っているだけかもしれない。

以下の引用部分では
「ドーパミン、セロトニン、オキシトシンが出るような生活をしましょう」
と書いてあるように見える。

反応の乏しさから、ASDと誤診される小学生も登場する。
ASDについてはサイモン・バロン=コーエンの本が良かったので、また別の記事で紹介する予定です。 →「共感する女脳、システム化する男脳」

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