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少子化がテーマの3作品

「異次元の少子化対策」というフレーズを見て、少子化と関連した作品をいくつかの思い出したのでメモしておきます。小説、映画、ノンフィクションから。


「殺人出産」

10人産めば1人の人間を殺しても良い、という制度ができた世界。村田沙耶香さんの短編小説です。Amazonのレビューもかなり数が多く投稿されていて、それを読むだけでも結構楽しい(もちろん賛否両論です)
「蝉スナック」という昆虫食も作中に登場していて、とても今っぽいところが不気味です。

村田さんの小説「コンビニ人間」の解説にあるベビーエンドの話も印象的です(解説はkindle版には掲載されておらず、文庫版のみ収録)

 社会は多様性に向かっていると表面的には言われるが、この小説にある通り決してそうではなく、実は内向きになっている。社会が「普通」を要求する圧力は、年々強くなっているようにも思う。最後に赤ん坊が生まれて(もしくは妊娠で)終わる物語は小説に限らず非常に多く、僕は勝手にベビーエンドと内心呼んでいるのだが、社会が内向きになるにつれ、物語の世界も、ベビーエンドがさらに少しずつ増えている感触もある。

「コンビニ人間」文庫版の解説(中村文則)より

最新作の「信仰」はカルト宗教を作る話なのですが、昨年の統一教会問題が出てくるよりも前に発表されていて、時代の空気に敏感というか、タイミングがすごい作家さんだと思いました。

「ロブスター」

45日間でパートナーを見つけることができなければ動物にされます。映像のコントラストが強くて怖そうに見える予告編ですが、そんなに暗い映画ではありません。

ちなみに、「ロブスター」の由来はジョセフ・コンラッドの詩からきているそうです(原典は未確認)


「バチェラー/結婚しない男の心理」

p55
「僕が独身でいるのが好きなのは、たとえば何かを達成したときそれが自分自身の力で得たものだっていう気がするからで、そのほうがより満足した気持ちになれるんだよね」

p64
バチェラー達が感情の分離を行なっているという徴は自然とわかるものです。例をあげれば、彼らはあることについて「どう感じるのか」よりも「どう思うか」について話す傾向があります。さらに彼らにおいて共通しているのは、気持ちを表現する際により抑えた感じの単語を選ぶことです。

誰かを「大好き」なのではなく「好ましく思う」のであり、自分の趣味に「没頭する」のではなく「嗜む」のであり、旅行が「すっごく楽しかった」のではなく「まあまあだった」というようにです。

p79
彼らはあえて危険を犯す人達ではなく、単純にいつもの行動を繰り返す人達なのです。彼らの人生選択は何もしないことでなりたっています。

著者のチャールズ・ウェラーは他の訳書はないみたいなので、この本を書いたあとにどのような人生を歩んだのかは不明です。

「母親になって後悔している」(追記)

youtubeで見つけた著者インタビューです。

こちらの書籍は2022年3月に出版されたそうなのですが、図書館のホームページをみると、現時点(2023年2月)非常に多くの予約が入った状態でした。

「母親になりたくなかった」という声は、その声自体が良くないものとして断罪されてしまう、言ってはいけないような空気があると思います。それでもこのように多くの人が関心を持っているということが、たぶん何かのヒントになっている気がします。

タイミングを見て読んでみようと思ってます。

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