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『FBI心理分析官』 ロバート・K・レスラー

 連続殺人犯、プロファイリングなどの単語が一般的に流通するきっかけになった本です。『レッド・ドラゴン』の小説を書く前のトマス・ハリスが、著者の働く行動科学課を取材しており、FBIが映画制作に協力するエピソードも第11章で登場します。

初めて読んだのは中学生の頃だったと思うのですが、ちょうど厨二病のような感じで、古典のミステリー(クリスティ等)からパトリシア・コーンウェル『検視官』シリーズ、『羊たちの沈黙』など、現代の殺人事件を題材にしたものに興味が移っていきました。

>1972年のカリフォルニア州サンタ・クルーズでは、毎月のように凶悪な犯罪が報告され、遺体が発見されていた。

当時その地域で、ジョン・リンリー・フレイジャーハーバート・マリンエドモンド・エミル・ケンパーの三人の連続殺人犯がほぼ同時期に犯行を犯していたことが、のちに判明した。

p248

アメリカは物騒だなあと思ったのと、ヒッチハイカーと売春婦は殺されやすいこと、内容はあまり多くは記憶していなかったのですが、表紙はとても印象的でした(桜田晴義『花園にて』1978年)

長野県の青木村郷土美術館に所蔵されているようです。


動機、空想

多くの子供がペットと遊び、野生の動物に興味を持つが、ふつうは動物をわざと苦しめようとはしない。だがある人格異常者は、傷ついた犬がもがいて死ぬまでにどれくらい走れるかを見るために、その腹を切り裂いた。猫の足に爆竹をくくりつけて、近所の猫を何匹も不具にした者もいる。

p101

合意の上でのセックス経験があった人間は、調査対象の約半数。

殺人犯たちはみな自分が正常な性的関係を持ったことがないのを知っており、そのことに怒りを感じていた

p95

この本の中では、性衝動と暴力的な空想が結びついた結果、殺人が行われると説明されている。「1回殺してみたけど、あんまり好きじゃなかったからやめたよ」みたいな事例はなさそうだ。


どうして何度も殺すのか?

殺人を犯したあと、犯人はいろいろ反省する。
「早く殺しすぎた。もっと苦しめてから、もっと楽しんでからにすればよかった。もっと別のやり方で被害者に近づけばよかった。もっと違った暴行の方法を考えればよかった」

このように考えているうちに、次はより完璧なやり方で殺そうと思うようになる。

p46

性衝動と愛情表現がリンクしていない

ふつうの家庭では、子供は両親が抱き合ったりキスしたり手をつないたりするのを見て、父親と母親が愛情によって結ばれた関係にあることを知り、自分もいずれそういう相手を見つけるだろうと考える。

しかし殺人犯たちはこうした両親の愛情表現を見ることなく、また自分にも愛情を向けられずに育つ。したがってふつうの人がセックスを愛情表現の一部と考えるのに対し、彼らは性的な衝動を愛情とは無関係なものとしてとらえる。

p103

ウィリアム・ハイレンズ(1946年にシカゴで3人殺害)
13歳でカトリックの全寮制の学校に送られているが、その時すでに窃盗、放火の常習犯だった。

 ハイレンズは真性の多重人格者ではなかったが、かなり早い時期から異常な面を示しており、十代の前半にはそれがはっきり表れるようになっていた。彼は性的な空想にふけり、自分の部屋でひそかにナチの指導者たちの写真をスクラップブックに貼り、女性の下着をつけてそれに見入った。

p53


面接のコツ

殺人犯たちと面接し、かれらの話を聞くにあたって。

>尊敬を得るには、相手が犯した憎むべき犯罪についての個人的な感情を、押し隠すことが必要だ。死体をどんなふうに切り刻んだかを殺人犯が説明しているときにそぶりや顔の表情で嫌悪の情を表したら、相手は口をつぐんでしまう。逆に、「へえ、頭をちょんぎったのか。どうってことないよ」というようなことを言ったら、相手はやはりそれ以上話さないだろう。

>面接者の多くは、答えにくい質問をする時期が早すぎる。

p60

>犯罪者と話すにあたっては周到な準備をしていき、こちらが話をするに足る人物であることを相手に印象づけねばならない。相手のこれまでの人生や犯した犯罪について十分な知識を持っていることが、相手の信頼を得ることにつながる。

p63


無秩序型の殺人犯

1978年に事件を起こしたリチャード・トレントン・チェイスは重い精神病を患っていた。
ドラキュラのように血液を補充しなければ、毒によって自分の体内の血が粉になってしまうと信じていたので、ウサギの血を自分に注射しようとしたこともある。

被害者の口には動物の排泄物が詰めこまれていた。さらに、犯人が被害者の血液をヨーグルトの空き容器に入れ、それを飲んだ形跡があった。

p17

ケネディ上院議員を撃った、サーハン・サーハン

 彼はケネディ上院議員を殺せと命じる声を聞いたと話した。鏡をのぞいていると自分の顔が砕け、粉々になって床に落ちていくように感じたことがあるとも言った。これらの話は彼が妄想型分裂病であるという診断を裏付けている。話に夢中になると彼はサーハンがこうした、サーハンがこう感じたというように、自分を三人称で呼んだ。

p50


秩序型の殺人犯

ジョン・ウェイン・ゲイシー

 ゲイシーは高い知能を持つ頭の良い男だったが、さらに重要なのは口がうまく、言葉によって相手を操り、被害者の恐怖心や彼についての好奇心を取り除くことができた点だ。

p242

彼は最初の義父のもとでフライドチキンのチェーン店を三軒経営していたが、そのときに自分の地位を利用して若い男性従業員を誘い、セックスの相手を務めさせていた。ゲイシーとオーラルセックスをすると、相手の若者はほうびとしてゲイシーの最初の妻とセックスすることが許されたという。

p243

チャールズ・マンソン

ヒッピーたちの教祖となった経緯について。

「若い連中がどういうやつにあこがれているかわかったので、そういう人物になったんだ」と、マンソンは話した。

若者がどんな人を尊敬しているのか、若者自身より彼のほうがよくわかっていたのかもしれない。長髪でサンダルをはき、難解なことを口走り、ギターをひき、だれにもわからないような歌をつくる一風変わった人物がそれだ。

p64

ジェフリー・ダーマー

 事件を客観的に見ると、ダーマーが連続殺人犯の典型的なパターンをたどっていることはあきらかだ。こうした殺人犯は最初はおそるおそる慎重に事を運ぶ。やがてペースが早くなり、機械的、効率的に殺しはじめる。そして最後はだれも自分をつかまえることはできないと確信し、傲慢で不注意になる。

p272

エド・ケンパー

彼の被害者の検死をしたある検死官は、ケンパーがアキレス腱を切断したのは奇妙な殺人の儀式のためだと考えた。だが実際の理由は、死体硬直がそれ以上進んで遺体との性行為がやりにくくなるのを防ぐためで、ケンパーは検死官がそう考えたことを面白がっていた。

p261


おわりに

コリン・ウィルソンの『現代殺人百科』もオススメです
こちらはロシア、ヨーロッパの事例も多く扱われています。


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