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木嶋佳苗を題材にした3冊

婚活殺人の犯人として有名な木嶋佳苗氏を題材にした書籍を紹介します。
以前、自分が婚活をしたとき気になって読んだ本です。

彼女が婚活が上手だったのは「目的(=お金を引き出す)」がハッキリしていたからだったので参考にはなりませんでしたが、婚活をしようとするタイミングでこういう本を読む姿勢が、私が相手を見つけられなかった原因のような気がします。

とくに印象に残ったところ
 ・体格が小さい人をターゲットに選んでいた(安全のため)
 ・最初から金銭/セックスの話をする
 ・整形もダイエットもしない


『毒婦。』 北原みのり

 著者=北原の木嶋佳苗に対する描き方は、尊敬が見え隠れする。『鈴を転がす』ような美声、字もとにかく美しく、法廷でもこまめに服を着替えたり、足首を鍛えながら被告席に座っていたという描写など

裁判の風景は、かなりコミカルに描写されている。

p98
弁護士が佳苗に近づいて言うのが聞こえた。
「いいよ。基本、今の感じでいいと思うよ」

 佳苗はうんうん、と頷きながら、拘置所職員に手を差し出し、縄をつけられている。まるでボクサーが、リングのコーナーで水をかけられながらセコンドの励まされている風だ。

p76
 佳苗が演じる女はとても分かりやすい。介護の仕事をしていて、料理学校に通い、ピアノが上手な私、だ。世話を厭わず、家事が得意で、適度に芸術性がある女なんて、確かにウケがよさそうじゃないか。

p80
 安藤さんは佳苗に「京都旅行に行きたい」と話していた。それに対し佳苗は「お年を考えたら、最初で最後の旅行ですね」「80歳の男性と付き合う人は少ないと思います」「現実的に性的関係を持てる80歳の男性は少ないと思います」と丁寧な口調で、しかし諭すように繰り返し書いている。

p182
佳苗の周りの男性が亡くなり始めるのは、父親が亡くなった後からだ。


『別海から来た女』 佐野眞一

佐野眞一の描き方は「毒婦。」とは大きく異なる。
どちらかというと憎しみと侮蔑がベースにあり、この犯罪には情念が見当たらない、彼女は幼少時より嘘つきで盗みを働いたのでサイコパスに違いないと断じている。

p33
木嶋の幼少期は、特別に貧しい環境にあったとも、ネグレクトや性的虐待といった激しい精神的ダメージを受けたとも思えない。手記ではそれをあえて隠したとも考えられなくもないが、もしそうだとしても、それを殺人に結びつける理由としてあげるのは、著しく説得力を欠く。

そう考えれば、生来のサイコパス的人格が、何一つ是正されないまま育成していったととらえたほうが自然である。

p90
 木嶋佳苗の殺意の "沸点" は異様に低い。木嶋の体を流れる血液は十度以下で沸騰するのではないか。

人間の体温は36℃なのだが、それを無視して「10℃で沸騰」と書いてしまうほど激しい感情が著者(=佐野)にはあるようだ。

p235
 木嶋は愛人クラブでは、有名企業の役員や、学者、医師、弁護士など社会的地位が高い人が主な顧客だと言った。それを聞いて、「また出来の悪いハーレクイン・ロマンスが始まった。これだからデブでブスのスカーレット・オハラは困る」と心中ひそかに毒づいた。

父親が亡くなった原因は自動車事故だったが、警察は詳しく調査しなかったらしく自殺と他殺の可能性も仄めかされている。


『黄泉醜女』 花房観音

春海さくら(=木嶋佳苗)の周囲の女性たちを主人公にしたオムニバス小説。料理教室の同級生、被害者の姉、犯人の母親など

同性はそういうの見抜いてしまうじゃないですか。褒め言葉の裏にあるかけひきと感情を。
 けど男性は、褒められると単純に嬉しいですよね。だからすぐに、騙される。

32%

とくに彼女たちの「嫉妬」が主題になっている。

著者のインタビュー↓
https://ddnavi.com/news/261785/a/

物事を客観視できない人の書く文章は、ものすごくクサいんです。木嶋の書いたものが、まさにそれに当たります。

犯人=木嶋の、あまりにも現実を直視しない姿勢は『天人五衰』の絹江を連想したが、それでもずっと人を惹きつけて獄中結婚までしているのだからすごい。


おわりに

殺害した/しない、性行為をする/しない
などの対応に一貫性はなく、睡眠薬を3回飲ませた男性もいる。いろんなことが面倒くさくなり殺した方がラクだからそうしたようにも見える

7000万円もらったあと別の人から400万円受け取ったときは、お金を手に入れたことより「少ない」ことがストレスだったろうと邪推してしまった。
同じように演技(=労働)したのに報酬が減るとは何事かと。

10年付き合った本命男性とは金銭のやりとりはなく、彼からのプロポーズは断っていた。そして「吉川桜」という偽名しか教えていなかった。


最後にもう1つ。彼女が太り続けたことについて
食べることに熱心で、幼少期からずっと巨体が維持されていたのは「必要だから太っていた」のではないか。

『黄泉醜女』でも少しだけ言及されていたが、過剰に性的なふるまいも含めて、私も彼女は幼いとき性被害を受けていた可能性があると思う。

 レイプの犠牲者のある女性は、フェリッティにこう語った。「太り過ぎの人は目をつけられません。私も狙われないようにしている必要があるのです」

ベッセル・ヴァン・デア・コーク「身体はトラウマを記録する」


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