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おぞましい都市に振り回される男たちのハードボイルド「シルバー事件25区」「matchmaker」編

モンブランは好き? 俺は好き。
「matchmaker」編をプレイの際は是非モンブランをお供にどうぞ。

というわけで今回は「matchmaker」編について。

「matchmaker」編では凶犯課と敵対していた郵事連の調整課の人間たちが主役となる。担当ライターやイラスト担当も違うようで、「correctness」編よりかはいくぶんかは理路整然としたストーリーとなっている。身も蓋も無い言い方をすれば、「correctness」編よりかは話の展開はわかりやすい。

スクショを見てもらえればわかるが、イラストの荒いタッチやキャラ造詣など「correctness」編とは何から何まで作風がガラリと変わっている。

勝手に利用されるジャブロー、哀れ

一応、凶犯課やジャブローの名前も出てくるが直接カチ合うわけではない。「correctness」編でも遭遇しなかったしね。ただ、ジャブローたちがしでかした裏で何が起こっていたのかが語られたりするのも特徴。あとおなじみトキオも顔見せしてくれるよ。

24区凶犯課のサクラとの接触もある

また「matchmaker」編は「correctness」編と比べると前作の「シルバー事件」との繋がりが強く表れている上、話の運び方が「correctness」編クリアを前提としている。「matchmaker」編をプレイするのであれば、まずはこの2つのエピソードをクリアしてからをオススメする。

前作主人公デカチンとニアミスしてたツキ

殺人郵便屋さんのみなさん

「correctness」編ではかなりイカれた組織とされた郵事連だったが、「matchmaker」編ではその郵事連の「地域調整課」に所属する者たちを主役に据えている。イカれた組織に属する人間もまたイカれてる、というわけではなく、むしろ「matchmaker」編は組織や都市といった巨大な存在に人生を振り回されている者たちの哀愁や悲哀といったものテーマとしている。それは25区の在り方だったり、あるいはカムイの存在だったり、またあるいは生きることでついて回る普遍的な苦悩だったりする。

というかイカレ具合なら凶犯課のほうがずっとぶっ飛んでることがわかる

そんな地域調整課の真面目に職務に殉ずる皆さんがこちら。

オオサト:画面左側で銃を撃ってる男。調整課の若手。後先考えずに銃をぶっぱなしたりするくらい若手。物語の途中で自分はシェルターキッズだったことを明かす。ということは……
得物はハンドガン。モンブラン大好き。

ツキ:画面右側のナイフ持ってるヒゲ。オオサトの尻拭い担当の苦労人。
実質主人公かつヒロイン。得物はナイフ。シブいように見えて実はモンブラン大好きだったり扱いがピーチ姫だったり騙されたりと萌えキャラ。

ヤブカワ:地域調整課の良心で善人。こういう良い人は25区では生き辛い。

また他にも別チームとしてデスペラードみたいな得物のミツモト、常識人だけどステゴロというある意味非常識なナンゴウ、そして課長で皆の上司であるキリュウとで、地域調整課のイカしたメンバーが揃う。

課長のキリュウ。いかつい風貌だけど筋を通す良識人

調整開始

全体的に須田剛一のノリと勢いで派手にドライブしていた「correctness」編と対照的に、じっとりとした湿度かつハードボイルドな雰囲気で、かつある程度理性的な語り口で物語が進んでいく。

「correctness」編の裏側でどのようなことが起きていたのかが物語の中で描かれていくが、「correctness」編の全貌が明らかになるということは全然無くて、どちらかというと「シルバー事件25区」という物語全体に対するスピンオフといった面が強い。おぞましい都市と「カムイ」の存在に振り回され、それでも最後の意地を通してみせる名も無き人々の物語として見たほうが良い。

「correctness」編と同じくタワマンで発見された変死体から端を発する一連の事件にまたしても「カムイ」が重要なファクターとして及んでくる。
だが、事件解決のためであれば秩序さえも破壊しかねない凶犯課と違い、地域調整課は秩序を保つことを責務としており、そのためにこの都市の異常の源の一つとも言える「カムイ」に対し対処しあぐねている面がある。

そのためか、「matchmaker」編はどこか「correctness」編のような一種の意味不明ながらも爽快感のようなものはなく、たとえどれだけ地域調整課の在り方やその面々がハジケていても、どこか登場人物たちのフラストレーションや不完全燃焼感のようなものが奥底に漂っているように思えた。

あくまで地域調整課は組織と都市への貢献を求められる立場であり、事件解決と犯人逮捕のためなら手段を問わない凶犯課との対称性が際立っている。

己の職責と矜持を貫くために奔走する男たちと、それを容易く呑み込んで見せる25区という管理都市の吐き気を催すほどの悪徳さを語るこの「matchmaker」編は「シルバー事件」の通奏低音となるものを改めて引き締めたんじゃないだろうか。

「シルバー事件25区」の3つのシナリオの中では、この「matchmaker」編が一番好きです。


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