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人よ、竜の手を引いて

 澄んだ水面を思わせる青い瞳。
 その奥に湛える深く透き通った静謐な気配を、今でも夢に見る。目覚めた後も、瞼の裏に焼き付いて忘れられない。
「E-03-03『ディアクリア』」
 無論、それは幻だ。海を統べ、陸を制し、空に君臨した彼ら。遥か昔に空の果てより来たり、人類に英知を与え導いた彼らはもういない。
 人は、竜に捨てられた。
 人竜乖離と呼ばれた星降る夜。全ての竜はふと一斉に夜空を見上げ、僅かに身を震わせたかと思うと訳も告げずに空へ旅立った。善き隣人であり守護者でもあった存在の喪失。大いに嘆き、祈っても彼らは帰らず、人々は未だ夜になると星を仰いで竜を想い、涙を流す。
 しかし、人はそこで終われない。
「F-01-01『創樹界の疑似竜』」
 憤りにも似た、悲嘆の激情。
 なぜ、我らを置いて去ったのか。
 諦めきれない望み。疑問。
 本当に、我らを見限ったのか。
 彼らを探し出し真意を問う。
 それが竜に魅せられた、種としての総意。
 超規模的一致団結は魔導技術の研鑽を促し、人間同士の諍いを極小化し、逆に集団としての力を増大させた。爆発的な速度で進められる人知、史上類を見ない繁栄。集約された富と知識は惜しげもなく、更なる進歩、その先へ。
「O-07-13『数多の瞳』」
 竜に追いすがるため、竜を超える奇跡を実現させる。
 限定領域内における時空間の歪曲、極限に過酷な環境への強制的適応、死地にて無数に枝分かれする進化の芽……庇護者を失った私達は、皮肉にも以前よりよほど強靭な種へと成長し──今、

「以上3名を人類の代表に任ず。彼らを探し出し、対話し、帰還せよ」

俺、オクルス・アルトゥス……否、『数多の瞳』は10年越しの誓いにようやく手をかけようとしていた。
目前に広がる黒色の巨大アーク放電、その内側はかつて竜達が去った場所へ、今より繋がる。

「転移領域の接続時間は各自最大0.001秒、幸運を祈る」

目指すは最果て、竜の空。


【続く】

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ビーバーの尻尾

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地獄の仏、闇に差す光明、暗夜の火、干天の慈雨、お前ッッッ!
ガッチガチに殺し合ったり、殴り合ったり、ド派手なアクションをする系小説で、面白いものを書きたいビバ。より具体的なジャンルまで言うと異能力バトルものが好きだビバ。