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様々な企業のバリューに含まれる「早さ」の価値を言語化してみた話


なんで書いたの?

  • なにかアウトプットを残そうと思った

  • PdMとしてのお作法やノウハウは探せばすぐ見つかるしなぁ

  • 誰が書いても本質的には同じことで、今更自分が書く意味はない

  • 少し抽象度を上げるのはどうか? から、バリューについて考えてみた

  • 素晴らしいMVVの存在を知ることができる記事はあるけど、具体的な価値について言及する記事ってあまりないのでは?

  • バリューについて何か文章を書くとしたら、中でも、スタートアップやベンチャーはもちろん、上場企業でも触れられていることが多いであろうスピードに注目した

  • なかでも個人的に好きな言葉は、ユーザベースの「スピードで驚かす」

  • 「え、もう終わったの!?」 って言ってもらえたときの満足感・高揚感を想起してニヤッとしてしまう

ということで、

ここからは「早さ」の価値や逆に何をトレードオフしている
のかといった考察です。

「早さ」や「スピード」が含まれるバリューの例

SmartHR
早いほうがカッコイイ

ソフトバンク
「スピード」大至急って、楽しい。

ALPHABET INC.
遅いより速いほうがいい。

ファーストリテイリング
何事もスピーディに実行します(行動規範)

Meta
Move Fast

UZABASE
スピードで驚かす

「早さの価値」をChatGPTに聞くと?

「早さ」は、現代のビジネスにおいて非常に重要な価値です。以下に、早さの価値を言語化していきます。

競争力の向上:
市場がますます競争激化している中で、顧客が求めるサービスや製品を提供するためには、スピードが求められます。早いビジネスプロセスや迅速な対応ができる企業は、競合他社に比べて優位に立つことができます。

顧客満足度の向上:
顧客が何かを求めているときに、それを迅速に提供することは、顧客満足度を高める上で非常に重要です。顧客が迅速に問い合わせに対応してもらったり、商品やサービスを速やかに提供してもらったりすることで、顧客は企業に対して信頼を持ち、忠誠心を抱くようになります。

コスト削減:
早いビジネスプロセスや迅速な対応ができることで、企業はコスト削減を実現することができます。例えば、製品の生産ラインが早く動くことで、生産能力を高め、結果として生産コストを下げることができます。

新規事業の創出:
早さは、新しいビジネスアイデアの実現にも重要です。市場動向を素早く捉え、それに応じた新しい製品やサービスを迅速に開発することができる企業は、新規事業の創出につながります。

組織の生産性の向上:
早さは、組織の生産性を向上させることができます。作業やプロジェクトを迅速に進めることで、従業員のモチベーションを高め、生産性を向上させることができます。

以上のように、「早さ」は、企業にとって非常に重要な価値です。企業が迅速に変化に対応し、顧客や市場の要求に応えることができるようになることで、競争優位を得ることができます。

一見ごもっともな内容のようにも見えますが。果たしてこの粒度の情報で、組織の誰もが意思決定や取捨選択において高いレベルで共通の価値観を持てるでしょうか。

これらの「早さ」には異なる多様な「早さ」がいっしょくたになっています。なんで早いとコスト削減になるんでしょうか?

たとえば物理的な生産において具体的な早さとは、同じアウトプットをより早く再現するということですが、ただ早く再現されるだけなので必要な素材もエネルギーも変わりません。

早さでコスト削減を達成するとしたらたとえば

  1. 生産プロセスにおいて人が立ち会う必要がありその人的コストが削減される

  2. 稼働時間あたり固定でかかる照明代や空調代が削減される

  3. 一定温度以上でないと十分な品質が得られないといった前提条件があり、プロセスの早さを向上することで条件維持のためのコストが削減される

といった側面になりそうです。

そもそも生産効率が上がれば良いので、一連のプロセスを早く回せるようにする以外にも、プロセスごとのスピードは変えずに各プロセスのアウトプット量を増やす方法でも実現できます。

そういう意味では「規模を変えずに生産効率を上げることで、規模に対する投資とそれに伴うリスクを抑えることが可能になる」という価値はありそうです。

このように、早さの価値ってわかっているようで実は抽象度が結構高いものだと思います。「我が社の桶事業が儲かるには、もっと風を吹かせることが重要である」と言っているのと同じように、この抽象度で組織として高い次元での共通認識を持つことは、なかなか難易度としては高いのではないでしょうか。

「風が吹けば桶屋が儲かる」
ある事象の発生により、一見すると全く関係がないと思われる場所・物事に影響が及ぶことの喩えである日本語のことわざ。

風が吹くと土ぼこりがたち、それが目に入ることで盲人が増える。
盲人は三味線生計を立てようとするので三味線の需要が増える。
三味線にはの皮が張られることで猫が減る。
猫が減るとねずみが増えて、ねずみにかじられる桶が増えることから、
桶を売る桶屋が儲かって喜ぶ。

じゃあ、どうする?


1人1人の解像度を高めるうえで重要なことは

  • 早さの期待値の違いを認識する

  • それらを意識的に使い分ける

  • 使い分けた結果を振り返って選択の精度を上げる

ことだと思います。

また組織としての解像度を高めるうえで重要なことは

  • それぞれの解像度を相互に理解する

  • それぞれの期待値を事前にできるだけ具体的に認識すり合わせしておく

  • 結果を振り返って認識のズレ、使い分けの精度、期待値設定の精度を上げる

ことだと思います。

早さの「3つの期待値」


  1. 時間軸としての早さ

  2. 物理的な処理能力としての早さ

  3. 2の物理的な処理能力によって達成される、1の時間軸としての早さ


1. 時間軸としての早さ

時間的な早さへの期待値なので、達成するうえでのプロセスに制約はありません。

達成状態の例
半年かかるプロジェクトを4ヶ月で終わらせるといったこと

 

具体的な手法の例
・スコープを削る
・仕様を変える
・ソースコードの拡張性や保守性の低下を許容する
・リソースを増強する
・全部ないし一部に対して既成の完成された代替品に置き換える

 

2. 物理的な処理能力としての早さ

1とは逆に、期間的な制約はありません。
物理的な処理能力としての早さが上がることが、必ずしも期間的な早さとは紐付かないということを認識できます。

達成状態の例
2hかかる作業を1hで終わらせるといったこと

 

具体的な手法の例
・タイピングの速度と精度を上げる
・ショートカットやツールの便利な機能を活用して無駄な時間を削減する
・ネット環境を改善してローディングなどのタイムロスを削減する
・繰り返し発生する作業を自動化して非同期で完了させる
・類似事例や過去の成果物を真似たり参照する
・優先順位を適切に設定して確認や承認などのタイムロスを削減する

 

3. 2の物理的な処理能力によって達成される、1の時間軸としての早さ

2の物理的な処理能力の向上によって、期間的な早さを達成することです。
重要なのは、2の処理能力としての早さは手段であり、最も重要な条件は1の期間的な早さの達成にあるという関係性です。(とはいえ達成において2の処理能力としての早さは必須です。)

達成状態の例
スコープも削れないし、リソースも拡充できないし、これ以上残業も増やせないけど、スケジュールは巻かないといけない!という状況下で、メンバー1人1人がタスクの進め方などを見直したりスキルアップすることでPJを達成する など。

具体例
・スコープや仕様を変えずに、個々の作業効率の向上によってより早くプロジェクトを実現する
・それぞれの担当業務の習熟度を向上させることで、同じ成果をより短期間で達成する
・関連のある他領域の業務理解を横断的に高めて他者の作業効率を向上させることで、より早くプロジェクトを実現する

実践的な話

結局、実践的な話をすれば、 1 も 2 も 3 も常に細かいバランス感で使い分けをする必要があります。そしてこれは誰もが無意識的に使い分けているものだと思います。

ただ上記を構造的かつ具体的に理解することで、個人においては場面ごとでの選択や使い分けをより適切に行えるようになったり、チームにおいてはそれぞれの期待役割や期待値をより詳細にすり合わせられるようになり、成果の達成確度を高めたり振り返りの質を高めることができるようになります。

バリューとしての早さの価値を考える


ここから本題の「バリューとしての早さへの価値」についての考察です。

事業における早さの価値として「競合優位性」は筆頭だと思います。
一段抽象度を上げれば「成功確度が高まる」といったところでしょうか。

ただ、競合優位性は必ずしも毎回誰もが得られるものではなく、あくまでも結果論だと思います。たとえば市場に早く投下しすぎて他社に真似され、逆に市場を持っていかれるリスクだって0ではありません。

そこで、早さによる競合優位性はどのように生み出されるかを考えてみると、最終的に「PDCA」に行き着きました。

価値を言語化すると「小さく、早く失敗する」です。

より具体的に表現すると「ハズレを1つでも多く潰し、当たりをできるだけ絞る、そのうえで大きく投資する。」です。

攻めの動きを取ることが多い新規事業開発や新機能開発においてはイメージがしやすいと思いますが、守りとなるCSや運用保守においてはどうリンクするかも考えてみました。

CSにおける小さく失敗するとは何でしょうか。

現場における業務においては、発生する様々なケースに対してどのようなQCDのバランスで対処するのが最適かを、継続的に検証しアップデートすることで再現性の高いタスクに対して効率化しつつ品質向上を図ることができます。

戦略的観点でも、その現場の取り組みで生み出された人的リソースの余力を活用し、新たな取り組みの検討や検証を推進されることが期待できます。当然このフェーズにおいてもより小さく早く失敗を積み上げることで成功確度を高められます。

早さとのトレードオフになるもの

注意したいのは、早さを得るうえで何をトレードオフするのか共通認識を持つことです。

だいたいの「早さ」の前提として「アウトプットのクオリティや量は変わらないこと」という期待値が込められていると思います。

ここもきちんと深掘って、どの程度までの維持を求めるか、あるいはどの程度までのクオリティの低下であれば許容でき、期間的な早さとトレードオフする価値があると定義するか まで共通認識を持つことはとても大事です。

スピードが上がればPDCAを多くまわせるはずですが、期間的な早さも求めれば当然PDCAをまわせる回数が減ってしまいます。
「早く動くこと」と「短期間でやること」を混同しないことは重要です。

クオリティによるトレードオフとは何かをより具体的にすり合わせるとしたら、「思考」と「アクション」の分解がわかりやすいと思います。

思考はさらに「インプット」と「考察」に分解します。
アクションは「アウトプット」と「フィードバック&修正」に分解します。

期待する期間的な早さに対してどこをどの程度までトレードオフするのか、この粒度で認識をすり合わせておければ、最終的なアウトプットの期待値のズレを回避したり、振り返りで得られる学びもより多くなると思います。

事業的な検証におけるクオリティとはUIやデザイン的な話ではない


(このあたりも大いに個人的な考えになるのであしからず)

クオリティとはUIなど表層的な面で整っているかといった話ではなく、重要なのは「体験」です。
体験を作るうえで重要なことは「価値の見極め」です。
価値の見極めで重要なことは「イシューの質」です。
イシューの質で重要なことは「ペイン・ゲインの総量」であり、
ペイン・ゲインの総量とは「N数 × 深度 × 頻度」だと思います。

さらに、いずれも重要ですがそのなかでも優先順位をつけるとしたら、N数 > 頻度 > 深度 だと思います。
経済活動としての持続可能性を考えると、市場規模としてのポテンシャルは必須条件です。
またいくら対象数が多くても、人生に1回しか出会うことのないペインでは、これも事業化の難易度は高そう。
深度については、ある程度のラインを満たしていてN数が多く頻度も高ければ、一定のアクティブユーザーを獲得できそうで、広告収益型の無料サービスとして活路を模索するなど、事業化の可能性は見い出せそうです。

まとめ


だいぶ長くなりましたが結論をまとめると、

  • 早さって、なんとなく価値があることはみんな認識してるけど、多分いろんな期待値が込められてるよね

  • その期待値は、3つに分類できそうですよ

  • 本題である「バリューにおける早さの価値」については、より小さく早く失敗すること で 成功確度を高めること じゃなかろうか

  • 当然トレードオフも必要なことは忘れないでね

  • 組織やチームでトレードオフの解像度も揃えておくとみんなハッピーになれそうだ

というお話でした。

前提や説明を端折っている部分も多々ありますし、派生して議論できるところも多々あると思いますが、これをきっかけにそういった議論が生まれたとしたらそれはとても素晴らしいことだなと思います。

最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございます…!!!


余談

力尽きて文章化まで落とし込めなかった考察たちも、せっかくなので置いときます。

なぜ小さく早く失敗することがそんなにも有効か

  • 他社の成功事例そのものは実はそこまであてにならない

  • 変数が多いからそのまま真似てもだいたいは再現性がない

  • 参考になるとしたらポイントごとでの要因を適切に取り入れられるかが重要

  • その選択も正解だったかどうかは実際に検証してみてわかること

  • さらに全く新しいことをやろうとしてるなら前例もない、あくまでも類似の参考値

  • 自社で検証したファクトや過去との差分がとても重要になってくる

スタートアップが大企業に対してスピードで競争優位性を出しやすい背景

  • 事業規模が小さければリスクも小さくすむ

  • 同じリスクでも規模が大きくなれば小さいリスクでは済まなくなる

  • だからどうしても慎重に動かざるを得ない

  • 結果として大企業はスピードが上げづらい(実際上げてはいるがどうしても限界がある)

N数 > 頻度 > 深度 についての考察

  • 余談としてここの構造が、社会課題が生まれる背景とリンクしていると思う

  • ごく一部の人において深度の高い課題は経済合理性を構築しづらい、企業としても参入ハードルが高かったりうまみがない、結果として経済活動から放置されてしまう

  • 資本主義社会なので経済活動が成立しないと負の連鎖に陥る

  • N数も多いし頻度も高いのに存在する社会課題もなかにはある

  • そのケースでは、一部の誰かにとってはそのほうが得する構造になってる可能性、かつ維持を継続させられるだけの権限を担っている可能性も

  • 本質的な解決策を模索するとしたら、そこの代替策が重要になるのでは とか、日々考え中・・・

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