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死にたくなる毎日だった1社目の日々 4

ミスはしない。決意した理由は昇進でもなく保身の為。

上司が生産技術部の若手と話しているのが見える。
時折りこちらを指差していた。

(また悪口を話しているな、飽きもせずに…)

この頃にはもう社内で信用できる人間は1人もいなかった。上司もその上の上司も、同僚も先輩も後輩も他部署の社員も。
1人だった。つらかった。でも生きる為に働かなければならない。
息継ぎのように過ぎる休日、心は休まらない。

チラついていた死が常に視野に収まるようになっていた。

確実に楽に苦しくなく。
どうやって死ぬがいいかな?
処理はさせたくない。

色々考えた結果、お風呂に浸かりながら手首を切ることにした。失血狙いである。

親が沸かした風呂を追い焚きして温める。その間に部屋のカッターを持って服を脱ぎお湯に浸かる。
あとは身体を十分に温めるだけ。

お湯に浸かってる間色々なことを思い出した。

小さい頃近所の公園に行き父親の膝の上で一緒にブランコに乗ったこと。
万博の人混みが嫌で兄と父とは別に母親と一緒にポケモンセンターへ行ったこと。
学生の頃厳しかった剣道教室で厳しい練習に耐えて試合に勝ったこと。
社会人になってからデートに行った女の子のこと。

たくさん愛されていたことを思い出し、楽しかった思い出も振り返った。こんなにいい人生を送れてよかった。自分の顔が濡れているのが髪から滴るお湯ではなく涙であること。両親に申し訳ない気持ちはあったが後悔はなかった。
カッターを手首に当てる。その瞬間刃物の冷たさが、一気に現実を呼び戻す。引けば激痛間違いなし。

死ぬ気はどこかに行ってしまった。それと同時に痛みを我慢することもできない自分が情けなかった。

「ちょっとの我慢もできないなんて」

悔しかった。

その後押し入れのノブ?に中高使ったボロボロのベルトを巻きつけ輪っかを作り首を括った。

身体の力を抜きぶら下げる。
ベルトが喉仏に食い込む。
(痛い、苦しい、死にたくない)
自分はまだ行きたかったのだ、ただもう止めようがない。

その瞬間ベルトがちぎれて体が崩れる。

しばらく天井を見つめていた。

30分くらい経った後に思った。

(なんで仕事で死ぬまで思い込んでるんだろう。)

人生はここから好転したような気がした。

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