『学習者に「寄り添いたい」と思っている日本語教師の皆様に伝えたい「臨機応変」というフィルターのこと」
私が日本語教師になって、まだ2年くらいの時、2人の特徴的な学習者さんに出会いました。
一人は男性の●さん。
5人くらいの小さなグループレッスンの中の一人の学習者。
複数の先生が担当するので、クラスの中のことをあとで報告し合います。
「ほんと、●こだわり強くて難しいよね。」
「●さんの番になったら、みんなも「あ〜、まただ〜。」って感じで、なんか微妙な感じになるんですよね〜。」
など、●さんが「問題児」のような感想が飛び交います。
私も何度かこのクラスに入って教えたことがあるのですが、他の先生方が言われている「事実」は、わかります。
でも、その全部の情報を外して、つまり、この●さんへの「フィルターを外して」授業をしてみました。
そうすると、終始
「もどかしそう」な
「人と馴染めてない疎外感」や
「不安そう」な様子が見て取れました。
私はいたたまれなくなり、
●さんの様子を集中して見るようにしました。
そして、少しでも●さんが何か言いたそうにしてたら、
「●さん、今、何かいいたいですね?どうぞ。」
と、声をかけたり、
「●さん、これ、むずかしいですね。ゆっくり、ゆっくり大丈夫ですよ。」と、焦りを取り除いたり、
そして、他の不満を持ってそうな学習者の皆さんにも
「みなさん、ちょっと待って下さいね。今●さんが何かいいたいので、少しだけ待って下さい。」
と伝え、その場の空気も整えました。
そして、答えがみんなに笑われてしまう時もよくありましたが、
「ユニークで、素晴らしい答えですね!」
と、肯定しか言いませんでした。
「頑張って作りましたね。その気持ちが素晴らしい。」
と、彼を承認するところを、毎回探しました。
そうすると、他の学習者達も
「この先生、必死だ、、、。」
と分かったのか、次第に、待てるようになりました。
もちろん他の学習者も同じお金を払っています。
だから、この●さんに向き合っている以外の時間は、思いっきり彼らに合わせます。例え、●さんが少々疎外感を味わっても、「順番」に、「フェア」に、授業全体を振り返って見てみると、みんなに同じように「楽しく学べる時間があった」という風になる、、、ように自分軸を作って向き合っていました。
そしてこの●さんですが、後で知ったのですが、自閉症が強い方だったとのこと。なので、「書く」が難しく、「読む」も難しく、「話す」も特徴的な話し方をし、「忘れる」ことを防ぐのが難しい、という特徴がありました。
それを知って尚更、私は私に
「臨機応変フィルター」をつける
ことに努めました。
彼にとって居心地のいい時間にしたい、と、そういう思いで向き合いました。
その●さんは、その後、私がどの学校に勤めても、そのあとフリーになっても、いつも私が居るところに来て、勉強をしてくれるようになりました。
10年以上です。
そして、レッスン料を払ってくれるときは、必ず、毎回、両手を添えて、頭を深々と下げて
「これは、払う価値のあるお金です。本当にありがとうございました。」
と、言ってくれました。
私にとって、「日本語教師とは」を教えてくれた最高の学習者さんでした。
また、この生徒さんより、もっと「忘れる」が強い生徒さんがいました。
その生徒さんは、
『あ』の1文字を、5分後には全く忘れてしまう、という特徴のある学習者さん』
でした。そして、この状態が1週間、毎日繰り返されます、、、。
こんな私の体験と実話と向き合い方を、「臨機応変」というポジティブフィルターという言葉に落とし込んでワークセミナーをさせていただきます。
『学習者に寄り添いたい』という世界中の日本語教師の皆様が、
世界中の特徴有る学習者の皆様に向き合うに必須な条件、それが
「臨機応変」です。
固定概念は、人の可能性を狭め、自信を無くし、傷つけるフィルターです。
臨機応変は、その「固定概念フィルター」を外し、世界中の人達の可能性を広げ、自信を付け、心に安定をもたらすポジティブフィルターです。
皆さんは、どちらのフィルターを手にしたいですか?!
はぁとinternational
Chihomi
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