2021年8月4日(水) 向こうでなら生きていけるの
確か昔読んだ蟲師の中のエピソードだったと思うんだけど、
ある村の女の子が蟲に憑りつかれて正気を失ってしまう。
彼女の幼馴染とギンコが女の子を助けるけれど、
女の子は人間として生きなければいけない果てしなく膨大な時間に戸惑い、
最後は自ら再び蟲に憑りつかれることを選ぶ。
読んだのは随分昔のはずなんだけど、最近になって「果てしなく膨大な時間に足がすくむ」の一文が不意に心に浮かび上がってきて、何度も何度も胸を揺さぶってくる。
この先の自分自身があまりにも不確定で、それでいて人生はあまりにも長い。
その膨大な時間とあてにならない自分自身があまりにも頼りなくて、この世界から逃げ出したくなる。
ただその日を生きるだけの「向こう」でなら生きていける、と自分が自分であることを放棄しまったのも、悲しいけれど、それだけ不安のない世界に行けた彼女を羨ましく思う。
初めて読んだあの頃はぴんと来なかったけど、この話は自分にとってとても大切だなぁと思う。
いや覚えているんだから幼い心のどこかにひっかかっていたのかもしれないな。
別にどうにかなるわけでも、自分の心にしっくりくるような表現を見つけると、なんだか胸のすく思いがするというか、ちょっと慰められるような気がする。
目が覚めたら昨日までと全く同じ現実が待っているような、膨大な時間に足がすくみつつ、
自分自身を失ってでも不安のない道を選んだ女の子を思いつつ、
今日もなんとなく過ごしています。
ここまで読んでくれたあなたがだいすき!