ケニア旅行 -アンボセリ編①-
ケニア旅行 ―ナイロビ編ー からの続きです。
迎えた3日目の朝。
8時にホテルを出発する予定だったこの日、
なぜか4時に目が覚める。
時間を持て余してバルコニーに出てみるも、外はまだ真っ暗。
それもそのはず。
後に、この時深夜3時だったことが判明。
(ドバイとナイロビに1時間の時差があることを忘れていた。)
ひとりで優雅に朝食をとり、
読書をしているとあっという間に集合時間。
8時。
ホテルに迎えに来たのび太&ピーターさんと一緒に出発。
いまにも雨が降り出しそうなあいにくの曇天。
ナイロビ市内。
市内のいたるところにコウノトリ。
「幸せを運ぶ鳥をこんなにたくさん見れてラッキーね。」とはしゃぐママに、「いや・・・こっちではコウノトリは日本でいうカラスみたいな存在です。」と水を差すのび太。
そしてやっぱり雨が・・・。
何を隠そう、私が行った5月、ケニアは大雨季。
最強の晴れ女パワーも、ここケニアでは力及ばず、か・・・
と思っていたら晴れてきた。
のび太とはここで別れ、
ここからは、ピーターさんと両親と私の4人旅。
今日の目的地アンボセリまでは車で約4時間。
走り出して30分も経たないうちに、飽きるママ。
「何か面白い話をしろ」だの、
「あとどれくらいで到着するのか」だの、
あまりにも煩いので、パパと私は狸寝入り。
仕方なく、運転中のピーターさんに話しかけるママ。
「ねぇ、マサイ族の生き甲斐って何なのかしらね??」
「マサイ族にとって、それは自分の牛を持つことです。自分の牛を持って初めて、1人前と認められるんです。」
「牛ねぇ・・・。牛が生き甲斐かぁ・・・。それで彼らは果たして幸せなのかしらね??」
余計なお世話である。
ー1時間経過ー
ここは都会的なマサイ族が住むところで、写真撮影禁止区域だという。
写真を撮っていると激昂した住民が車めがけて飛び掛ってきたりするので危険だそうな。そう言われると撮りたくなるのが人間の性。
ーさらに車で走ること1時間ー
タンザニア国境の町、マナンガでトイレ休憩。
ママたちがお土産屋を冷やかしている間、私はひとりで民家の周辺を散策。
笑顔で「キャンディーおくれ!」と私に群がる子どもたち。
1人にあげると大変なことになるのは容易に想像がつくので、
「ごめんね、持ってないの。」と素っ気なく答えると、
「じゃあボールペンおくれ!」と要求物のランクが上がる。
「ボールペンもない。」と答えると、
「じゃあ金くれ!」
(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル
両親の元へ戻ると、お土産やで民芸品に目が釘付けになっているママ。
「あれ欲しい。」と指差す先には、どう見ても誰も買わないような悪趣味な首飾り。
「あんなの買ってどうするのよ。どんな服にも合わないよ。」と説得するも聞く耳持たず。
さらに値段を聞くと60㌦だという。
はっきり言って5㌦でも欲しくない。
ごねるママを無理やり車に押し込み、出発。
すると、その先のガソリンスタンドで、同じモノが老婆たちの手によって
5㌦で売られているではないか。
ママ、全然似合っていない首飾りを嬉々として購入。
ところがこれが引き金となり、次々に押し寄せてくる物売りたち。
皆、生きていくために必死である。
さて、ここからは舗装されていない道を2時間。
大きな蟻塚が点在する赤土の道を走り抜ける。
キリンやガゼルなどの動物たちがちらほら姿を現し始めると同時に、
睡魔に襲われ始めた私。
ふと気付いた頃には、アンボセリ国立公園の敷地内。
アンボセリ国立公園で一番最初にお目にかかった動物は、
ワクワク・・・♡
ん??
なんとも情けない顔したハイエナでした。
珍しく単独行動をとっていたヌー。
目指すロッジは、前方の森の中。
FUNKY MONKEY
BABY!!鉄線かじっていらっしゃる!!
この後、ピーターさんが遠くに何かを発見。
「あぁ・・・象が・・・死んでる・・・。」
「死んでる?!象がっ?!もっと近くで見たい!!」と興奮する私。
象は、自分の死期を悟ると、群れから離れて人目のつかない場所で死ぬという習性を持つ生き物。こんな車が通る道端で死んでいるなんて、そうそうあることじゃないという。
「ちょっと!!折角だからもっと近くで見たいよ!近寄って!車止めて欲しい!」とお願いする私に、「ちょっとー!!やめてよ気持ち悪い!!見世物じゃないのよ!近寄らないで!!」とママ。
「これ以上は近寄れないよ。レインジャーが監視してるし、危険だ。」とピーターさん。
確かに、象の死体らしきものの周りを、銃を持った男たちが数人うろうろしている。
「あの人たち、何してるの?」
「密猟者に象牙を取られないよう監視してるんだ。あの象牙なら2本で300万はするな。こっちの人にとってみたら300万なんてひと財産だからね。」
私にとってもひと財産である。
象の死体と300万円相当の象牙に後ろ髪を引かれながら、本日の宿オルトカイロッジに到着。
私が泊まったロッジはこんな感じ。
部屋に荷物を置いて、まずは腹ごしらえ。ランチビールは現地で最も有名な『TUSKER』。
午後のサファリは14時からとのこと。
出発まで2時間。
とりあえずホテルの敷地内を散策。
目の前に聳え立つキリマンジャロ。そして鉄線のすぐ向こうには動物たちの姿。
わざわざサファリなんてしなくても、ここからの眺めで十分楽しめる。
ひとりで敷地内をウロウロしていると、ガイドのピーターさんに遭遇。
「ねぇ、さっきの象の死体のところ、連れてってよ。」
「危険だからダメ。あとでサファリの時にまた近くを通るから、車内から見えるよ。」
「遠目からじゃなくて、近くでちゃんと見たいの。それに今こうしている間にも、死体が別の場所に移動されちゃうかもしれないじゃん!」
「俺はガイドの立場だから、少しでも危険な可能性がある場所へは連れて行けないんだ。」
ちっ。
物分かりの悪いガイドめ。
ならば、ひとりで行くまでだ。
すました顔してホテルのゲートを抜けようとすると、銃を持った門番に呼び止められる。
「マダム、どちらへ?」
「ちょっとそこまで。」
「この辺りには何もありません。お戻りください。」
「散歩がしたいんです。」
「ホテルの敷地内を散歩してください。」
「動物を見たいんです。」
「動物ならホテルの敷地内からいくらでも見られますよ、マダム。」
おっしゃる通りである。
「ここから外に出るのは危険です。獰猛な動物もウロウロしています。サルでさえ襲い掛かってきたら大けがをします。お戻りください。」
「・・・。」
「何がしたいんですか、マダム。」
「象の死体を見たいんです。」
「ほう。象の死体を?」
「ええ。さっきホテルに来る途中に象が死んでたの。それを近くで見たいの。」
「そうですか。あの象死んでしまいましたか。朝の時点ではまだ生きていたんです。そうでしたか。死んでしまいましたか・・・。」
「・・・。」
「でもここからあの場所は、歩いて行くと結構距離がありますよ。」
「ハクナマタタ!!」
「では、マダム。絶対に寄り道はしないでくださいね。寄り道をされると、
もしもの時に探せなくなりますから。」
「ハクナマタタ!!」
動物の声を間近に聞きながら、歩くこと15分。
ここから先、動物の死骸の写真を掲載しているため、閲覧は自己責任でお願いします。
木がガサガサ音を立て、サルでも飛び出てくるのかと身構えた瞬間、
若いマサイ族の男が飛び出てきた。
(( ;゚Д゚))
びっくりしたー。
動物よりもよっぽど怖いんですけど。
「マダム、どちらへ?」
「象の死体のところへ。」
「ほう。ならば僕が案内しましょう。マダム一人で行かれるのは危険です。」
「そうですか。それはご丁寧にありがとうございます。でも私チップとか持ってないよ?」
「何をおっしゃいますか。そんなものが目的ではありませぬ。僕はマダムを無事に象の元へ送り届けたいだけです。」
なかなか紳士なマサ男。スワヒリ語と日本語と英語を交えながら会話が弾む。
そして、現場に到着。
マサ男がレインジャーに状況を説明してくれると、彼らが醸し出していた物々しい空気が一変。レインジャーに尊敬のまなざしを向けられ歓迎される。「ここからのアングルの方がいい」「こっちからは撮らなくていいのか?」「象の口の中に顔を入れてみたら?」などとレインジャーから指南を受け、フォトセッションが行われる。
一見、綺麗に見える象さんの死体。
近くで見ると、糞尿垂れ流しで、口の中ではおびただしい数の蠅がうごめいている。
「象の死体を見たのは初めて?」とマサ男。
「うん。」
「どう?死体を見た感想は。何を感じる?嬉しい?悲しい?」
「わからない。死体を前にしても何も感じない。かわいそうとか悲しいという感情も湧かない・・・。」
「この象は64歳で、アンボセリで最年長の象だったんだ。
僕は今朝から衰弱していく様子を見ていたから、死んでしまって残念でならない。」
「そうなんだ・・・。」
目的を果たした私は、レインジャーたちにお礼を述べ、来た道を引き返す。
「ロッジまで送っていくよ。」と後を追ってきたマサ男。
「ありがとう。」
「ケニアには何をしに来たの?動物が好きなの?」
「そういうわけでもない。両親がケニアに行くっていうから便乗しただけ。」
「そっか。キミはどういうところが好きなの?」
「私は海があるところ。あとは、洞窟とか廃墟が好き。」
「廃墟・・・?」
「そう。廃墟。」
「じゃあいい場所案内するよ。」
と言って連れてこられた場所がコチラ。
「アンボセリロッジ?」
「そう。この辺りでは名門なロッジだったんだけど、数年前にクローズしちゃったんだ。入ってみる?」
「入れるの??鍵がかかってるよ?」
「このゲートをよじ登れば入れるよ。写真撮りたいでしょ?」
「撮りたい撮りたい!!」
完璧に私のツボを押さえている。憎いぜマサ男。
敷地内に足を踏み入れる。
すると、誰もいないはずのロッジから人間の声が聞こえてくるではないか。
それもあちらこちらから。
おそらくここは、地元の若いマサイ族の溜り場になっているに違いない。
これ以上踏み込むのは危険な気がする。
「私やっぱりロッジに戻らなきゃ!もうすぐ午後のサファリが始まるんだった!」
「大丈夫だよ。ちゃんと送っていくから。」
「嫌だ。今すぐ帰りたい。」
突然様子が変わった私にうろたえるマサ男。
「わかった。じゃあ戻ろう。」
そして戻る道すがら、
「あ、あそこにヒッポがいる。見える?」とマサ男。
「見えない。」
「ほら、あそこ。こっち来て。」と私の肩を引き寄せるマサ男。
親切なのか変質者なのか、判別しにくいところが悩ましい。
「もう少ししたら、もっとたくさんヒッポが出てくるよ。」
「ふーん。」
「それまでちょっとそこの小屋で休んでいかない?」
マサ男、もしかして私を口説いているのか。万が一のことがあった場合、ひょろひょろのマサ男には力では勝てそうな気もするが、この木の棒みたいなのでぶん殴られたらさすがの私もひとたまりもない。
「家族が心配するからもう戻るよ」
「じゃあ明日、俺の家においでよ。」としつこくモーションをかけてくるマサ男に、「明日、ちょうどマサイ村に行く予定だよ。またそこで会おうね!」と爽やかに言うと、どうやらマサ男はそのマサイ村に住んでいないらしく、スワヒリ語でゴチャゴチャ難しいことを呟き始める。
何を言っているのか全く理解できなかったので、「ハクナマタタ!」と得意のスワヒリ語で返し、マサ男とはロッジのゲートでお別れ。
ロビーにいたピーターさんに、
「行ってきちゃった♡」と自慢げに伝えると、
「さっき、ゲートのセキュリティに聞いたよ。全く信じられない・・・。」と呆れるピーターさん。
その後、
「あんた一体どこ行ってたのよ?」とロビーに現れたママに、
「象の死体を見に行ってきた。」と告げると、
「えぇえええええ???ずるいずるい!!どうして連れて行ってくれなかったのよー!」と拗ねるママ。
あれほど近寄りたくないと言っていたくせに滅茶苦茶である。
そして、ケニアに来て初のサファリドライブがスタート。
右側に竜巻!
カバと象
クラウンクレイン。いつも一緒。
小象
ゼブラの死体
基本的に、動物にはあまり興味がないので、死体にばかり興味を示す私。
だって、動物ならサファリパークで見られるんだもん。
そして、陽も暮れかかった頃、
ピーターさんがブッシュの側に2頭のライオンを発見。
百獣の王の貫録まるでナシ。
戯れるヌー。
本日のサファリはこれにて終了。
そして、夜。
ロッジのレストランで食事をしていると、
観光用のマサイ族たちがテーブルを回ってくる。
「あなたたち、普段何食べているの?」と、唐突に質問を投げかけるママ。
「マサイの人間はあまり食べません。私たちは古くから伝わる秘薬を煎じて飲んでいます。でもその秘薬のおかげで私たちマサイは非常に長生きなんです。私のおばあちゃんも今120歳ですし、平均でも100歳くらい生きますよ。」とのこと。
スゴイ・・・。
スゴイ生命力じゃないかマサイ族。
果たして、どんな秘薬を煎じて飲んでいるのか、翌日のマサイ村訪問が楽しみになる。
そして、この晩、密かに両親に贈るサプライズを企んでいた私。
というのも、オルトカイロッジには、キボヴィラと呼ばれるVIPご用達のスイートがあるとのこと。
ジャグジーもあって、ベッドルームもたくさんあって、それはそれは快適な空間だという。
是非2人にそこに泊まってもらいたい♡
夜、両親におやすみの挨拶をしてからフロントへ直行。
一体そのキボヴィラとやら、いくらかかるのかと聞いてみたら、なんと1人あたり700㌦。
両親2人で1泊1400㌦。
高い・・・。
高すぎてむしろ私がサプライズ。
うなだれながら、部屋に戻ったものの、でもやっぱりどうしても両親を喜ばせたくて、2時間に及ぶ交渉の結果、なんとか2人で700㌦まで値下げに成功。
さらに、「せっかくだから君も一緒にキボヴィラに泊まるといいよ。
ベッドルーム3つもあるんだし。同料金でいいからさ。」となんとも嬉しいお言葉。
翌日、朝イチでその部屋にチェンジしてくれると言う。
達成感と満足感に浸りながらベッドに倒れこむと、ブワァンという音とともに、突然視界が闇に包まれる。
そして訪れた静寂。
オォォーーー!! w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w コェエエエエエーーー!!
そうだった!
節電のため、23時には全ての電気が落ちるってどこかに書いてあった。
追い討ちをかけるように、夜行性の獣たちの鳴き声が響き渡り始める。
うわぁーん!!!
怖いじゃないか!!
暗闇にひとり!!
かわいそう、私!!!
一刻も早く眠りに就かなきゃ、とケニアに来てまで必死に羊の数をカウントし、いつの間にか眠りについていたのでした。
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