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「熱海殺人事件」(ザ・ロンゲスト・スプリング)について

※本記事はいち舞台好きの、あくまで素人の感想です。


圧倒的なシームレスさ

個人的に本舞台で最も「スゴい…!!」と思った点は、タイトルにある「シームレスさ」である。
本舞台の歴史はどうやら古いようで、何十年も前から同タイトルで公演がなされているらしい。よって昔ながらの演劇によくある雰囲気(マシンガントークや独特のコメディなど)があり、良くも悪くも「独特さ」というものはどうしても存在したと思う。
そんな中で、本舞台の「独特さ」であり魅力の一つでもある「コメディ要素」をテイスティングしたのはキャストの皆様の演技力に他ならなかった。具体的には、「コメディ→シリアス(=伏線、ストーリー進行)→コメディ→シリアス…」の流れが恐ろしくスムーズで、一切の間を置かないシームレスだった点が本当にスゴい。
数秒前まで木村や水野が熊田をイジっていたと思ったら伏線が張られ、いよいよ本格的に話が進むかと思いきやまたコミカルな流れが…という流れが素晴らしく、見ているこちらは息をつく間もなかった。これを表現したキャストの皆様の確かな演技力は、とても見ごたえがあった。

「水野朋子」+「千歳まち」さんについて

私の推しは今日も最高だった。
まちさん演じる水野は木村の愛人という立場でありながらもイヤらしさがあるわけではなく、むしろバリバリのキャリアウーマン…に見えた。(違わないけど違った。)登場からセミに擬態し、その後も木村とトコトンふざけ倒す……。パンツスーツという真面目な恰好と整った顔でぶっ飛んだコメディをするので、このギャップが終始面白かった。

もちろん演技の部分も流石の一言。コメディ部分では容赦なく体を張っていたし、中盤、事件の再現としてハナ子(表記はWikipediaに準拠)を演じられている際も素晴らしかった。
「私を虚仮にするなァッ!!」の叫びはとても痛々しく、赤いライトで彩られた砂浜で叫ぶハナ子の孤独や劣等感が痛いくらいに伝わってきた。衣装は水野のままであるにも関わらずそこにいたのは確かに「ハナ子」その人だった。
終盤のウェディングドレス姿では綺麗さの裏に哀愁のような暗さがあり、ラストシーンの「別れ」の場面は非常に鮮烈で、見ているこちらも思わず胸が締め付けられた。
今回も新しいまちさんの演技が見られて幸せです…!

おわりに

大変な情勢の中でも素晴らしい舞台を作って下さったキャスト及びスタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。
素晴らしい舞台をありがとうございました!


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