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リモートワークで職場のコミュニケーションはどう変わったか。どう変えるべきか。

この密集した社会、特に都心部がなぜ人口が密集してるかって、人と対面で会いやすい社会を設計したからじゃないですか。

人は、直接会って話すコミュニケーションに最適化してコミュニケーションの仕方を学んできたし、また社会のシステムや職場も、それに沿って設計された経緯があります。

だから、遠隔でのコミュニケーションについてトレーニングを受けていない人たちが「コロナが蔓延しちゃったので、今日からリモートです!」と突然言われても、簡単に適応できるわけがないんです。水中で生息する生物が、いきなり陸上に上がって生きていけと言われてしまうようなもの。

(未来の子どもたちはバーチャルでやり取りすることに一切抵抗はなく、むしろスタンダードだと受け入れていることでしょう。もし、対面でMTG実施したいという人には「そんなの時代遅れですよ」とディスりそう。)

「協調性の高い人」ほど割を食う

この状況下、相手の状況に合わせてコミュニケーションをとるタイプの人だと、相手のことが分からずコミュニケーションがとりづらい…ということも多いはず。

自分が話した内容を相手がちゃんと理解してくれているか不安になる
相手が何を考えているのか分からない
相手の状況に合わせて、都合のいいときに話しかけたい

今まで良しとされてきた「人の感情を汲み取ってやり取りできる協調性の高い人」ほど、その能力を発揮できず苦しんでいる状況です。

僕自身も、相手の仕草や表情から状況を観察し、コミュニケーションをとるよう心がけているのですが、どうしてもzoomを通すと見えていたものが見えなくなってしまうように感じます。

一方で、気を遣いすぎる人にとっては、良い作用をもたらす場合もありえます。

・周りが見えないから、余計なことが気にならず作業に没入できる
・どうせ都合のいいタイミングなんて分からないんだと割り切り、自分都合で話しかけられる
・話す以外のコミュニケーションがないので、誰かの顔色を気にせず済む

このように両面の作用がありそうですね。

リモートリモートが心理的にポジティブに作用するか、ネガティブに作用してしまうかは、個人の感じ方の違いもあれば、会社の風土や決まりごとによっても変わってきそうです。

つらいときに声を上げることの重要さ

友人が運営するコーチングサービス「mento」の調査によると、同僚が困っていることに気づきにくくなったと感じる人が多いそうです。

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https://forbesjapan.com/articles/detail/34402

これは視点を変えると、何かに困ったり不安を感じたりしても気づいてもららいにくい状況だと言えます。

対面の職場なら、心配なことがあったときにサクッと話しかけて解決できていたことでも、バーチャルだと話しかけることすら躊躇してしまう。その結果、精神的にしんどくなってしまう。こうした悪循環に陥るケースがありそうです。

だからこそ、今まで以上に自発的に感じていることを発信することが求められているように感じます。特に、遠慮しがちな人には精神をぶっ壊さないために重要な心構えです。

一方、マネジメントする立場の人にとっては、こういう課題感を抱えたメンバーがいるかもしれないことを想定した配慮が必要になります。対面であれば顕在化していた課題も、バーチャルだと潜在化してしまう可能性があるということを踏まえておきたいです。

リモートワークを苦手とする人には寛容さを

リモートワークを苦手とする人のなかにも、単純にパフォーマンスが上がらなくなってしまった人と、精神的にキツくなってしまった人の2タイプがあるように思います。

なぜ苦手になったのか。理由はさまざまだし、結果もさまざま。僕らが想像するより、世の中にはたくさんのタイプの人がいるものなんですよね。

だから、リモートワークが新時代においていかに正しい方法だったとしても、慣れない人に向けて「簡単に適応できるはずだから頑張れよ」と不寛容な態度をとるべきでもありません

慣れたくても慣れない人にとっては、数十年かけて培ってきたコミュニケーションのあり方をまっさらな状態にリセットして、新しい方式に最適化しろ…と言われているようなものです。普通に考えて、そんなの酷じゃないですか。当の本人が一番苦しんでるんです。

それでも止まらない社会のトレンド

一方で、適応できない人が大勢いる状況でも、社会の変化はもはや不可避なんだろうな…とも思います。恐らく「リアルな接触をベースとする社会システム」から「バーチャルな接触を起点とするシステム」あるいは「バーチャルな接触をベースとするシステム」へと移り変わっていくでしょう。

そうしたなか、これから会社全体でリモートワークを推進していく会社が増えると思いますが、その場合は心理的安全性を担保することをセットにしてあげる必要があります。でないと、今まで輝いて仕事をしていたメンバーが、輝きを失ってしまうことになってしまいます。

しばらくは、慣れた人と慣れていない人が共存するバーチャル空間で、「ともに慣れる」姿勢が必要になると思います。

今必要なのは「リモートワーク下で相手の状況を汲み取る技術」なのか、「相手の状況を汲み取らずに済ませる工夫」なのか

リモートワークで仕事の仕方は大きく変わりました。特に人とコミュニケーションを取るときの心構えが違います。例えば1on1では、する方もされる方も状況は大きく変わりました。

一般的に、1on1を実施する場合、相手が考えていることを引き出すために相手の心理的安全性を担保することがとても大事です。相手が自由に喋れる状況を作り出して、はじめて本音を抽出することができる。その本音こそが、会社にとって重要な情報源になるんです。

心理的安全性を担保するためには、相手をよく観察し、相手の状況を汲み取る技術が求められるのですが…遠隔のコミュニケーションで同じようにしようとしても、これがなかなか難しい。

面接などの採用時でも、似た課題があります。人の印象は喋った言葉以外の非言語情報をベースに決まるというのに、zoomで分かる情報はごく限られているように感じます。そもそも、遠隔でのやり取りで、対面と同じレベルで相手の状況を汲み取ることなんて、できないのではないか。

こうして考えてみると、今まで必要とされてきた「相手の状況を汲み取る技術」を”遠隔時代”に再現するよりも、「相手の状況を汲み取らずに済ませる工夫」を再構築したほうがいいのかもしれない、と思うようになりました。

(その場合、危惧されるのは、相手の状況が分からないことに起因するストレスとの付き合い方です。協調性の高い人ほど、相手のことが分からないこと自体がストレスになりそう。ここへの解は、まだ見つけていません)

また、2ヶ月程度の短期間ならまだしも、1年間ずっとリモートワークとなると話が大きく変わりそうです。

短期間であれば、これまで構築した文脈に依存してコミュニケーションできるけれど、長引けば長引くほどそのリンクが錆びれてしまう。僕たちは既存の文脈を食いつなぐことでオンラインでのコミュニケーションを実現している、とも言えます。

お互いの背景が分からないままzoom上でコミュニケーションをするとき、信頼関係をどう維持していくか。ここはひとつ大きなポイントになりそうです。

意図したコミュニケーション vs 偶発的なコミュニケーション

リモートvs職場

リモートワークでは、通常Slackなどのチャットツールを使ってメンションを送り、コミュニケーションがはじまります。一方で、リアルな場においては、コミュニケーションの起点は「意図して話しかける」以外にもさまざまなきっかけを通じて生まれます。それが組織をなめらかにする作用をもたらしたりもします。

よく言われる喫煙所の突発的な会話はその典型的な例です。誰かが設計した会話ではなく、突如「発生」する会話がそれにあたります。エレベーターでたまたま乗り合わせた人と話す。階段ですれ違って話しかける。こうした積み重ねが実は大事だったりします。

このように、リモートワーク環境における変化は、偶発的コミュニケーションが一切排除され、意図的コミュニケーションに収斂する…という点に本質があります。

この2者の違いはいろいろあるのですが、いずれにしても、コミュニケーションの質が変わってしまうことは明らかです。僕が気にしているのは、質が変わるとき、どう変わるのかという点です。いい方に変わるのか、悪いほうに変わるのか。

いいとこ取りの案として「偶発的なコミュニケーションを意図的に発生させる」という、一見すると矛盾するようなプランも考えられます。

具体的には、通話をつないだままオンライントランシーバーのように使い、常に通話し続けることで「会話空間」をバーチャル上に再現する取り組みです。これは弊社エンジニアがDiscordを使って実験していました。

もし、オンライントランシーバー作戦が奏功すれば、不足しがちな偶発的なコミュニケーションが多少は補填できるかもしれないですね。

ただこれにも副作用があり、

・全員が雑談したいわけではない
・不参加と表明することに別の意味が生じてしまう(ように感じてしまう)
・音声が気になって集中できなくなってしまう

といった場合があるため、あらゆる問題を解決できる万能薬とは言えないようです。

職場におけるコミュニケーションの多くは業務を推進するために行われますすが、相手を気遣ったり、状況を察してあげたりする心理的なサポートを目的とする場合もあります。そういう寂しさや孤独といった心理的な課題を感じる人にとってはいい解決策なのかもしれません。

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