オメガ6脂肪酸と健康、生活習慣病との関連のレビューと目安量設定根拠

n─6 系脂肪酸
5─1 基本的事項
n─6系脂肪酸には、リノール酸(18:2 n─6)、γ─リノレン酸(18:3 n─6)、アラキドン酸 (20:4 n─6)などがあり、γ─リノレン酸やアラキドン酸はリノール酸の代謝産物である。生体 内では、リノール酸をアセチル CoA から合成することができないので、経口摂取する必要がある。 日本人で摂取される n─6系脂肪酸の 98% はリノール酸である。γ─リノレン酸やアラキドン酸の単独摂取による人体への影響について調べた研究は少ない。
5─2 摂取状況
平成 28 年国民健康・栄養調査における n─6系脂肪酸摂取量の中央値は表 4 のとおりである。

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5─3 健康の保持・増進
5─3─1 欠乏の回避 完全静脈栄養を補給されている者では、n─6系脂肪酸欠乏症が見られ、リノール酸 7.4〜8.0 g/ 日あるいは2% エネルギー投与により、欠乏症が消失する 22─26)。したがって、n─6系脂肪酸は必 須脂肪酸である。リノール酸以外の n─6系脂肪酸も理論的に考えて必須脂肪酸である。

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必須脂肪酸欠乏症は、非経口栄養を受けている患者で一般的に説明されていますが、非経口栄養を受けていない重度の脂肪吸収不良の患者での発生は不明です。 120人の患者は、脂肪吸収不良の程度に応じてグループ化されました。グループ1は10%未満(n = 52)、グループ2は10〜25%(n = 21)です。 グループ3、25-50%(n = 24); グループ4、> 50%(n = 15)。 糞便中の脂肪は、75 g脂肪食の5 dの最後の2つをVan de Kamerの方法で測定しました。 リン脂質画分の血清脂肪酸は、薄層クロマトグラフィーで分離した後、気液クロマトグラフィーで測定し、総脂肪酸のパーセンテージとして表しました。 グループ1、2、3、および4のリノール酸の濃度は、それぞれ21.7%、19.4%、16.4%、および13.4%でした(P <0.001)。

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グループ1、2、3、4のリノレン酸の濃度は、それぞれ0.4%、0.4%、0.3%、0.3%でした(P = 0.017)。 必須脂肪酸欠乏症の証拠です。脂肪の吸収不良(グループ1)のない患者の95%CIが5%(1/21)、38%(9 / 24)、およびグループ2、3、および4でそれぞれ67%(10/15)。 食物脂肪摂取量の25〜50%を超える吸収不良を引き起こし、非経口栄養法で治療されていない胃腸疾患患者のかなりの割合に、必須脂肪酸欠乏の生化学的徴候があります。 これらの変更の臨床効果は、まだ 解明されていません。

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必須脂肪酸(EFA)欠乏症は、無脂肪の完全非経口栄養(TPN)の登場以来、臨床上の問題となっています。 次の研究は、継続的なTPNソリューションを受け取る患者の最小脂肪要件を決定するために行われました。少なくとも14日間の期間の97コースを有する70人の患者が前向きに研究されました。 次の脂肪補給が行われました:a)なし、b)10%soybeanoilemulsionintravenouslyatfixed投与量、c)経口食餌からの脂肪、またはd)静脈内および経口脂肪。 TPNの発症前にEFA欠乏症であった患者はいなかった。 総カロリーの少なくとも3.2%を静脈内脂肪として、または少なくとも15%を経口脂肪として投与すると、EFA欠乏症が予防されました。 より少ない量の脂肪がEFA欠乏症の発生率を減少させたが、それが起こるのを妨げなかった。 毎週1000 mlの10%大豆油乳濁液で提供される7.7 g /日のリノール酸は、十分な脂肪抑制EFA欠乏症を提供します。

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1971年にCollinsetal.7が報告した生化学的および臨床的EFA欠乏症は、大規模な小腸切除後の無脂肪IV療法で維持されていました。 この研究では、トリエン:テトラエン比が最も低い(平均0.06)患者に、週に少なくとも1000 ml(2単位)の10%大豆乳濁液が投与されました。 このレジメンで投与された7.7 g /日のリノール酸は、Collins et al およびWretlindによって推奨されたものと非常に似ています。

「必須脂肪酸欠乏を示唆する血清脂肪酸構成異常
 必須脂肪酸は生体膜を構成しているリン脂質に多く含まれているが、これが欠乏すると一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸に由来するエイコサトリエン酸に置き換わる。したがって、必須脂肪酸欠乏の診断には置き換わったエイコサトリエン酸と本来該当するリン脂質にあるべきエイコサテトラエン酸(アラキドン酸)との比率が用いられる。この比率は血液中の脂肪酸構成に反映され、必須脂肪酸欠乏の診断に用いられる。
Trien:Tetraene比(T:T ratio)>0.4 ⇒必須脂肪酸欠乏」ニュートリーHPより


n─6系脂肪酸の必要量を算定するために有用な研究は存在しない。したがって、推定平均必要 量を算定することができない。その一方で、日常生活を自由に営んでいる健康な日本人には n─6 系脂肪酸の欠乏が原因と考えられる皮膚炎等の報告はない。そこで、現在の日本人の n─6系脂肪 酸摂取量の中央値を用いて目安量を算定した。

5─3─1─1 目安量の策定方法
・成人・高齢者・小児(目安量)
平成 28 年国民健康・栄養調査から算出された n─6系脂肪酸摂取量の中央値を1歳以上の目安量
(必須脂肪酸としての量)とした。なお、必要に応じて前後の年齢区分における値を参考にして値 の平滑化を行った。
・乳児(目安量)
母乳は、乳児にとって理想的な栄養源と考え、母乳脂質成分 27,28)と基準哺乳量(0.78 L/ 日)29,30)から目安量を設定した。0〜5か月の乳児は母乳(又は乳児用調製粉乳)から栄養を得 ているが、6か月頃の乳児は離乳食への切り替えが始まる時期であり、6〜11 か月の乳児は母乳
(又は乳児用調製粉乳)と離乳食の両方から栄養を得ている。この時期は幼児への移行期と考え、0〜5か月の乳児の目安量と1〜2歳児の目安量(中央値)の平均を用いた。 0〜5か月児の目安量は、母乳中の n─6系脂肪酸濃度(5.16 g/L)に基準哺乳量(0.78 L/日) を乗じて求めた。
n─6系脂肪酸:目安量(g/日)=5.16 g/L×0.78 L/日=4.02 g/日
6〜11 か月児の場合は、0〜5か月児の目安量と1〜2歳児の平成 28 年国民健康・栄養調査の 摂取量の中央値(男女平均)の平均値として、以下のように求めた。
n─6系脂肪酸:目安量(g/日)=〔4.0+(4.7+4.5)/2〕/2=4.3 g/日

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